VMwareの役員会は、課題は何もないと考えているらしい。同社の顧客がクラウドへ移行する中、本当に問題はないのか。だとすると、同社の自信の根拠とは何か。
「Ahead in the Cloud」(AitC)編集部は2016年8月末に米ラスベガスで開催された「VMworld 2016 US」に出張し、ある情報を得た。VMwareの役員会はどうやら「課題なんてものは存在しない、あるのはチャンスだけ」というスローガンを掲げているらしい。
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約1週間をかけてVMwareのパートナーや顧客と情報を交換するイベントの中で、同社の経営陣は、ほとんどポリアンナ症候群(誤ったポジティブ思考、現実を直視できず自らの良い部分だけを探して自己満足すること)に陥ったかのようなアプローチで、同社が直面している課題についての議論に臨んでいた。
その背景には、クラウドコンピューティングの普及によってエンタープライズITの消費(減価償却)、購入、運用の方法が様変わりしつつあるという事情がある。この風潮の直接的な結果として、自社所有のデータセンターを閉鎖する大企業が相次いでいる。VMwareはこの10年余り、顧客が自社データセンターのパフォーマンスを最適化するのを支援することに注力してきた。
同社はかつて、サーバの仮想化ソフトウェアを大企業に山のように売りつけた会社だったのだから、昨今の状況はVMwareにとっての課題であると考える向きもあるだろう。しかし当のVMwareは少し違う捉え方をしている。
いずれにしても、データセンターで稼働させていたワークロードは、どこかで実行しなければならないことには変わりない。ネットワークの分野でVMwareのパートナーとして活動していたサービスプロバイダーにとって、これはセールスの新たな機会となる。
自社データセンターからクラウドへの移行というパターンをたどる大企業は、恐らく今後ますます増える。VMwareのパートナーとなっているサービスプロバイダーの間で、データセンターのキャパシティーを増やしたいという要求が高まるだろう。また同時にパフォーマンスを向上させたい、施設の利用効率を上げたいという要求も出てくるだろう。
パートナーからのこうした要望で、VMwareのエンタープライズ向けソフトウェアの売り上げは、不振を挽回できそうだ。サービスプロバイダーは、VMwareの製品を争うように購入し、自社の施設を拡大している。
さらに新たな課題もある。IT関連の購買の決定権が、昔とは違う部署に移行していることだ。クラウドを導入する大企業が増えて、基幹業務を担当する部署が直接その部門の予算でサービスを購入する例が見られるようになった。
CIO(最高情報責任者)が製品の購入を決定し、IT部門がその製品の保守を担当してきた企業では、最近の新たな傾向に従うと、システム開発は悲惨なことになりそうだと感じる人もいるだろう。しかしそれは見当違いかもしれない。これは吉兆だとVMwareは主張している。
マーケティング、人事、財務の各部門は、クラウドの調達自体にIT部門の支援を必要としない。ただしこうした部門の人々もほぼ必ずIT部門に連絡してきて、セキュリティ、コンプライアンス、システムの可用性などの要件への対処をサポートしてほしいと要請するという。VMworld 2016 USの初日に登壇したVMwareのCEO、パット・ゲルシンガー氏は参加者を前にこう断言した。
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