2015年02月26日 08時00分 公開
特集/連載

約900万人の診療データベースを活用する薬剤の副作用分析サービスが登場医療IT最新トピック

済生会熊本病院が開発したクリニカルパス改善ソフトウェア、薬の受け取り時間と店舗を指定できるマツモトキヨシのスマートフォン公式アプリなど、医療IT関連の最新トピックを紹介します。

[翁長 潤,TechTargetジャパン]

 「IT化が他分野より10年遅れている」ともいわれる医療業界だが、関連技術や製品、サービスは日々進化している。医療IT関連の動向を紹介する「医療IT最新トピック」。今回は、済生会熊本病院が開発した治療プロセスの品質管理を支援するソフトウェア、日立システムズのチーム医療のための院内コミュニケーションツール、薬の受け取り時間と店舗を指定できるマツモトキヨシのスマートフォン公式アプリなどを取り上げる。

社会福祉法人 秀峰会がワークフローシステム導入、稟議書決裁を効率化

 社会福祉法人の秀峰会(神奈川県横浜市)が電子承認ワークフローシステム「X-point」を導入して、稟議(りんぎ)書決裁に関する事務作業を効率化して現場の業務負担を軽減した。提供元のエイトレッドが発表した。

 福祉・介護事業施設を運営する秀峰会は、事業拠点や職員が増加する中、稟議をはじめとする申請、承認、報告に関する業務を効率化したいと考えていた。そこで申請・承認業務の効率化や業務の標準化/正規化、ペーパレス効果などが見込めると判断し、電子承認ワークフローシステムの導入を検討した。その結果、「非改ざん性」「証跡を確実に追跡できる」という機能要件に合致したX-pointを採用。2014年10月にシステム構築を完了した。

 秀峰会はこのシステムの導入で、従来1週間から2週間かかっていた決裁処理を3日程度に短縮した。また、急ぎの承認を得るために必要だった拠点間の稟議書持ち回りのプロセスをなくし、承認状況を簡単に確認できるようにするなど起案者の負荷を軽減した。さらに申請書類の保管や管理の手間を不要にしたり、利用者の書類検索を容易にするなど、本部における管理業務の負荷も軽減したという(発表:エイトレッド<2015年2月3日>)。

厚労省やFDAの規制に適応する文書管理記録システム、富士ゼロックスとユニオンシンク

 富士ゼロックスとシステム開発業のユニオンシンクが、医薬品や医療機器の品質問題発生を未然に防ぐ是正・予防措置(CAPA)対応の記録文書管理システムを提供開始した。同システムは富士ゼロックスの文書管理ソフトウェア「Apeos PEMaster Evidence Manager 2.3」と、ユニオンシンクのCAPA業務ワークフローシステム「業務デザイナーfor GxP」を組み合わせたもの。両ソフトウェア間の連係機能を業務デザイナーfor GxPにパッケージ化して提供する。

 発表したシステムは、厚生労働省や米食品医薬品局(FDA)などが定める、医薬品や化粧品、医療機器に関する品質、有効性、安全性のための規制に準拠するための機能を備える。電磁的記録・電子署名利用のための指針である「ER(E-record)/ES(E-Signature)指針」に準拠した形式で、CAPAに関する実施結果を記録する機能はその1つだ。具体的には業務デザイナーfor GxPによってCAPAに関する業務のワークフローを効率化し、そのプロセスで生じた記録文書の電子原本をApeos PEMaster Evidence Manager 2.3に自動的に記録する。また、Apeos PEMaster Evidence Manager 2.3と業務デザイナーfor GxPとの連係検証を済ませた状態で提供するので、医療機器や医薬品の開発、製造に関わるシステムの正常稼働を検証する「コンピュータ化システムバリデーション(CSV)」に伴う負荷を軽減できるという。

 同システムの初期導入費用は2000万円程度から(ソフトウェアとサポートサービスを含む)。両社は品質管理の統制強化と業務の効率化を支援するシステムとして特に中堅規模の製薬会社や医療機器/化粧品メーカーへの訴求を図る(発表:富士ゼロックス、ユニオンシンク<2015年2月3日>)。

