Androidエンタープライズ機能の強化に取り組むGoogleだが、バージョンの多様化がIT部門の頭痛の種だ。
「Android」はエンタープライズ市場に向けに成熟してきたが、現時点においても幾つか重要な機能および性能が欠けている。
全体的に見れば、Androidのエンタープライズ機能に関して、米Googleが最近進めている取り組みを批判することはとても難しい。同社は競合他社に劣らない優れた仕事をしており、むしろAPIや社内アプリストアツールなど多くの面で他社をリードしている。
今後、Googleは何をすべきかと問われたら、それは通信キャリアと連携し、Androidの新バージョンの普及を加速させることだろう。米AT&T、米Verizon Wireless、米Sprint、米T-Mobile US、その他の通信キャリアは、デバイスのアップデートに関する評価や過剰な性能試験に時間をかけ過ぎている。また、アップグレードプロセスの告知にも問題がある。
Androidの最新版が多くのユーザーのデバイスに組み込まれるまでには、非常に長い時間がかかっている。「Android 5.0 Lollipop」にアップデートしたユーザーは、同OSの発表から半年が過ぎた2015年5月の段階でも、全体の1割以下にとどまっていた。
この問題は重要だ。というのも、OSをアップデートしたユーザーだけが、新しいAndroidエンタープライズ機能を活用できるからである。もし、それらの機能が旧バージョンのそれと大きく異なっていたら、IT部門が全てのAndroidデバイスを一括して管理することは困難になる。
例えば、「Android 6.0 Marshmallow」はよりきめ細かくアクセス権限を設定できるが、5.0はそうなっていない。5.0ではアプリがインストールされると、将来必要になる可能性のある全ての権限をアプリは要求する。6.0の場合、アプリは特定の作業で権限が必要になったとき、例えば、フォトライブラリやマイクへのアクセスなど、必要に応じてアクセス権限を求めるようになっている。これは大きな進化だが、全てのデバイスがそのメリットを享受できるわけではない。
Androidの仮想専用ネットワーク(VPN)機能も、改善されれば利益を得ることができるだろう。会社のシステムにアクセスする業務の多くはVPNを必要とする。デフォルトで全データを暗号化する米Appleの「iOS」デバイスでは、VPNは常にスムーズに機能する。しかしAndroidの場合、暗号化オプションはユーザーに委ねられている。しかもAndroidのデータ暗号化方式はデバイスの処理速度を低下させることがあり、ユーザーエクスペリエンスの大きな障害となっているのだ。
ユーザーに選択肢があることが、多くの人々にAndroidが好まれる理由の1つではあるが、特定の機能にアクセスできないとき、あるいは正常に動作しないとき、ITサポート担当者にとって頭痛の種も大きくなる。
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