【連載コラム】医療ITの現場から
iPadとクラウドの活用で変わる医療の未来
2014年7月26日に東京にて「医療現場でもっと役立つiPadの活用方法」というイベントが開催され、医療現場でのiPadの活用事例や今後の方向性が報告された。その内容の一部を紹介しよう。
厚生労働省は2010年、電子カルテの外部保存に関する通知を一部改正し、医療分野におけるクラウドコンピューティング(以下、クラウド)の活用を解禁しました。これにより診療録などをクラウドへ保存することが可能となりました。また、時を同じくして米Appleが「iPad」を発売し、タブレットが普及し始めました。この2つの出来事を境に医療分野におけるIT化は、これまでの「業務効率化を主体とした活用」から「コミュニケーションツールとしての活用」へと、新たなステージに移ったといえます。
医療分野のクラウド解禁がもたらした変化
「医療分野におけるクラウド解禁」は、医療現場に以下の3つの変化をもたらしています。
1. クラウドバックアップ
2011年の東日本大震災を契機に電子カルテのデータ管理方法が見直され、クラウド技術を活用した遠隔地でのバックアップが増加しています。
2. 地域連携ネットワーク
クラウド技術を地域連携に活用することで、安価なネットワーク構築が可能となり、その普及を後押ししています。
3. 在宅医療
クラウド技術を活用した在宅分野におけるコミュニケーションツールが相次いで登場し、医療機関間の情報連係や医療従事者だけではなく、介護従事者を含めた多職種間での情報共有が進みつつあります。
タブレットの普及がもたらした変化
また、iPadが登場した時期からタブレットの普及が急速に進み、医療現場でもさまざまな活用事例が報告されています。
1. 問診端末
タブレットの携帯性と、誰でも直感的に使用できるという特性から、問診端末として使用するシステムが多数登場し、その導入が進んでいます。
2. 診療サポート端末
患者説明の際に、レントゲンや内視鏡などの画像をタブレットで表示して利用します。患者自らに画像を操作してもらうことで、身近に感じて興味がわきやすく、患者とのコミュニケーションが活発になるという事例が報告されています。
3. 検査入力・指示確認端末
コメディカル(医療スタッフ)が医師から依頼された処置やリハビリを行う際にも、タブレットが活用されています。処置をしながら端末を操作することが可能となり、効率性が向上しています。
4. 在宅医療での情報管理端末
在宅医療では患者宅など出先で利用することが多く、携帯性・操作性の良さからタブレットの活用が進んでいます。在宅医療の現場におけるタブレットへの期待は高く、最もその活用が進んでいる分野だといえます。
このようにクラウド技術とタブレットの2つのイノベーションは、医療の現場でさまざまな変化を生み出しています。さらには、血圧計や体温計、体重計、歩数計などパーソナルヘルスケアシステムとの連携が進むことで、医師と患者との間で「積極的なインフォームドコンセント」をもたらすことが予想されます。
クラウドとスマートデバイスが医療にどのような変化をもたらすのか
最後にクラウドとスマートデバイスが、医療に今後どのような変化をもたらすのかを考えてみましょう。
コスト
クラウドとスマートデバイスはどちらもシステム導入時の価格を低下させていますが、課金方法も変化しています。今後は多くの医療機関でシステムがシェア(共同利用)され、使用した分だけ請求される方式へと変わっていくと予想されます。
利用シーンの多様化
医療の現場での活用は今後ますます活発になり、「現場発想」(マーケットイン)によるシステム開発がさらに進んでいくことでしょう。
ITを活用したコミュニケーションの一般化
IT活用のハードルがさらに低くなり、タブレットを医療・介護職員が1人一台保有し、スマートフォンを操作するのと同様、手軽にコミュニケーションが充実することが期待されます。
著者紹介
大西大輔(おおにし だいすけ) メディキャスト株式会社 メディプラザ統括マネージャー
2001年一橋大学大学院MBAコース卒業後、同年日本経営入社。2002年に医療機関の“選ぶ”を支援する展示場「メディプラザ」の1号店を東京(神田)に立ち上げ、その後2003年にメディプラザ大阪、2005年にメディプラザ福岡を順次開設。2007年より東京・大阪・福岡の3拠点を統括する統括マネージャーに就任。専門の医療IT分野については、医師会、保険医協会などの公的団体を中心にセミナー講師を多数実施。
【関連サイト】
ITを活用した経営改善・業務効率化が実現できるショールーム「メディプラザ」
医師の右腕を育成する「電子カルテ+クラーク養成講座」
医療機関のための製品導入事例紹介サイト「事例Plaza」
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