長期にわたってデータセンターに影響を与える真のトレンドは、テクノロジーに過剰な期待が集まった後に生まれるものだ。2016年以降も間違いなく影響力を持ち続ける10個のトレンドを紹介する。
データセンターのテクノロジーは、驚異的な速さで生まれ、進化し続けている。仮想化のような新しい概念がわずか数年でインフラに不可欠な存在になったことや、高性能なストレージキャッシュと仮想SAN(Storage Area Network)導入でSSD(ソリッドステートドライブ)が果たす役割が拡大している状況を考えると分かるだろう。
IT担当者は、新しい動きに目を光らせ、新たに生まれた製品やイニシアチブがデータセンターとビジネスに及ぼす影響について検討しなければならない。米Gartnerが2015年6月15~17日に開催した「IT Operations Strategies and Solutions Summit 2015」で、アナリストのデイビッド・J・カプッチョ氏は、2016年以降もデータセンターに影響を与えるであろう10個のITに関するトレンドを取り上げた。
新しいワークロードやユーザー、データは絶えず生まれ、ITリソースの需要も増加の一途をたどっている。カプッチョ氏は、平均年間成長率(AAGR)について言及した。サーバワークロードは10%、電力需要は20%、ネットワーク帯域幅は35%、そしてストレージのAAGRは驚異の50%だ。IT部門の責任者は、使用状況の傾向を把握し、サービスのパフォーマンスやユーザーの操作性に関するレベルを維持するのに十分なリソースを確保できるよう入念なキャパシティープランニングを行わなければならない。
ビジネス部門に一定のアジリティと応答性が必要であることは紛れもない事実だ。だが、運用を維持するだけで精いっぱいのIT部門にとって、この状況を実現するのは並大抵のことではない。その結果、ビジネス部門は、各部門の予算からモバイルアプリやクラウドサービスの導入資金を捻出し、さらには社員個人が所有しているデバイスを使用するような状況が生まれている。
数年前であれば、これは「シャドーIT」と呼ばれ、好ましくない状況として認識されていた。現在、ビジネスの問題を解決するために必要であれば、ビジネス部門はITの問題に取り組むことを厭わない。だが、テクノロジーが適切に統合および管理されていることを保証するのはIT部門の業務だ。「IT部門が目指すべきは、こうした取り組みに正面から対応し、業績の向上を達成するよう早い段階でビジネス部門と連係すること」だとカプッチョ氏は語る。
より優れたツールをそろえることからコラボレーションが始まる企業もある。
米法人向け金融会社W. P. Careyで、副社長と運用部長を兼任するクリス・ディジャコモ氏は次のように話す。「当社では『Microsoft SharePoint Server』を導入する予定だ。SharePointの運用業務は、南アフリカ共和国にあるOpenboxという会社に委託することになっている。目的は、エンドユーザーが、IT部門だけでなく、自分が所属する部門内でも効率的に共同作業できるようにすることだ」
ディジャコモ氏によると、W. P. Careyは新しいIT関連の役職として、IT部門と各ビジネス部門との調整役である4人のビジネスリレーションシップマネジャーを設けたという。
「ビジネスリレーションシップマネジャーの仕事は、ビジネス部門の社員と同じレベルでビジネスについて理解し、ビジネス部門の生産性や効率を高めるプロセスとツールの導入をサポートすることだ」(ディジャコモ氏)
ビジネスに大量のデータを提供するネットワークに接続された組み込みのセンサーをさまざまな場所に設置する動きが急速に広まっている。これは一般的に「モノのインターネット(IoT)」と呼ばれている。米Gartnerによると、IoTを構成する接続型デバイスの台数は2020年までに260億台以上になる見通しだ。つまりIT部門は、大量のセンサーソースから提供されるリアルタイムのデータ量が増え続ける中、そのデータの処理や保存、関連付け、報告を行うという気の遠くなる課題を抱えている。
一方、ビジネス部門では、こうしたデータを利用して優れた意思決定をリアルタイムで行い、長期的な視点でより戦略的なトレンドとチャンスが把握できるようになる。
IT担当者であれば「ソフトウェア定義」と名の付く多種多様な用語を耳にしたことがあるだろう。例えば、「ソフトウェア定義ストレージ(SDS)」「ソフトウェア定義ネットワーク(SDN)」「ソフトウェア定義データセンター(SDDC)」などだ。ソフトウェア定義は、企業のITを自動化し、調整・運用する新しい手法だ。理想的な条件がそろえば、ワークロードのパフォーマンスとネットワークトラフィックの動作を強化しながら、1カ所で迅速かつ柔軟にインフラを再構成できるようになる。また、全てのものはオープンスタンダードに従って実行される。
SDNなど一部のソフトウェア定義要素は手軽に利用できるようになっている。だが、ソフトウェア定義データセンターなど他のソフトウェア定義要素は、オンプレミスとオフプレミスのコンピューティングリソースがツールと完全に統合されるまで実現するのは難しいだろう。さらに、ソフトウェア定義インフラの自動化に使用するロジックやルールは、定期的に審査して更新しなければならない。コンピューティングニーズは時間の経過と共に変化するため、こうした審査や更新を行わなければ、不適切または無意味な自動化がなされるリスクを負うことになる。
「自動化するなら、この点について忘れてはならない」(カプッチョ氏)
データセンターで統合されたインフラ(コンバージドインフラ:CI)が利用されるのは、以前から見られる傾向だ。最近、CIの利用は活発化しており、その勢いは今後数年でさらに増すと考えられている。CIの魅力はシステムレベルのアプローチにある。サーバが提供されるだけでなく、ストレージやネットワークコンポーネントもベンダーによって最初からバンドルされ、密接に統合されている。CIプラットフォームは、より高いパフォーマンス、電源効率、管理容易性を提供するために絶えず進化している。
ただし、CIはIT部門にとって厄介な存在になることがある。カプッチョ氏は、経費が生じると上級幹部社員がCIの選定に深く関与するようになると語る。これに伴い、「特定の業務に最適な製品を使用する」というIT部門が重視してきた考え方は、最高経営幹部の共感を得やすいベンダーとの関係を重視する考え方にシフトする。また、インフラのニーズは上昇および変化するため、CIプラットフォームの評価に対する投資を再利用することは難しい。そのため、企業は既存のベンダーに依存し、他のベンダーの製品やサービスを利用できなくなる状況に陥る恐れがある。
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