有料コンテンツ事業を成功させた「パプリッククラウドの利点」とは?プライベートクラウドはただのデータセンターにすぎない

『The Times』『The Sunday Times』のWebコンテンツ有料化を断行したNews UK。サッカー・プレミアリーグのコンテンツ独占配信にも活用された「パブリッククラウドの利点」とは?

2014年07月22日 08時00分 公開
[Archana Venkatraman,Computer Weekly]
Computer Weekly

 英国のメディア企業News UKの主力ブランドである『The Times』と『The Sunday Times』がWebコンテンツの有料化に踏み切ったとき、その決断を「愚かな実験」と切り捨てる向きもあった。しかし現在、有料コンテンツ配信事業はゆっくりながらも赤字から黒字に転換しつつある。同社の試みを成功に導いた要因の1つが、同社のITとクラウドに対する戦略だ。

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 News UKでIT部門の責任者を務めるクリス・バーチ氏は、実際に戦略を実行に移したことで同社は大きく変わったと語る。この成功によって、News UKの姉妹ブランドである英Harper Collins、米Dow JonesおよびWall Street Journal Europeのクラウド展開プロジェクトも任されたという。

 バーチ氏は同社のIT戦略を詳しく語ってくれたが、 開口一番「われわれNews UK社内では『有料化』(paywall)という表現を好まず『アクセス制御』と呼んでいる」と切り出した。

 News UKは同社コンテンツへのアクセス制御システムを2010年に構築したが、ほぼ同時に当時の同社CIOのポール・チーズブロー氏が、クラウド優先の戦略を打ち出した。この戦略の一環として、News UKはIaaS、PaaS、SaaS 製品を導入した。具体的に採用したのは米AmazonのAmazon Web Services(AWS)、米Salesforce.comのSalesforce.com、そしてGoogle Appsだ。

並外れた拡張性

 「(有料コンテンツの)サービスを開始したときの購読者は3万人だったが、1年もたたないうちに購読者は10万人に達した」とバーチ氏は話す。「しかしその当時、当社のデータセンターにはそれだけの処理をこなす、または拡張性のニーズに対応するだけの能力がなかった」(バーチ氏)

 現在同社のThe TimesとThe Sunday Timesの月間購読者は合わせて37万5000人を数える。ITチームは、それぞれの購読者が希望する種類の端末に、それぞれの好みに応じたコンテンツを配信できるようになった。

 ITチームはAmazon EC2などのAWSツールを利用している。Amazon EC2を使うと、仮想マシンのセットに無制限にアクセスできるからだ。これ以外では、ストレージにAmazon S3、データベースにAmazon RDS、負荷分散にELB(Elastic Load Balancing)、システム監視にCloudWatch、データ分析にElastic MapReduceを利用している。

 「パブリッククラウドはわれわれに強大なパワーを与えてくれた。それに、変化の激しい当社の業務要件にも対応できるアジリティ(俊敏性)がある」とバーチ氏は語る。

 では同社はどのようにして、このクラウド環境を同社の事業と収益に結び付けていったのだろうか?

 事実の1つとして、同社はクラウドサービスを導入したことによって、支出を2年間で100万〜150万ポンド削減できたという。だがバーチ氏は、クラウドの最大の利点は自動スケーリング機能だと主張する。ITシステムの拡張性、応答性を高めたことによって、News UKは『The Sun』のコンテンツに課金する「Sun+ initiative」を容易に実現した。

期間限定のコンテンツ運用法

 同社のインフラにクラウドを導入したことで、News UKは期間限定で収益を生みやすいプロジェクトに注力できるようにもなった。一例を挙げると、同社はサッカーのプレミアリーグとスコティッシュプレミアリーグのコンテンツ独占権を獲得し、この独占性を利用して収益を増やしている。

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