アプリのラッピングとコンテナ化は、モバイルアプリケーション管理(MAM)における重要な要素だ。どちらも同じ問題を解決することを目的としているが、その方法は大きく異なる。
モバイルアプリケーション管理(MAM)を使用すると、IT担当者はより細かい制御が可能になり、業務用のアプリを私用のアプリから隔離できる。その主なアプローチは「コードベースのコンテナ化」と「アプリのラッピング」の2つだ。
MAMを導入すると、ユーザーは業務に支障をきたすことなく、友人とのチャット、猫の写真の送信やツイートを好きなだけ行える。機密なアプリやデータは、サンドボックス化された環境で保護されるので、個別の制御と高いレベルのセキュリティを確保することができる。
コードベースのコンテナ化のアプローチでは、モバイルデバイス管理(MDM)またはMAMのベンダーが提供するソフトウェア開発キット(SDK)とモバイルアプリのコードを統合する。
SDKを利用すると、開発者はコンテナ化をアプリに直接組み込み、MDM/MAMベンダーの管理プラットフォームにひも付けることができる。また、他のカスタムアプリに共有サービスを公開して、カスタムアプリが発行するサービスにアクセスすることも可能だ。
特定ベンダーのSDKとアプリを統合するのは効果的な戦略だ。ただし、このアプローチを採用すると、企業が特定ベンダーの製品に縛られる恐れがある。また、独立系ソフトウェアベンダーはMDM/MAMベンダーのSDKごとに異なるバージョンのアプリを作成しない。そのため、市場ではコンテナ化されたサードパーティー製アプリのセグメントが生まれることになる。さらに、既に開発および導入済みの業務アプリに関する問題も存在する。SDKと統合するためにアプリを更新して、コードを書き直す作業は決して楽なものではない。
アプリのラッピングでは、より簡単にコンテナ化と同じ効果が得られる。このアプローチでは、アプリをコンパイルした後に、MDM/MAMベンダーが提供する動的なライブラリの階層がアプリのネイティブバイナリファイルの上に配置される。開発者は、ベンダーのSDKやアプリケーションプログラミングインタフェース(API)とアプリのコードを統合する必要はない。それどころか、開発作業すら必要ないのだ。多くの場合、サービスの管理ウィザードに従って数回クリックするだけで、MDM/MAMの管理者は、ソースコードにアクセスすることなくセキュリティ機能や制御機能をアプリに組み込むことができる。
アプリのラッピングでは、アプリの標準のシステムコールをベンダーのセキュリティライブラリに含まれる安全なシステムコールに置き換える。これは、モバイルデバイスでアプリを保護して管理するための階層をアプリの周りに追加することに他ならない。アプリのラッピングは「ソースコードにアクセスできない」「開発のリソースが限られている」「すぐにアプリを稼働させる必要がある」という場合によい解決策だといえる。
アプリのラッピングは、コードベースのコンテナ化で利用可能な幾つかの機能をサポートしていない。例えば、共有サービスを公開して使用する機能などだ。また、もう1つ重要な注意事項がある。ソフトウェアのライセンス契約とその契約で許可された用途という観点では、自社で開発したアプリ以外のアプリをラッピングするのは少々厄介な作業だ。アプリのラッピングは少ない負担でアプリを隔離できるアプローチだが、セキュリティの階層を追加するプロセスはアプリの利用規約に違反する恐れがある。さらに、他人が記述して公開したコードを許可なく改変することは違法行為に当たる。そのため、著作権法の違反につながる可能性もある。
複数のアプリで安全にドキュメントを共有するなど、コードベースのコンテナ化が提供する機能が必要でない限り、アプリのラッピングを利用した方がよいだろう。アプリのラッピングでは開発作業が必要ない。また、どのMAM製品にも期待される多くのメリットを提供しながらモバイルアプリを隔離できる最も簡単なアプローチの1つだ。
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