ARMチップ共同設計者ファーバー氏、チップ業界のイノベーションを語る「IoTは大きな将来性を秘めている」

ARMチップの共同設計者、スティーヴン・ファーバー氏がComputer Weeklyのインタビューに応じた。彼が見るモノのインターネットの展望とチップ業界の現状とは?

2014年03月03日 08時00分 公開
[Cliff Saran,Computer Weekly]
Computer Weekly

 ARMチップの共同設計者であるスティーヴン・ファーバー氏とソフィー・ウィルソン氏が、Economist誌が表彰する2013年の「イノベーション賞」を受賞。2013年12月3日にロンドンの英国映画テレビ芸術アカデミー(BAFTA)で授賞式が行われた。この機会に、Computer Weeklyはコンピュータのイノベーションについて、ファーバー氏に話を聞いた。

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 ファーバー氏は、家庭用マイクロコンピュータとして知られたBBC Micro(訳注)の主任設計者だった。

訳注:英Acorn Computersが設計・製造したコンピュータ。

 そして30年前の1983年10月、同氏はAcorn RISC Machineプロジェクトに参加した。このプロジェクトから生まれたのがARMチップだ。ARMチップは、現在ではiPhoneから車載インフォテインメントシステムまで、100億個を超える機器や端末に搭載されている。ARM社は累計で400億個のプロセッサを出荷してきた。ざっと数えて、地球上の人間全員がこのチップを6個ずつ持っている計算だ。一般的なスマートフォンには10個以上のARMプロセッサが搭載され、さまざまなジョブが実行されている。

 プロセッサの設計という観点から見たARMのアプローチのすばらしさは、アーキテクチャを単純化したシンプルなシステム、縮小命令セットコンピュータ(RISC:Reduced Instruction Set Computer)にある。米Intelや米AMDのx86プロセッサファミリーとは全く対照的だった。x86ファミリーのチップは、従来のアーキテクチャであるCISC(Complex Instruction Set Computer)を採用していた。CISC命令セットはRISCよりも強力だ。ただし多くの電力を消費するため、結果として稼働時に熱を持つ。

コンピュータ業界への英国の貢献

 ところで、マンチェスターの町を有名にしたものは、サッカーだけではない。 ファーバー氏は英ICL社の会長であり、マンチェスター大学のコンピュータサイエンス学部でコンピュータエンジニアリングの教授も務めている。マンチェスター大学は、世界初のプログラム内蔵式コンピュータ、愛称「Baby」が生まれた場所だ。 現代コンピューティングの父、アラン・チューリングも晩年はこの大学で過ごした。

 英国のコンピュータ業界はそう悪くないと、ファーバー氏はみている。「われわれはコンピューティングの世界を2世代進化させてきた」と同氏は語る。「英国内のコンピュータ業界で企業合併が相次ぎ、ICLが誕生した。当時はメインフレームなどの大型機を重視していた」(同氏)が、1990年代に入るとコンピューティングの主流がメインフレームからコンシューマー向けの電子機器、そしてWebへと移っていったとファーバー氏は話す。

 「Webがコンシューマー向けの電子機器(デバイス)を統合した。これが現在のような、スマートフォンで何でも好きなことができる状況につながっている」(同氏)

 デバイスからWebへのアクセスを実現するには、コンピューティングと通信の両方の技術が必要だ。コンピューティング技術の歴史において、英国の役割はテクノロジーを誰でも利用できるものにすることだとファーバー氏は考える。同氏は次のように語る。「このような技術を進化させる中で、英国は大きな役割を果たしてきた。地球上のほとんど全ての携帯電話には、ケンブリッジに拠点を置く会社で設計されたARMプロセッサが搭載されている」。また、インターネットは米国防総省の国防高等研究計画局(DARPA)で開発されたものであるにもかかわらず、同氏は次のように主張する。「インターネットが現在のように広く普及したのは、Webの基礎となるプロトコルを発明した、欧州原子核研究機構(CERN)のティム・バーナーズ=リーの功績だ」

モノのインターネット(IoT)から生まれる新たな機会

 一方ファーバー氏は、モノのインターネット(IoT: Internet of Things)は英国のコンピュータ業界にとって大きな将来性を秘めていると考えている。同氏はこんな話をしてくれた。「これまでのコンシューマー向け電子機器市場では、コンピュータは人間(ユーザー)につながっているものだった。IoTの場合は機器が、人間の手を離れてモノの世界だけで動作する。機器は必ずしも人間とつながっているとは限らない」。だから現在は、インテリジェントな電球も商品化されている。

 「自宅の冷蔵庫やコンロが全てインターネットに接続されて、帰宅する前に電話から、自宅の暖房のスイッチを入れて部屋を暖めておけるところを想像するといい」(同氏)

 IoTのために、いずれ住宅の配線の方式が劇的に変わるだろうと同氏は指摘する。電器類は全て、統合された主電源に接続され、電源コードがイーサネットにも対応して、電力とデータが同時に各機器に送られるという。「だから、電灯のスイッチと電球もその家のネットワークに接続される機器の一部となって、ケーブルを通じて機器同士が相互に通信する。電灯のスイッチと電球を物理的に直接つなぐ必要はなくなる」(ファーバー氏)

チップを作る新興企業が直面する課題

続きはComputer Weekly日本語版 2014年2月19日号にて

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