【導入効果】コスト削減以外の仮想化導入メリットを見いだすには?国内市場動向から読み解く仮想化

サーバ、ストレージだけでなくデスクトップ領域まで仮想化の取り組みは広がっている。しかしそこで留意しなくてはならないのが仮想化そのもののクオリティだ。それがコスト削減以外の仮想化導入メリットだといえる。

2010年01月14日 08時00分 公開
[大西高弘,TechTargetジャパン]

2008年が日本の「仮想化元年」

 IT専門調査会社IDC Japan(以下、IDC)は、2009年4月に「国内仮想化ソフトウェア市場規模予測」を発表した。それによると、一般にハイパーバイザーと呼ばれる製品のうち有償の仮想化ソフトウェア関連市場規模は2008年において前年比54.2%増の156億円となった。IDCでは2008年から2013年の年間平均成長率を26.1%とし、2013年には498億円に達するとしている。

 IDCのソフトウェア&セキュリティマーケット アナリストの入谷光浩氏は次のように述べる。

 「仮想化ソフトウェア市場は、サーバ統合など短期的なコスト削減策の1つであると同時に、仮想化を標準基盤としていくことで運用管理の効率化や可用性の向上を図るという活用のフェーズにシフトしつつあります。仮想化ソリューションを提供する国内ベンダーは、短期的なコスト削減策だけではなく、中長期的な仮想化メリットを提案していくことを求められるようになってきています。仮想化技術で構築したITインフラをより効率的に運用管理していくためにはどうすればいいのか。こうした問題は、今多くのユーザーが直面している課題なのです」

 またこの調査では、仮想化ソフトウェア市場に含まれるものとして「アプリケーション/ユーザーセッションバーチャライゼーション」という分野を挙げている。これはシンクライアントを含めたクライアント仮想化関連ソフトウェア市場を指している。この市場について、IDCは2008年において前年比13.2%増の141億円の市場規模とした。そして同分野の2008年から2013年の年間平均成長率は10.8%で、2013年の市場規模を236億円と見込んでいる。

国内仮想化ソフトウェア市場規模予測、2008~2013年(IDC Japan発表資料を基に作成)

 IDCでは、有償のハイパーバイザー市場とクライント仮想化関連ソフトウェア市場を合わせた国内仮想化ソフトウェア市場は2008年で298億円、2013年の予測では734億円の規模に達すると見ている。

 入谷氏によると、おおむね国内のソフトウェア市場は好景気においても数%の平均成長率を示すのが大半であると話す。これに対して、景気低迷期でも10%以上の成長率が見込まれる仮想化ソフトウェアの市場は、まさに今後の動向が楽しみな市場であるという。

 「ただし、市場としてはまだ未成熟。ハイパーバイザー関連市場についてはまだ激烈な競争が始まっているというよりも、各ベンダーとも市場を成長させようという姿勢が強い。今回の調査でいえば有償のハイパーバイザーが調査対象なので、VMware製品の勢いが結果に色濃く反映しているといっていいでしょう」

 仮想化ソフトウェア市場におけるハイパーバイザー関連市場ではVMwareが圧倒的な強さを示しているが、この状況について入谷氏は次のように話す。

 「市場規模の推移を見ると、2008年が日本の『仮想化元年』ということになるでしょう。VMwareはOEM供給を開始し、国内の大手ITベンダーが販売、サービス体制を整えてユーザーにソリューション提供を始めたことが現在の勢いを形成しているといっていい。大手企業が大規模導入をする際は多くの場合、有償でもVMware製品が使われる。製品に対する信頼感がユーザー、ベンダー双方とも高いわけです。短期的にはこの状況は続くでしょう。ただし、中長期的にはいろいろな変化が出てくるのではないでしょうか」

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