リタールがサーバラックの新製品を発表。工具が不要で取り付け時間を従来の3分の1に短縮できる他、冷却効率を向上させる開口率85%を実現した。同社の産業分野における技術・ノウハウを生かし、堅牢性と高容量を両立したという。
リタールは10月12日、サーバラックの新製品「TS IT」を販売開始した。独Rittalの日本法人である同社は、ラックや電源装置、冷却装置、監視センサー、遠隔監視システムなどを提供。特にサーバラックはIBMやHP、Dellなどの主要サーバベンダーにOEM供給している。
今回発表したTS ITの特徴について、リタール マーケティング部 プロダクトマネージメント 山本将己氏は「工具不要で設置時間を大幅に短縮可能」「開口率85%を実現した業界最大クラスのハニカムメッシュドア」「特許技術を活用した軽量かつ高耐性な筺体」「RFIDによるIT資産の遠隔が管理可能」の4点を挙げる。
TS ITでは、レールや棚板などの取り付け作業の際に、電動ドライバーや六角レンチなどの工具が不要。同社が実施した、従来型ラックとTS ITにおけるラック1台の取り付け作業時間の比較検証では、従来型ラックが18分38秒、TS ITが5分36秒となり、作業時間を従来比3分の1以下まで短縮できたという。また、取り付け作業は前面のみで実施でき、背面に回り込む必要がない。さらに19インチマウンティングレールの位置を前後に調整でき、21、23、24インチの幅にも柔軟に対応する。
TS ITのフロントドアは「ハニカムメッシュドア」「ガラスドア」の2種類が用意されている。従来、同社製品のハニカムメッシュドアの平均開口率は65%だったが、TS ITでは業界最大級の開口率85%を実現。開口率を上げることで、自然吸気でもより冷却しやすくなった。また、ガラスドアはIP保護等級55(※)まで高めることで、ラック内の高密閉環境を実現。空調システムの冷却効率向上に寄与するという。
注:機器の防塵/防水に関する保護規格
従来のラックでは、サーバ、ネットワークなどの機器や用途に応じて種類の異なるラックを用意する必要があった。サーバラックでは耐震性や最大耐加重などの堅牢性が、ネットワークラックでは大量の配線用スペースの確保といった「容量の大きさ」が求められるためだ。TS ITでは特殊フレームの採用によって堅牢性と高容量を確保しており、サーバ/ネットワーク両方のニーズに対応する。
TS ITのフレームは、16回折り曲げロールフォーミング技術(特許取得済み)を採用。このフレームは、リタールの産業システム用筺体「TS8シリーズ」でも使用されている。TS ITの最大搭載荷重は1500kg、フレーム面積は従来ラックの7分の1で、間口や内部スペースをより広く確保できる。
TS ITは、オプションでIT資産管理システム「ダイナミックラックコントロール」を搭載できる。ダイナミックラックコントロールは、RFIDタグを使用した無線監視システム。同社のラック監視ソフトウェア「CMC III」によって、サーバやストレージ、ネットワーク機器などIT資産の情報を遠隔で監視・管理できる。具体的には、ラックの設置場所や使用ユニット数、サーバのサイズや消費電力、メーカーや型番、MACアドレスなどのラック内のさまざまな情報を管理可能これまで表計算ソフトウェアなどを使って手作業で行っていた機器情報の監視、管理を自動化することで、運用管理の負荷を軽減するという。
TS ITの販売価格は、24万8000円から(メッシュドアタイプ、サイドパネル付き)。国内では既にネットワンパートナーズが導入している。
リタールの代表取締役社長 高村徳明氏は、「TS IT導入による設置作業の時間の短縮化は、多くのメリットを提供できる」と説明する。例えば、データセンターなどの大規模なラック設置では、作業時間や導入作業コストを大幅に削減し、作業の効率化による健全な利益率の向上に寄与する。中堅・中小企業におけるサーバルームでは迅速なサービス開始を実現するなど、「さまざまなニーズに対するインフラとして、TS ITを利用できる」という。
「技術の進歩に伴いIT機器は高密度化し、ラック内の発熱量は上昇している。しかし、それを支えるラックはマイナーチェンジを繰り返してきたため、その流れに追い付いていない。だがRittalは、国内外の主要サーバベンダーにラックをOEM供給している他、過酷な環境下における防水や防塵、温度管理などの機能を検証するラボを保有するなど、その製造ノウハウや生産能力に強みを持っている。厳しい性能要件が求められる産業分野で培われたノウハウを、IT向け製品にも生かしていく」(高村氏)
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