スマホで薬の受け取り時間と店舗を指定可能、マツモトキヨシが新公式アプリ

 ドラッグストアを全国展開するマツモトキヨシホールディングスがスマートフォン公式アプリに、利用者が薬を受け取る店舗や時間を指定できる「処方せん送信サービス」機能を追加。2015年2月9日から提供開始した。マツモトキヨシ会員が利用できる。

photo

 処方せん送信サービスでは、診療所や病院などの医療機関で受け取った処方せんをアプリで撮影し、受取り希望日時や最寄りの店舗名を選択して情報を送信する。指定店舗の薬剤師が送信内容を確認・用意した上で、受け取り確認メールや薬の準備完了のメールを返信する。利用者は指定した時間に来店して薬を受け取る。利用者が都合のよい時間や店舗を指定できるようにすることで、店頭で薬を受け取る待ち時間の短縮を狙う(発表:マツモトキヨシホールディングス<2015年2月9日>)。

チーム医療のための院内コミュニケーションツールを提供開始、日立システムズ

 日立システムズは、スマートフォンを活用して院内の情報共有を支援するサービス「院内コミュニケーションソリューション」を提供開始した。内線電話やナースコール、チャット、プレゼンス(在席状況表示)など、院内の情報共有に必要な機能をスマートフォンから一元的に利用できるようにする。緊急度が高い連絡は内線通話、会議時間の変更などはチャット機能を利用するなど、緊急度に応じた連絡手段の選択を可能にする。

 チームや委員会のメンバーに向けて一斉にメッセージを送信できるグルーピング機能を搭載。相手の居場所や繁忙度などの状況が確認できるプレゼンス機能も備え、相手の不在による伝達漏れや電話のかけ直しなどの無駄をなくすのに役立つ。

photo システムイメージ(出典:日立システムズ)

 院内コミュニケーションソリューションの初期導入費用(スマートフォン30台の場合。無線LAN設備費を除く税別)は350万円から(発表:日立システムズ<2015年2月10日>)。

済生会熊本病院とNEC、クリニカルパス改善を支援するソフトウェアを開発

 済生会熊本病院(熊本県熊本市)が治療プロセスの品質管理を支援するソフトウェア「新型電子クリニカルパス分析ビューワ」をNECと共同開発した。電子カルテ内の診療データを収集、分析、可視化し、標準診療計画「クリニカルパス」に基づいた治療プロセスが患者の経過に与えた影響を分析したり、次の計画策定や治療プロセスの改善を支援する機能を備える。2014年4月からの自院での試験導入を経て、現在は本格運用している。NECが2015年2月9日に発表した。

 新型電子クリニカルパス分析ビューワでは日本クリニカルパス学会監修の患者状態アウトカム用語集(Basic Outcome Master:BOM)を使用し、1日分の診療データを記録できる「日めくり記録」機能を搭載する。バリアンス(目標未達成)発生と判定すると、判定内容を決まった用語や形式で記録できる。また、同病院の診療プロセス分析のノウハウを活用したビュワー機能を搭載する。患者別の入院日数やバリアンスの内容や件数、医療資源の投入状況のバラつきや偏りをグラフ化して一覧で確認可能だ。

photo 新型電子クリニカルパス分析ビューワの日めくり記録画面(出典:NEC)《クリックで拡大》

 医師や看護師は、ビュワー画面から標準診療計画から外れた症例の治療内容や患者状態を確認することで担当患者のバリアンス発生状況などを把握したり、バリアンスを予測することもできる。NECは新型電子クリニカルパス分析ビューワを自社の電子カルテシステム「MegaOak HR」の機能に追加した。

 一般的な電子カルテシステムが主要なデータ入力形式として採用する自由記述形式では、入力データとして利用される用語の標準化が難しく、分析可能な形式に加工する作業に手間と時間が必要だったという。済生会熊本病院はこうした現状を踏まえ、新型電子クリニカルパス分析ビューワを活用し、電子カルテから日々の診療データをあらかじめデータ分析が可能な形式で収集する仕組みを構築した(発表:済生会熊本病院、NEC<2015年2月9日>)。

