クラウドのベンダーロックインを回避するための処方せんクラウドガバナンス現在進行形【最終回】

クラウドガバナンス現在進行形の最終回。今回は企業のIT戦略の観点からベンダーロックインに焦点を当て、クラウド事業者選定に当たって留意すべきポイントを解説する。

2012年03月30日 09時00分 公開
[川田大輔]

 これまで6回を費やしてクラウドの定義を出発点にIaaS(Infrastructure as a Service)に関する基礎的な疑問について、ポインターを提示しつつ解説を試みてきた。今回はこれまで扱ってきた個別の問題点から離れ、まとめも兼ねて戦略的な観点からクラウド事業者選定に当たって留意すべきポイントを解説し、さらに姿を現しつつある次世代クラウドが必要になる市場の姿を解説する。

表裏一体の2つのポイント

 顧客との長期的な関係を結ぶことによって長期的に利益を得続ける顧客生涯価値に着目した経営戦略が有効な分野では、顧客ロックイン戦略が採用されている。もちろん取引ベンダーが競合他社と比して十分な競争力を持ち顧客満足度が高いのであるなら、この関係はWin-Winであり大変好ましい関係だといえる。また、取引ベンダーが十分に強力な競争力を持っている場合、ウォールドガーデン(※1)が形成され、顧客は自身のガバナンス課題の一部までも取引ベンダーに肩代わりしてもらうことができる。

 しかし取引ベンダーの競争力が劣後した途端、この関係はベンダーロックインに豹変してしまう。事業目的に従って導き出される機能要求や、統治面から導き出される機能外要求としてのITガバナンスに十全に対応できている前提を置いての話ではあるが、顧客企業のCIO的視点に立ってせんじ詰めると、IT投資戦略の要点とはベンダーロックインリスクのコントロールだといってもよいだろう。ウォールドガーデンをどう活用し、ベンダーロックインに陥った際のロスをいかに最小化するかが問題だ。

(※1)ウォールドガーデン(Walled Garden):壁に囲まれた庭を意味するが、転じて提供事業者によって管理されたクローズドな環境下でのサービス取引を指す。ウォールドガーデン内での提供事業者が許容する操作は自由だが、ウォールドガーデン外への接続が著しく規制されているのが通常で、顧客囲い込み戦略の一形態。古くはNIFTY-Serve(後NIFTY SERVEに改称)のコンテンツサービス、近年ではNTTドコモiモードなどが代表例。最近はGated Communityともいう。

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