米国の医師1066人を対象にした調査によると、iPadなどのタブレット端末の利用が進む一方で、多くの医師がIT化によるストレスを感じているという。その原因とは?
医療アプリケーションを開発する米Epocratesが実施した最新の調査によれば、大半のプライマリケア医はここ数年でストレスレベルが高まったという。その理由として、医師の多くが「Meaningful Use(米国の医療ITの有効利用)プログラムなど、米連邦規制に関する負担」を挙げているという(関連記事:米国の医療IT化施策が生んだ、医療現場と提供ベンダーとのギャップ)。
この調査は1066人のプライマリケア医を対象に行われたもの。調査では、回答者の89%が「ここ数年でストレスレベルが高まったと感じている」と答え、また回答者の43%が「連邦規制をめぐる不確実性に不安を感じている」と訴えている。
医師にとっては、とりわけEHR(電子健康記録・生涯医療記録)の有効利用をめぐる規制が厄介な問題となっているようだ。回答者の3分の1は「EHRの有効利用をめぐる規制に従うことには、長い時間をかけて取り組む価値がない」としている。また、「EHRに診療の質を向上させる効果があるか」についても懐疑的だ。さらに「システム管理に伴う負担」についても懸念しており、「連邦政府による奨励金だけではEHR導入コストをカバーできない」と考えている。
だが医師らは、テクノロジー全般に対して否定的なわけではない。EHRの導入が徐々に進みつつあるのに加えて、医師の間ではiPadなどのタブレット端末の使用もますます広がっている。実際、今回の調査では「診療所でタブレット端末を使用している」と答えた医師が約25%と、2011年の20%より増加している。
「興味深いことだ。テクノロジーに対する意見の二分化だ」とこの調査に回答したオステオパシー医のサロイ・ミスラ氏は語る。「医師は一方では、とりわけ情報収集などの目的で、個人的にテクノロジーを採用することには強い関心を抱いている。だが、それと同じような技術をシステム全体に適用できるかという話になると、多くの医師は懐疑的だ」とSt. John Providence Health Systemで一般診療担当プログラムディレクターを務めるミスラ氏は語っている。
同氏によれば、これほど多くの医師がいまだにEHRをめぐる規制に不満を抱いているのには、大きく2つの理由があるという。1つは、多くの開業医は年齢層が高めであるため、テクノロジーの導入を義務付けられることに抵抗を感じる可能性が高いということ。もう1つは、EHR推進派がEHRの導入効果として「診療の質や効率性の改善」を挙げているにもかかわらず、多くの医師はそうした効果を実感できずにいるということだ(関連記事:電子カルテの導入評価は賛否両論、その理由とは?)。
Epocratesで臨床コミュニケーション担当ディレクターを務めるアン・メネゲッティ医学博士によれば、Meaningful Useプログラムをはじめ、連邦政府が定めた各種の医療IT政策に対し、多くの医師は懐疑的だという。医療業界はテクノロジーの導入に前向きに取り組んではいるものの、連邦規制で求められるほど急速な変化に対応できる態勢にはなかった。それ故に、多くの医療専門家がストレスを感じているのだ。
「医師には移行期間が必要だ。既に自分なりのやり方を確立している場面で何か別の方法を押し付けられれば、問題になるのも致し方ないことだ」とメネゲッティ氏は語る。
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