ファイルのやりとりもメール送受信もクラウド――。使い勝手のいいクラウドを私生活で使いこなす従業員にとって、旧態依然としたシステムを使うことは苦痛でしかない。
ITのコンシューマライゼーションが進むにつれて、企業のバックエンドインフラにも副次的な影響が及ぶことになる。
私物のスマートフォンやタブレットからファイアウォールを超えて社内システムへアクセスし、よりコラボレーティブな方法で同僚とデータを共有したい――。こう考えるユーザーは今後増えるはずだ。だが、従来のバックエンドインフラやサーバベースのアプリケーションは、こうした作業をうまく実行できるようにはなっていない。
例えば、従来のエンタープライズデータストアやネットワークファイル共有では、Windowsのファイルシステムを読み込めるマシンからの仮想プライベートネットワーク(VPN)接続が必要なケースが多い。ユーザーがリモートでファイルを共有するには、認証された端末からLANへログオンし、ファイルを端末に保存して、メールで送信するといった作業が必要になる。
従来のサーバベースのコラボレーションソフトウェアも同様だ。米モバイルコンサルティング会社Paladorの共同創業者であるベンジャミン・ロビンズ氏は最近、同僚が社内の「Microsoft SharePoint Server」環境で古い文書を見つけ出したり、共有したりするのに苦労している様子を目撃したという。「同僚は悪態をついていた。『これは見逃せない大事なことだ』と私は思った」と同氏は振り返る。
ロビンズ氏をはじめとする何百万人ものユーザーは、既にクラウドベースのストレージとファイル共有サービスを使うようになっている。複数の端末にわたってデータを同期し、ワンクリックでデータを共有できるサービスだ。
米Boxなどのベンダーは、こうしたサービスのエンタープライズ版をクラウドやオンプレミスで提供している。ただし、クラウドに対しては多くのITプロフェッショナルが依然として慎重であり、オンプレミスの場合、IT部門には社内のサービスプロバイダー的な役割が求められる。
データセンターといえば、米Microsoftのメールサーバ「Microsoft Exchange Server」も欠かせない存在だ。だが、Exchange Serverも将来の見通しは明るくない。
クラウドベースのメールをプライベートで利用しているユーザーは徐々に、同様の機能(事実上無制限のストレージ容量、容易な検索など)を業務メールにも期待するようになってきた。米Googleなど、クラウド形式のメールサービスを提供するプロバイダーは、「コストの削減」「管理の容易さ」「より優れたディザスタリカバリ対策」などのメリットを挙げ、企業ユーザーにアピールしている。
「Exchange ServerはWindowsの採用に大いに貢献している。Exchange Serverが不要ということになれば、Windowsにとっては新たな大打撃だ」と、米ITソリューションプロバイダーP & M Computersの社長兼CEO、フランシス・ポエタ氏は指摘する。
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