400ドル以下で静音・省電力 マイクロサーバのススメWebサーバなどの単一ロールに最適

マイクロサーバは、IT投資に余裕がない小規模なシステム向けというイメージを持たれていた。しかし、このローエンドサーバがデータセンターにおいて優れたソリューションとなり得る場面がある。

2012年04月24日 09時00分 公開
[Brien Posey,TechTarget]

 データセンターではラックマウントサーバやブレードサーバが主役だが、オフィスに設置可能なマイクロサーバの優位性を見過ごしてはならない。小型で拡張性の高いエントリーモデル「マイクロサーバ」のコンピューティングリソースが乏しいのは確かだが、このローエンドのサーバが最も費用効果に優れたソリューションとなり得る場面もある。

マイクロサーバの実力

 マイクロサーバが企業から注目されてこなかった最大の原因は、メーカーのマーケティングのやり方にあったのかもしれない。メーカー各社は基本的に「サーバは必要だがラックマウントサーバやブレードサーバに投資する余裕がないという中堅・中小企業(SMB)向けのソリューション」としてマイクロサーバを売り込んできたのだ。

 400ドル以下からという価格設定を考えれば、データセンターにマイクロサーバの居場所がなかったこともうなずける。しかしマイクロサーバはPCとサーバの間のギャップを埋めるだけではない。多くのメーカーは、ローエンドの技術ではあるが、サーバクラスのコンポーネントをマイクロサーバに組み込んでいる。

 例えば、米Hewlett-Packard(HP)の「ProLiant MicroServer」シリーズは、米AMDのデュアルコアCPU「Turion」(1.5GHz)で動作する。これらのサーバは静音設計(22デシベル)かつ省電力タイプ(150ワット)だが、ECC(Error Checking and Correcting)メモリ、内蔵RAIDコントローラーといったサーバクラスの技術を搭載し、3.5インチのLFF(Large Form Factor)型SATAドライブを最大4台サポートする。

 HP ProLiant MicroServerシリーズの価格は、搭載メモリ容量(最大8Gバイト)および米Microsoftの「Small Business Server 2011 Essentials」が組み込まれているかどうかに応じて349〜899ドルである。

 HPがProLiant MicroServerをSMB向けにマーケティングしているのに対し、米Dellはデータセンターの一角に食い込むことを狙っている。「Dell PowerEdge C5125」は、AMDのクアッドコアプロセッサ「Phenom II」と16Gバイトのメモリを搭載し、HPのマイクロサーバよりも豊富な機能を備える。

 PowerEdge C5125が他のマイクロサーバと異なるのは、そのフォームファクターだ。HP ProLiant MicroServerシリーズがミニタワー型のフォームファクターであるのに対し、Dellのマイクロサーバはブレードサーバに近い。PowerEdge C5125は3Uサイズのラックマウントシャーシに組み込むデザインとなっている。このシャーシは1400ワットのホットプラグ対応デュアル電源を備え、最大12台のマイクロサーバモジュールを収容することができる。

 DellのPowerEdge Cシリーズには「C5220」や「C6145」という機種も含まれる。Cシリーズサーバの価格は、オプションや組み込むサーバモジュールの数によって異なる。

マイクロサーバを導入する

 マイクロサーバは従来のサーバモデルほど強力ではないが、最新のハイエンドサーバのリソースを割り当てる必要がない小規模な業務や一時的な業務に向いている。

 今日のラックマウントサーバとブレードサーバは、ほぼ例外なく8個以上のCPUコアを搭載する。サーバを仮想化ホストとして使用したり、あるいは負荷の大きなアプリケーションをサーバで実行する場合には、多数のCPUコアを搭載していることが重要な条件となる。一方、Webサーバのように多数のCPUコアによるメリットがないサーバロールもある。マイクロサーバは仮想化することも可能だが(ライブマイグレーションやスナップショットなどの仮想化のメリットを実現するのが主目的)、複数の仮想マシンを1台の小さなサーバ上でホスティングするメリットは少ない。

 Dellのデータセンターソリューショングループは最近、大手ホスティング企業の仏Online.netと共同でDellのマイクロサーバを利用したデータセンターを構築した。各マイクロサーバは1個のCPUを搭載し、1つのアプリケーションを実行する。低価格と小さなフォームファクターを特徴とするDellマイクロサーバは、こういった大規模配備に向いている。サーバをアプライアンスとして利用するような場合にもマイクロサーバが適している。

 マイクロサーバは短期的なプロジェクトで利用するのにも便利だ。例えば、多くの保険会社では、オープンエンロールメント期間(雇用主が提供する健康保険を選ぶ期間)中にインフラ用サーバを追加配備する。これは一時的な配備であるため、これらの企業は仮想サーバをプロビジョニングするケースが多い。単一用途のマイクロサーバを配備するコストと、エンタープライズクラスの高価なサーバを構築するコストを比べれば、マイクロサーバを利用した方が費用効果が高いといえそうだ。

マイクロサーバを管理する

 マイクロサーバが適している用途も存在するが、管理者はマイクロサーバの導入を決める前にその管理機能についても考慮する必要があるだろう。通常、エンタープライズクラスのサーバは「Intelligent Platform Management Interface」(IPMI)標準をベースとしたハードウェアレベルの管理機能を備えている。またエンタープライズクラスのサーバは、Dellの「OpenManage」やHPの「System Insight Manager」などのユーティリティを使ってソフトウェアレベルで管理できる(関連記事:混戦状態のシステム管理市場の覇権を握るのは?)。

 マイクロサーバでは、きめ細かなコントロールやシステム管理が必ずしも可能とはいえず、既存のデータセンター管理ツールは新たに登場したマイクロサーバに十分対応できない可能性がある。例えば、Dell C5220に組み込まれている「Base Management Controller」(BMC)は、専用のイーサネットポートを通じてIPMI 2.0をサポートするが、それでもマイクロサーバの管理機能をベンダーに確認するとともに、既存の管理フレームワークと連係可能か確認するためにシステムを徹底的に検証することが大切だ。

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