従来型のデータセンターハードウェアは、完全なサブシステムとして存在している。サーバを例にとってみると、電源やプロセッサ、メモリ、ストレージが1台の筐体に収まっている。そして、これらのコンポーネントは、短距離用のプロプライエタリな電気インタフェースによって相互に接続されている。プロセッサの速度を向上したり、メモリを追加する必要がある場合は、恐らく新たに筐体を購入するだろう。だが、その際には、それ以外の不要なコンポーネントも増えることになる。
分離型システムは、コンピューティングの構成要素をモジュール化して必要に応じて追加できるようにし、モジュール同士を高速な共有接続(シリコンフォトニクスなど)で接続する仕組みだ。例えば、コンピューティングの処理速度を上げる必要がある場合は、ラックに格納するプロセッサモジュールを増やせばよい。
また、ラックの設計はコンピューティングデバイスに直流(DC)を供給するように変化している。こうすることで、交流(AC)とDCの変換回数が少なくなり、エネルギー効率を高めながら電源装置(およびエラーの発生場所)の数を減らすことが可能になる。現在では、オープンコンピュートサーバはラックに供給されるDCを利用できるようになっている。このトレンドは、システムの分離によって今後も続くだろう。
IT部門とビジネス部門の責任者は、データセンターとそのコンピューティングリソースについてより詳しく把握するために、分析ツールを使用することが増えている。分析ツールを使用すると、データセンターの使用や拡張についてより適切な判断を下すことができる。これは、データセンターインフラ管理などのプラットフォームに対するプロセスとして以前から継続的に見られたものだ。ただし、最近では、この取り組みによって、企業の方針が受身から積極的なものへと急速に変化している。例えば、現在のツールは、管理者が今後の展開を予測する上で非常に高い能力を発揮する。今後ツールの進化が進むと、最終的には、目標達成に必要な変更が事前に提示されるようになるだろう。
これまでビジネス継続性(BC)と災害復旧(DR)は、2つの別個の機能として扱われてきた。また、これらの機能は2つの異なる問題に関連していることが多い。だが、現在、この2つ分野は1つの統合機能にまとめられようとしている。カプッチョ氏は、この機能を「ITサービスの継続性」と呼んでいる。
ITサービスの継続性では、「基幹サービスを持続的にユーザーに提供する」というBCとDRの両方に共通する基本的な目標が基盤となっている。サービスの継続性では、複数のサイトと増え続けているインテリジェンスを利用する。これにより、潜在的な混乱やサービス停止を予測し、ワークロードを動的に他のサイトに移すことが可能になる。これは証券会社などの大企業が採用しているデータセンター戦略である。だが、2016年以降にはさらに広い範囲で受け入れられるようになるだろう。
一般的にIT部門は、「ビジネスの持続(運用方式1)」と「ビジネス拡大に向けた新しいテクノロジーの開拓(運用方式2)」という二重の課題に対処する必要がある。この2つの運用方式は、同時に展開すると上手く機能しない。運用環境のITに対する従来のプロセス/手続き指向型の取り組みが、新しいテクノロジーによって中断されやすいためだ。このように突如現れた新しいテクノロジーは、ビジネスにとって重大なリスクとなることも多い。だが、遅かれ早かれビジネス部門はこうした新しいテクノロジーを導入する。そのため、このリスクを避けて通ることはできない。
この2つのITの運用方式は「共存可能で、共存すべきだ」とカプッチョ氏はいう。運用方式1のプロセス、プロシージャ、コンプライアンスを維持しながら、運用方式2の活動に伴うアジリティや実験を利用しても問題はない。目標は、この2つの取り組みを別々に進めることである。だが、IT担当者が運用方式2での試みで間違いや失敗を犯しても罰するべきではない。
徐々に運用方式を変更することも可能だ。例えば、実験と評価の段階を経て新しいテクノロジーがビジネス部門に導入されたとする。テクノロジーが受け入れられ、使用頻度が高くなると、IT部門はテクノロジーを管理するために新たなプロセスや手続きを導入するだろう。このような方針転換がIT部門で見られる一例は、パブリッククラウドの使用である。
最後にカプッチョ氏が挙げたのは、ITとビジネスを前進させるために必要なスキルを持ったIT担当者の不足だ。ITの複雑化、サポート需要の増加、開発期間の短縮、予算の削減、エンドユーザーの要件といった要因は、IT部門のスタッフにプレッシャーを掛けている。
IT担当者には、自分の専門知識にとらわれずに考え、さまざまなスキルを結集するより高い能力が求められている。社員に対して複数業務を扱うクロストレーニングを実施して、さらなるトレーニングと成長を促すことは、IT担当者のやる気と継続雇用という観点で優れた戦略だ。この戦略は、IT担当者の積極性を引き出し、人材の流出を抑えることにつながる。
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