約900万人の診療DBを活用した分析サービス2種、メディカル・データ・ビジョンが発表

 メディカル・データ・ビジョン(MDV)は2015年2月16日、同社が保有する約900万人の診療データベースを活用する分析サービス2種を発表した。

 1つ目が、薬剤の安全性分析をはじめとした疫学調査支援を目的とする分析システム「MDV analyzer for Academia」だ。2015年3月1日に提供を開始する。

photo MDV analyzer for Academia画面

 MDV analyzer for Academiaは、薬と副作用の因果関係を特定する分析機能を備える。薬剤や疾患などの任意の条件項目(既往、起点、イベント)を指定することで、該当条件下での患者数やイベント発生ヒストグラムなどを表示する。例えば、特定の疾患(既往)を持つ患者がある薬剤を使用した場合(起点)、どのような副作用(イベント)が発生するかを分析できる。対象期間を設定すると、さらに詳細な分析も可能だ。

photo 患者属性・イベント発生ヒストグラム

 2012年4月、厚生労働省が医薬品のリスク低減のための「医薬品リスク管理計画」(RMP)指針を通達したことで、薬剤の有効性・安全性対策が重要視されている。MDVは、従来薬剤の安全性分析で用いられる市販後調査では対象患者数が少なく副作用との因果関係の特定が難しく、その依頼コストもかさむと説明する。MDV analyzer for Academiaについて、同社は製薬会社や公的研究機関、大学などの利用を見込む。利用金額は1年間当たり2000万円(大学での利用の場合)。

 2つ目が、OTC(Over The Counter)医薬品をはじめとするヘルスケア・美容関連製品に関するデータ分析サービスだ。主にOTC医薬品を開発・販売する製薬会社に対してOTC市場の把握やマーケティング戦略の構築に役立つ各種分析データを提供する。

 同サービスでは、アドホックな個別調査リポートや月次/半期ごとの定型リポートに加え、MDVが定義した診療統計版OTCマスターに基づいた薬剤、疾患の年間トレンドデータを掲載する冊子型年次リポートを提供する。スイッチ対象薬剤の処方患者属性やセグメント内処方薬ランキング、年時時系列の処方患者数推移、機能性食品の新製品開発に関する市場実態、新規導入のための疾患市場規模などの分析結果を含む。

 個別調査リポートと定型リポートは調査内容によって価格が異なる。冊子型年次リポートの参考価格は20〜30万円程度(税別)で、MDVではマーチャンダイジング(商品計画)や機能性食品、シニア市場などのテーマごとに順次提供する予定だ(発表:メディカル・データ・ビジョン<2015年2月16日>)。

2015年度介護報酬改定に準拠した無料介護保険ソフト、ビーシステムが発売

 福祉ソフトウェアの開発・販売を行うビーシステムが2015年度介護報酬改定に対応する無料介護保険ソフト「ファーストケアHoney(フリー版) Ver.6」の利用申し込みを開始した。

 ファーストケアHoney(フリー版)は、ビーシステムが開発・販売する介護保険業務ソフト「ファーストケア」の無償バージョンだ。居宅介護支援や訪問介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、通所介護などのサービスを提供する事業者を対象に、サービス利用者の管理や記録業務から請求処理などの機能を提供する。製品版の全ての機能を利用できるが、利用可能端末数(1台のみ)や利用可能なサービスに制限がある(ヘルプサポートやオプションサービスの利用は不可)。体験版ダウンロード専用ページで利用を申し込む(発表:ビーシステム<2015年2月23日>)。

診療報酬改定前後の報酬請求額をシミュレーション、インフォ・テックが新ソフト

 介護保険業務に関するソフトウェアの開発、販売を手掛けるインフォ・テックが、2015年度改正の介護報酬の適用前後における報酬請求額を比較検討するソフトウェア「介護報酬シミュレーションソフト(平成27年度版)」の提供を開始した。

photo 介護報酬シミュレーションソフト(平成27年度版)画面(出典:インフォ・テック)《クリックで拡大》

 国民健康保険団体連合会への請求ファイルからデータを取り込むことで、改正前と改正後でのサービス単位の費用や総額を比較検討できる。改正後の介護報酬に基づいた概算金額をあらかじめ把握することで、施設の運営方針や運営施策の策定を支援する。販売価格は1万2000円(税別)となる(発表:インフォ・テック<2015年2月23日>)。

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