モバイルシンクライアントの落とし穴
スマートフォンからデスクトップPC操作、その便利さと問題は
モバイル端末をシンクライアント端末として利用するときの操作性は徐々に改善されている。ただし、接続性やテキスト入力など、「使いにくい」と感じる点はまだ残っている。
仮想デスクトップインフラ(VDI)は、さまざまな種類の端末からアプリケーションへアクセスできるようにする。外勤のスタッフでも、デスクトップPCやノートPCだけでなく、タブレットなどのモバイル端末から会社のアプリケーションへアクセス可能だ。
ただし、VDIのエクスペリエンスは、全ての端末で同じわけではない。ネットワークの速度や画面サイズ、タッチインタフェースなどの使い勝手が、ユーザビリティに大きく影響するからだ。利用に適する仕事やスタッフメンバーも、モバイル端末の種類によって異なる。
モバイルシンクライアントに潜む「3つの落とし穴」
会社が端末を支給して「BYOD(私物端末の業務利用)」を進めているなら、エンドユーザーにはタブレットやスマートフォンを含む多様なモバイル端末の選択肢を提示することが重要だ。それが、モバイル端末をシンクライアント端末として利用するときのカギになる。
落とし穴1:モバイルネットワーク
恐らくオフィスでは、会社専用の高速ネットワークを利用しているだろう。設計上の問題が特に無ければ、VDIを利用するのに十分な通信速度が出るはずだ。
VDIでは、優れたユーザーエクスペリエンスを実現するために、適切な通信速度は不可欠である。モバイル端末ユーザーは公衆無線LANスポットに加え、3G/LTE回線を利用する。いずれのモバイルネットワークもここ数年、高速化が進んだ。だが他の大勢のユーザーとの共有であることに変わりはない。
モバイルネットワークはVDIではなく、Webトラフィックに最適化されている。モバイル端末から各モバイルネットワークを経由してWebコンテンツへアクセスしても特に問題はない。だが同じ端末とネットワークでVDIを利用しようとすると失敗する場合がある。
ネットワークパフォーマンスのこうした不確実性は、シンクライアント端末としてモバイル端末を利用する従業員の信頼まで損ねる結果になりかねない。ネットワークの変動性を従業員に教えることは、従業員の満足度を改善する有効な手だてとなる。従業員は、モバイル端末とVDIで負荷の大きいタスクを実行するには、より優れたネットワーク接続が必要だと分かるようになるはずだ。
落とし穴2:画面サイズ
ポケットや小さなバッグ、あるいはバックパックに入るモバイル端末に、デスクトップ端末と同じ大きさの画面を求めることはできない。ハイエンドなモバイル端末の中には、クライアントPCと同等、またはそれ以上の優れた解像度を持つものもあるが、画面サイズは比較にならないほど小さい。WindowsアプリケーションをVDIを介して利用する場合も、モバイル画面では小さな表示になってしまう。
デスクトップの大きな画面であれば読みやすいテキストも、スマートフォンで読もうとすると拡大鏡が欲しくなるほどだ。小さな文字に対する耐性は従業員によって違う可能性があり、さまざまな従業員に適する多様なモバイル端末の選択肢を用意することが重要となる。ノートPC、タブレット、スマートフォンなどは、全て選択肢に含まなければならない。
落とし穴3:タッチインタフェース
モバイル端末とデスクトップ端末の最も大きな違いの1つが、タッチスクリーンだ。VDIは通常、マウスとキーボードの利用を想定している。一方でモバイル端末は、しばしばそれらの機能をタッチスクリーンへ置き換えている。そのため、ナビゲーションが大きな課題となる。スタートメニューを開いて、適切なアプリケーションのショートカットを見つけることでさえ簡単にいかない可能性があるのだ。
ただ幸運なことに、VDIクライアントソフトの中には、モバイル端末にスタートメニュー機能を複製できるネイティブインタフェースを用意しているものもある。それらのインタフェースを利用すれば、アプリケーションの起動や切り替えが容易になる。
ナビゲーションを簡単にするもう1つの方法は、従業員の端末にデスクトップ全体ではなく、個別のアプリケーションを配信する仕組みである。フルスクリーンで単一のアプリケーションを表示する仕組みであり、操作性は一般的なモバイルアプリケーションに近い。
多くのモバイル端末ではBluetoothキーボードの利用が可能だ。物理キーボードを利用すれば、モバイル端末が持つ小さなオンスクリーンキーボードを使わずに、大量のテキストを打ち込むことができる。また、オンスクリーンキーボードはしばしば画面の大きな部分を隠してしまうが、物理キーボードを接続すればテキスト入力中も画面を全てアプリケーションの表示に使うことができる。
究極のキーボード端末は、着脱可能なキーボードを搭載し、ノートPCとしてもタブレットとしても利用できる「2-in-1端末」だ。また米AppleのiOS端末以外の端末は、マウスやトラックボールを使えば、モバイル端末に完璧な“Windows感”を持たせることもできる。
かしこく選ぼう
モバイル端末をシンクライアント端末として利用する仕組みには、これまでさまざまな改良が施されてきた。画面の高解像度化はリモートデスクトップでズームやパンの必要性を減らし、モバイルネットワークの高速化はユーザーエクスペリエンスをより好ましいものに変え、クライアントソフトの改良はリモートデスクトップをナビゲーションするときのイライラを少なくした。だがそれでも、クライアントPCからVDIへアクセスするときと同等のユーザーエクスペリエンスが実現できているわけではない。
スマートフォンからVDIへアクセスすることは、いつでもどこでも使える可用性と引き換えに、さまざまな妥協が必要になる。一方、2-in-1端末やタブレットなどは利便性で劣るものの、重量やサイズなどのコストに見合う優れたWindowsエクスペリエンスが得られる。いずれにせよ、VDIへアクセスするニーズや希望する端末は従業員によって異なる点に留意すべきだろう。
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