富士通ら4者が東北で「ものづくり基盤強化コンソーシアム」を設立。震災からの復興に向けた環境作りを支援、災害に強いモノづくり環境の実証実験を始める。実証実験期間(2012年3月〜2013年3月)中は無償で利用できる。対象は中堅・中小製造業。
富士通、アルプス電気、東京エレクトロン宮城、宮城県産業技術総合センターの4者は2012年6月15日、「ものづくり基盤強化コンソーシアム」を共同で設立すると発表した。コンソーシアムでは、宮城県仙台市内に「宮城ものづくりクラウドセンター」を設置し、パブリッククラウド環境を使った設計・開発環境について実証実験を行う。実証実験期間(2012年3月〜2013年3月)中は無償で利用できる。対象は中堅・中小製造業で「県内の企業を優先するが、他の県・地域を排除するものではない」(富士通広報部)としている。
申し込みは、宮城県産業技術総合センターが窓口となる。宮城県内に開発センターと3つの工場を持つアルプス電気、本社および2つの事業所を持つ東京エレクトロン宮城の2社は、宮城県を代表する製造系企業として、このコンソーシアムで主にアドバイザとして協力するとしている。
同日から利用者を募集し、同年6月25日から利用できる。宮城ものづくりクラウドセンターは、富士通エフ・アイ・ピー 東北データセンター内に設置する。
今回コンソーシアムが提供するのは、既存の一般的なPCやインターネット回線で利用できる、設計ツール・シミュレーションツール類を利用した高度なモノづくり環境などをクラウド上に構築したシステムだ。
通常、設計・開発環境を用意するには、CADツールや物理シミュレーションツールなどが必要だ。これらのツールを利用するには演算能力の高いワークステーションが必要となる。最近では、仮想デスクトップ環境を構築する企業もあるが、いずれも企業内にサーバを持つ、比較的投資規模の大きなものが中心だった。
今回富士通らが実証実験を行うのはパブリッククラウドでの環境提供だ。インターネット回線経由でサーバにアクセスし、コンピュータリソースを複数の企業で共有する。
これにより、災害やパンデミック発生時の開発環境維持などの、開発継続に必要なリソースを安全に確保する狙いがある。
実証実験の内容は次の通り。
利用環境の検証 専用線ではなく一般のインターネット回線を経由した接続でのネットワーク帯域の利用状況や操作性への影響を検証する。アプリケーションや開発規模による影響も検証する。
クラウド環境下でのデータ共有、事業継続性の検証 今回のパブリッククラウド環境提供では、企業間のデータ共有や、データの安全な格納場所としてのクラウド環境の有効性を確認する。接続端末が消失した場合にも、別の環境から接続して作業を継続できるか検証する。
事業化モデルの検証 クラウドでの設計・開発環境提供をビジネス化するため、宮城県産業技術総合センターと共同でセミナーや操作体験説明会を実施する。
復興、事業継続性向上への活用 震災からの復興途上にある宮城県に立地することで、周辺地域の中堅・中小企業のビジネス再立ち上げの初期負担を軽減する狙いもある。
富士通は、2011年6月11日、独自の画僧軽量化技術を採用した設計・開発環境向けのクラウドサービス「エンジニアリングクラウド」を発表している。今回の実証実験はこのエンジニアリングクラウド環境を活用したものになる。エンジニアリングクラウドサービスは2012年6月20〜22日に開催される「第23回 設計・製造ソリューション展」でも展示される。展示会の情報はMONOist「第23回 設計・製造ソリューション展 特集」で確認できる。
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