F1チームのレッドブルはAT&Tとのパートナーシップを強化し、ネットワーク帯域を拡大。世界各地のサーキットと工場間でデータをリアルタイムにやりとりし、レース戦略やトラブル対応に活用している。
2014年のフォーミュラ1(F1)は競技規定と技術規定が過去に例がないほど大きく変わり、シーズン開幕から適用されている。F1は興奮要素に欠けるという批判が多かったことから、FIAは競技条件を平等にして白熱したレースを実現するため、エンジンのサイズから燃料制限まで、多くの項目を対象に幾つか新しい規定を義務付けた。
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この変更の結果、2014年シーズンは状況が一変した。4年間トップの座を守っていたインフィニティレッドブルレーシング(以下、レッドブル)とそのファーストドライバーのセバスチャン・ベッテルは大きく後れを取り、ライバルであるメルセデスAMGペトロナスチームのルイス・ハミルトンとニコ・ロズベルグのペアが優位に立っている。
ただ、レッドブルを憂鬱にしているのは、レースで先頭に立てないことではない。実際、2014年シーズンのレースでハミルトンとロズベルグ以外に勝利した唯一のドライバーは、ベッテルのチームメイトであるダニエル・リカルドだ(第13戦イタリアGP終了時点)。
2014年シーズンの初め、レッドブルは新しい規定に対応するにはコアITを全面改革する必要があると考え、チームのネットワークサプライヤーである米AT&Tとの提携強化に踏み切った。レッドブルの技術提携責任者を務めるアル・ピアーズランド氏は、提携強化は自然な流れだったと話す。
ここ数年間の両社の提携でAT&Tが担っていたのは、チームの技術パートナーとしての役割だった。現在、レッドブルはAT&Tとの関係をイノベーションパートナーに改め、チームの日常運営にはるかに深く関与させ、意見を求めるようになった。
最初に手を付けたのは、コアネットワークの改良だ。「AT&Tがチームに提供する主なサービスは、結局のところサーキットと工場の通信だ。サーキットでの活動を飛躍的に向上できる余地があることが分かっていたので、AT&Tから提供される帯域幅を増やすことを考えた」とピアーズランド氏は語る。
「ネットワークの規模と速度は2013年の2.5倍になり、サーキットと工場で共有できるデータ量は大幅に増加した。また、仏ルノー(レッドブルに現在エンジンを提供しているメーカー)に接続してエンジンのデータをリアルタイムに提供することも可能になった」
「英ベッドフォードにある風洞試験設備と接続するネットワークの規模も拡大した。新たな規定の1つとして風洞試験の時間に制限が課せられたため、風洞試験中にできるだけ多くの情報を集めることがこれまで以上に重要になる」
データ量は、レッドブルのようにフロントグリッドを狙うチームが強くこだわる点だ。レース開催前の週末3日間で約200Gバイトのデータを蓄積し、送信することができる。各マシンには約100個のセンサーが搭載され、ブレーキ、ギアボックス、タイヤ温度といったマシン性能、エンジン制御ユニット(ECU)の性能、エネルギー回生システム(ERS)、エアフロー、サスペンションへの負荷、ドライバーに影響を与える重力加速度など、ほぼ全ての面を計測している。
「こうして集めたデータをタイムリーに工場に届けることが課題だった」とピアーズランド氏は言う。同氏はIT部門に移る前、航空宇宙工学と自動車トランスミッションの設計でキャリアをスタートさせた。
チームのWANリンクをAT&Tのバックボーンに統合したことで、レッドブルは世界19カ所のF1サーキットで集めたデータを、チームのさまざまな施設にほとんど瞬時に転送できるようになった。ネットワークの遅延時間の最長は豪メルボルンのような遠隔地で約300ミリ秒、最短はホームタウン英ミルトンキーンズの目と鼻の先にある英シルバーストーンで実質10ミリ秒以下だ。
高速データ転送が重要になる明確な根拠はたくさんある。
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