包括利益表示、単体財務諸表への適用は「当面なし」へ【IFRS】ASBJが公開草案を公表

従来同様に包括利益表示を連結財務諸表にだけ求め、単体財務諸表には当面の間、適用しないことを提案した。

2012年04月24日 20時00分 公開
[垣内郁栄,TechTargetジャパン]

 包括利益表示は、東京合意に基づくコンバージェンスの一環として企業会計基準第25号で導入された。しかし、公表直前に異論が相次ぎ、適用は連結財務諸表のみとし、単体財務諸表への適用については第25号の公表後1年をめどに判断するとされていた(参考記事:包括利益表示が正式決定、単体については1年後に判断)。

 また、財務会計基準機構に設置された「単体財務諸表に関する検討会議」が2011年4月に公開した報告書では、包括利益表示については単体財務諸表には適用しない考えを支持する意見が多かった(参考記事:単体財務諸表はコンバージェンスせずが多数意見か、報告書公表)。2012年1月の企業会計基準委員会でも同様の意見が出ている(参考記事:開発費、のれんは連単とも現行処理を継続、ASBJが提案)。

 これらの議論を受けて、今回の公開草案第47号では包括利益表示を「当面の間、個別財務諸表には適用しない」ことが提案された。これまでの企業会計基準委員会の議論では、「包括利益の表示の個別財務諸表への適用については、市場関係者の中から強い懸念が表明されており、改正を図ることのコンセンサスが十分には得られていない」などの意見が挙がっている。具体的には「単体の当期純利益は分配可能額の計算や課税所得計算の基礎となるなど、他の制度に与える影響が大きい」「包括利益は、表示の問題にとどまらず、リサイクリングや利益概念に密接に関係する。リサイクリングの問題を整理することなく、単体に包括利益を表示すべきではない」などの指摘があった。

 包括利益表示についての議論では、2011年6月に公表された改訂IAS第1号「財務諸表の表示」を参考に、1計算書方式の名称を現行の「損益及び包括利益計算書」から「純損益及びその他の包括利益計算書」に、2計算書方式の名称を現行の「損益計算書」と「包括利益計算書」から「純損益計算書」と「純損益及びその他の包括利益計算書」に変更することを検討した。しかし、審議の結果、現行の名称を使うことが提案されている。

 ASBJは、公開草案第47号について5月25日までコメントを受け付けている。

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