価格以外で差別化を狙うGoogle
Amazon EC2とGoogle Compute Engine、注目サービスの料金を比較した
Googleはパフォーマンスや付加機能を重視する方針。一方Amazonは、1分単位の従量料金制や月間稼働率によるSLA保証を導入することでGoogleとの差を縮めていくといわれている。
米Googleが最近一般公開したパブリッククラウドのIaaS(Infrastructure as a Service)「Google Compute Engine」(以下、GCE)と、米Amazon.comのAmazon Web Services(AWS)部門の同様のサービス「Amazon Elastic Compute Cloud」(以下、Amazon EC2)では、GCEの方がわずかに割高だ。
市場では、このIT大手2社が手掛ける両サービスの間で料金競争が展開されるとの見方がもっぱらだった。だが、両サービスの料金を詳しく見ると、その差は微々たるもので、多くの場合、Amazon EC2の方が安い。
Googleの料金ページによると、GCEの最小規模のスタンダードオンデマンドインスタンスであるn1-standard-1-dは、vCPUが1個、メモリが3.75Gバイト、ローカルディスクが420Gバイトで、料金は1時間当たり0.132ドルとなっている(米国での価格、以下同様)。
これとほぼ同等のAmazon EC2インスタンスは、スタンダードオンデマンドインスタンスのミディアムインスタンスで、M1(第1世代)ミディアムインスタンスとも呼ばれる。このインスタンスはvCPUが1個、メモリが3.75Gバイト、ストレージが410Gバイトで、1時間当たり0.120ドル。また、スタンダードオンデマンドインスタンスのスモールインスタンス(M1スモールインスタンス)は、vCPU1個、メモリ1.7Gバイト、ストレージ160Gバイトで、1時間当たり0.060ドルとなっている。
米Hewlett-Packard(HP)は、2012年12月にリリースしたOpenStackベースのパブリッククラウドサービスで、Amazon EC2を下回る料金を打ち出した。米Microsoftも、2013年4月にWindows AzureでIaaSの正式提供を開始した際、Amazon EC2の値下げに対抗していくことを表明している。
Googleのアプローチは違うようだ。
「私は最近、顧客から、『料金は十分に安くなっているため、これまでより料金の優先順位を下げ、パフォーマンスや付加機能のような要素をより重視するようになっている』という声を聞いている」と、米Gartnerのアナリスト、カイル・ヒルゲンドーフ氏は指摘した。
パフォーマンスはGCEが強みを持つ分野の1つ。GCEでは回線の競合が少ない(少なくとも当初は)プライベートバックボーンネットワークがバックエンドで提供されている。ただし、業界標準のベンチマークによるGCEの具体的なパフォーマンスデータは正式に公表されていない。
SLAと課金単位時間
利用時間がごく短い場合を想定すると、課金単位時間が問題になりそうだ。Amazon EC2の料金は、1時間に満たないインスタンス利用時間は1時間分として課金される1時間単位の従量制だ。これに対しGCEは、最低利用時間が10分間で1分単位の従量制となっている。
可用性に関しては、GCEとAmazon EC2は、いずれも99.95%の稼働率をサービスレベル契約(SLA)で保証している。だが、この稼働率は、GCEが月間稼働率であるのに対し、Amazon EC2では年間稼働率であり、GCEの可用性保証の方がより厳密だ。また、Googleは、ユーザーがGCEの利用コストを抑える手段として共有コアインスタンスを提供している。2種類あるこのインスタンスのうち安い方のf1-microインスタンスは1時間当たり0.019ドルだ。
しかし、GCEには大きな弱点がある。Windowsをサポートしていないことだ。また、より成熟したサービスであるAmazon EC2では現時点で、サービスを支えるデータセンターが世界のより多くの地域に設置されている。さらに、30以上のアドオンサービスが提供されており、GCEはこれに太刀打ちできていない。
専門家は、両サービスの違いの一部はなくなると予想している。例えば、AWSは近いうちにAmazon EC2で、1分単位の従量料金制や月間稼働率によるSLA保証を導入するだろうと、米Forrester Researchのアナリスト、デビッド・バートレッティ氏は見ている。
「一方、Googleは、これまでのAWSに匹敵するハイペースで、イノベーションと新サービス展開を進められることを証明しなければならないだろう。そしてもちろん、AWSとの競争を通じて、何年もの間にAWSサービスの専門家になったAWS開発者をGoogle陣営に引き込むことも必要になる」(バートレッティ氏)
さまざまなファクターが絡むストレージ
GCEの最大規模のスタンダードオンデマンドインスタンスであるn1-standard-8-dは、vCPU8個、メモリ30Gバイト、ストレージ3.54Tバイトで、1時間当たり1.060ドルだ。このインスタンスはディスクレスオプションも用意されており、1時間当たり0.922ドルとなっている。
