Cisco Systems は6000人以上の人員削減を発表した。同社は2022年にも4000人以上の人員を解雇している。同社がレイオフを繰り返す理由は何か。
ネットワーク機器ベンダーのCisco Systemsは2024年8月、2024年第4四半期(2024年5〜7月)決算を発表した際に人員削減の計画を明らかにした。従業員9万400人の約7%に当たる6300人以上を削減する計画だ。Cisco Systemsは近年、組織的な解雇を繰り返している。背景にある“市場の変化”とは何か。
同社は2022年11月、6億ドル規模のリストラを実施して従業員の5%に当たる4000人を削減すると発表した。2024年2月は従業員の5%に相当する4000人以上を解雇すると述べた。
Cisco Systemsの経営陣は今回のレイオフ(一時解雇)について「人件費削減が目的ではなく、一層の成功を目指すための組織再編だ」と説明した。同社の最高財務責任者(CFO)スコット・ヘレン氏は「われわれのビジネスにおいて最も成長の速い分野にリソースを注ぐ必要がある。コストを再配分することで実現する」と語った。退職金を含むレイオフの経費は、税引き前でおよそ10億ドルを見込んでいる。
組織再編の一環として、Cisco Systemsはネットワーキング、セキュリティ、コラボレーション関連の製品を扱う部門を新設する。同部門のトップには、Cisco Systemsエクゼクティブバイスプレジデントのジートゥ・パテル氏が即日就任した。Cisco Systemsが買収したログ分析ツールベンダーのSplunk製品については「時機を見て同部門に統合し、われわれの全製品ポートフォリオをワンチームとしてまとめる」とロビンズ氏は述べた。
「このトレンドは、業界内部のAI(人工知能)トランスフォーメーションに起因する切迫感と関係があるようだ」と調査会社Dell'Oro Groupのアナリストであるサメ・ブジェルベネ氏は分析する。「レイオフは予算をAIプロジェクトへと切り替える手っ取り早い手段と見なされている可能性がある」とブジェルベネ氏は述べる。
IT業界ではAI技術が台頭する中で、AIスキルを持つ人材を獲得するためにそれ以外の人材のレイオフが常態化している。テクノロジー企業のレイオフ情報を追跡するWebサイト「Layoffs.fyi」によると、2024年の年初から9月18日までの間に、13万7500人が438社から解雇を通告された。
Cisco Systemsの2024年第4四半期の売上高は136億ドルと、前年同期比で10%減少したが、アナリスト予想は上回った。ネットワーキング収入は28%減の68億ドルとなった。同社は2025年第1四半期(2024年8〜10月)の売上高を136億5000万〜138億5000ドルと予想している。あるアナリストはこの範囲の下限の売上高になると予想している。
数年前からCisco Systemsは、買い切り型のハードウェアからサブスクリプション型のソフトウェアに注力してきた。これにより、売り上げの低迷を免れていた。こうした戦略変更の一環として、2024年3月にSplunkを280億ドルで買収を完了して、セキュリティポートフォリオの強化を図っている。
現在ではネットワーク技術に関連したAI製品で収益の向上を目指している。Cisco Systemsはセキュリティ製品と「オブザーバビリティ」(可観測性)製品を、ネットワーキングのポートフォリオと統合してきた。
Cisco Systemsの顧客の中には、AIアプリケーションを運用するためにデータセンターを拡張している企業がある。「企業によってはAI技術を利用するための予算をインフラのモダナイゼーションに費やしている」とロビンソン氏は明かす。
Cisco Systemsのある幹部によると同社は2024年、大手クラウドサービスベンダーから約10億ドルでAI関連のインフラ構築の案件を受注した。さらに、2024年内にはイーサネットと光ファイバー関連の領域を中心として10億ドルの受注を見込んでいるという。
Cisco Systemsは2024年6月、半導体ベンダーのNVIDIAと共同開発した生成AI向けインフラサービス群の「Cisco Nexus HyperFabric」を発表し、企業向けAIネットワーキング市場での事業を本格化させている。Cisco SystemsのハードウェアとNVIDIAのGPU(グラフィックス処理装置)およびソフトウェアを組み合わせ、自社のデータセンターでAIモデルを運用したい企業をターゲットに据える。
Cisco Systemsは2024年内にCisco Nexus HyperFabricをテスト用に提供し始める計画だが、既にこの市場に参入しているベンダーと比べると遅れを取っている。
「ほとんどの企業はまだ生成AIの活用について計画段階にあるため、Cisco Nexus HyperFabricを利用できるが、今にも生成AIを活用しようとしている企業はCisco Systems以外のサプライヤーを選ぶだろう」とTechTargetの米TechTargetの調査部門Enterprise Strategy Group(ESG)でアナリストを務めるジム・フレイ氏は述べる。
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