Computer Weekly製品導入ガイド
2015年が「Software-Defined Everything」の年にならない理由
IT業界はSoftware-Defined(ソフトウェア定義)の宣伝にやっきになっているが、彼らの期待ほどには盛り上がっていない。
かつて嘲笑されていた「クラウド」という用語がようやく浸透し始めたところで、IT業界の宣伝マシンがまた新しい用語を私たちに押し付けている。「何もかもソフトウェア定義(Software-Defined Everything:SDE)」はおなじみの3文字形式を取っているが、多くのCIOにとって、その具体的な意味はもっと説明的だったかつての前例と同じくらい漠然としている。
かつてのクラウドと同じく、SDEは仮想化の進歩を通じてITの真の柔軟性とアジリティを実現するという、長年の夢だった境地へ私たちを導くと約束する最新技術とアプローチを全て網羅する用語として使われている。
現在のクラウドのほとんどが、仮想サーバ、処理能力、ストレージ(およびその上でホスティングされるサービスとアプリケーション)を簡単に運用する手段を意味するようになったのに対し、SDEはデータセンターとその先にある全て、すなわちコンピューティングやストレージからネットワークとデバイスに至るまで、何もかも仮想化する概念を指す。つまり、IT部門はITプロビジョニングと管理を全てソフトウェア経由で自動化することが可能になる。ここで使われる標準的なコモディティソフトウェアは、実質的にIT部門の目には見えなくなる。しかも、現在のパブリッククラウド/プライベートクラウドにありがちなインテグレーションや手作業による設定という避けられないボトルネックはなくなる。そして、CIOは高速かつ効率的で拡張性の高いITサービスを組織に提供することのみに専念できるようになるという触れ込みだ。
工業的規模と効率性を備えた、広大で拡張性の高いデータセンターを構築しようとする巨大クラウドのオペレーターやプロバイダーにとって、確かにこのアプローチは不可欠だ。実際にSDEの大部分は、Facebookの「Open Compute Project」(データセンター全体の標準化と自動化推進を目指すプロジェクト)のような発展を手掛かりとしている。だがこのアプローチが転じて本当に幅広い企業に浸透するのか。もしそうだとしても、今はそれに対して何かをすべきときなのか。
有望視する見方もある。IDCの予想では、ソフトウェア定義ネットワーク(SDN)の市場は、10億ドル足らずだった2014年から、2016年には37億ドル、2018年には80億ドルに成長する見通しだ。Gartnerは、2017年までには大企業の半数以上が、アーキテクチャに関してクラウド大手と同じようなアプローチを採用していると予想する。一方、Frost & Sullivanは、少なくともアジア太平洋地域で超成長が始まると予想。「ソフトウェア定義革命がデータセンターの境界を越えて広がり、2015年はSDEの年になるだろう」と予測した。
宣伝文句と慎重姿勢
だがCIOたちの見方はもっと慎重だ。
Harrods BankのIT責任者、スティーブ・ピケット氏は、「ITでは大抵そうだが、売り込み文句は現実よりずっと先を行っていて、現在と過去の現実を一切排除しているように見える。宣伝する側は全てが新しくなった製品を買うべきだと促すが、企業にとって、今機能しているものを捨てて新しいものに全てを賭ける意味はほとんどない」と言い切る。
「IT部門が自らの吹聴に肩入れし過ぎて、理性的な売り込みができないときもある。クラウドはその一例だった。われわれはこれを受け入れて採用し、今は他の手段と共存させている。われわれが抱える問題を全て解決してくれるというのがうたい文句だったが、単に他の問題を解決しながら新しい問題を導入したにすぎなかった。今回は違うと信じる理由は何もない」(ピケット氏)
Severn Trent WaterのグループCIO、マイロン・フリシク氏も同じ見方だ。同氏は積極的にクラウド中心のIT戦略を追求する一方で、SDEはまだ成熟とは懸け離れていて、今は導入を検討できる段階ではないと話す。「ソフトウェア定義データセンターはいずれ現実になるかもしれない。しかしこの話題についての会話から判断すると、サプライヤーはまだ、それが何を意味するかを表現しようとしている段階だ。盛んに宣伝されながら定義されていなかった初期のクラウドを思い出させる。導入を試みる前に、このアイデアが発展するための時間をもっと与える必要があると思う」
ハイブリッドの現実
現時点でソフトウェア定義環境をボトルネックなしに機能させるためには、全インフラを仮想化する必要がある。だが現在ほとんどの企業はハイブリッド環境で運営されていて、スタンドアロンシステムやパブリッククラウド/プライベートクラウドが混在している。仮想化された環境へ完全移行しない限り、トラブルがなくなるという宣伝通りの恩恵はSDEでは享受できない。Tullow Oilのアンドルー・マークスCIOが言うように、「レガシー(物理であれ仮想であれ)プラットフォームを使っているIT部門がこれを導入するまでにはまだ当分かかる」見通しだ。
一方で、クラウドサービスやソリューションが成熟を続けるに従って、社内技術への投資を増やすのではなく、外部のプロバイダーの利用を選ぶ組織は増えるかもしれない。マークス氏は「クラウドを利用すれば、それが機能している限りは自分たちがプラットフォームに関与する必要はなく、従ってハードウェア定義かソフトウェア定義かを気にせずに済む」と言い添えた。
徐々に燃焼
こうした慎重姿勢はあるものの、CIOの間では、SDEがやがてITインフラに根底から影響を与えるという見方が強まっている。その実現までにはまだ時間がかかるかもしれないというだけのことだ。
英Highways Agencyの部門CIO、イアン・キャンベル氏は言う。「私も未来はSDEにあると思う。同様に、データセンターは仮想化が進み、企業はサプライヤーからオンデマンドで処理能力とストレージを電力のような真のユーティリティ方式で調達するようになると考える。ただし現時点では、ほとんどのシステムとサービスは複雑過ぎ、あるいはカスタマイズされ過ぎていて、SDEには向かない。SDEを念頭に新システムを構築し、管理するようになればこの状況は徐々に改善され、容易になる。だが現実的には、真の勝者がはっきりして、他のプロバイダーが対応を強いられるような標準が確立されるのは何年も先になるだろう」
インフラ企業Jardine Lloyd ThompsonのグループCIO、イアン・コーエン氏もSDEについてのこうした見方に同調する。「ベンダーやアナリストの主導で宣伝されてきた最近の技術が大抵そうだったように、根底の機能には価値や潜在的可能性がある。しかし問題はやはり、既に売り込み過剰になっている点にある。あまりに早く飛びついたり、適切な思考や計画や洞察もなく移行したりすれば、必然的に痛い目に遭う」(コーエン氏)
以上を前提とすると、2015年中にこの技術が企業に大きく浸透する見通しは薄いものの、これを無視するCIOは賢明ではないとコーエン氏は述べ、こう指摘した。「今これを試し、ある程度の経験を積み、学習すべきときであるのは間違いない。ここには着実な要素がある。同様に、世界は未開発地帯ではなく、DevOpsであれ、プライベートクラウドであれ、パブリッククラウドやSDEであれ、それだけで万事には対応できない。規制のない環境で動ける自由は誰にもない。SDEは急成長して次世代コンピューティング環境の一部になるだろう。だが少なくとも現時点では、あくまでも一部にとどまる」
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