Amazon EC2の同等のインスタンスは、第2世代スタンダードオンデマンドインスタンスのダブルエクストララージインスタンスで、M3(第2世代)ダブルエクストララージインスタンスとも呼ばれる。このインスタンスもvCPU8個、メモリ30Gバイトで1時間当たり1.000ドルだが、ユーザーは永続ストレージとしてAmazon Elastic Block Store(EBS)ストレージを利用する必要があり、そのための料金として1Gバイト当たり月額0.100ドルなどの費用が別途必要だ。これに対し、前述したように、GCEのn1-standard-8-dインスタンスでは、料金にストレージ利用料も含まれている。
Googleは、GCEでは永続ディスクを最大10Tバイトサポートしており、これは業界標準の10倍に当たると盛んに宣伝している。しかし、Googleの料金ページを見ると、GCEでも永続ディスクの利用には1Gバイト当たり月額0.10ドルなどの料金が掛かるとされている。
ネットワーク料金
Amazon EC2では、Amazon EC2へのデータの送受信に対して、データ転送量に基づいて課金される。さまざまなケースが想定されており、別のAWSリージョンの任意のAWSサービスからAmazon EC2へのデータ転送や、同じAWSリージョンの特定のAWSサービスからAmazon EC2へのデータ転送などは無料となっている。
一方、同じアベイラビリティーゾーンのAmazon EC2、Amazon RDSおよびAmazon ElastiCacheインスタンスまたはElasticネットワークインタフェースからパブリックまたはElastic IPアドレスを使ってのAmazon EC2へのデータ転送や、Amazon EC2、Amazon RDSおよびAmazon ElastiCacheインスタンスまたはElasticネットワークインタフェースから同じAWSリージョンの別のアベイラビリティーゾーンにあるAmazon EC2へのデータ転送などは、1Gバイト当たり0.01ドルだ。
また、Amazon EC2からインターネットへのデータ転送は、1カ月当たりのデータ転送量が1Gバイトまでは無料。これを超えると、10Tバイトまでは1Gバイト当たり0.12ドルで、転送量がさらに多くなると、1Gバイト当たりの単価が下がっていく。
GCEでは今のところ、GCEから同じリージョン内の別のゾーンへのデータ転送に対し、1Gバイト当たり0.01ドルの料金が掛かる。米国内の別のリージョンへの転送も、プロモーション料金として1Gバイト当たり0.01ドルに設定されている。
GCEから北米外へのデータ転送は、転送先が中南米または欧州、中東、アフリカの場合、1カ月当たりのデータ転送量が0~1Tバイトでは1Gバイト当たり0.12ドルで、1Tバイト~10Tバイトでは1Gバイト当たり0.11ドル、10Tバイト超では1Gバイト当たり0.08ドルとなっている。GCEへのデータ転送は全て無料。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
事例
[ServiceNow Japan合同会社] 脆弱性対応のリードタイムと工数を大幅削減、事例に学ぶセキュリティ基盤刷新術 -
製品レビュー
[ServiceNow Japan合同会社] AIによる業務の自律化はどう実現する? 企業に求められる新たな業務基盤とは -
技術文書・技術解説
[Jamf Japan 合同会社] MDMだけでモバイルセキュリティは十分? 不足する対策を16項目でチェック -
技術文書・技術解説
[Jamf Japan 合同会社] MDMだけでは防げない? Appleデバイスに潜む5つのセキュリティギャップ -
市場調査・トレンド
[オープンテキスト株式会社] 2026年のサイバーセキュリティには何が必要か? 最新データに学ぶ傾向と対策
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
3
【漫画付き】ひとり情シス協会が明かす、RAG導入でしくじる企業「2つの共通点」
-
4
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
5
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
6
鹿島建設のDXを阻む「10年前のAWS」 安全性と自由度を両立したモダナイズ
-
7
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
8
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
9
「Linux」の脆弱性を生むのは誰か? ベテラン開発者の意外なミス
-
10
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
3
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
8
システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー