XenDesktop/XenApp事例
北陸銀行はVDI導入コストをどう捻出したのか? 解決した4つの課題(1/2 ページ)
北陸銀行や北海道銀行を傘下に持つほくほくフィナンシャルグループは、XenDesktopとXenAppでVDI構築を進めている。同グループがVDIに取り組むのは、銀行ならではの課題を1つ1つ明らかにしていった結果だった。
北陸銀行や北海道銀行を傘下に持つほくほくフィナンシャルグループは、デスクトップ仮想化製品「Citrix XenDesktop」とアプリケーション仮想化製品「Citrix XenApp」によるVDI(仮想デスクトップインフラ)の導入を進めている。同グループが今VDIに取り組むのは、銀行ならではの課題を1つ1つていねいに明らかにしていった結果だった。シトリックス・システムズ・ジャパンが2016年10月13日に開催した「Citrix Xchange Tokyo 2016」において、北陸銀行でIT企画を推進する富永英司氏がVDI導入のいきさつを語った。
中期経営計画を後押しするIT投資を模索
明治10年に創業した金沢第十二国立銀行を前身とする北陸銀行は、2017年には160周年を迎える歴史ある銀行の1つだ。2004年には北海道銀行と経営統合し、持ち株会社のほくほくフィナンシャルグループを発足させた。同グループが掲げる中期経営計画「BEST for the Region」によれば、金融サービス提供を通じて顧客や地域社会に貢献し、地方創生の一翼を担うことを目指している。そのために挙げた3つの柱が、営業力の強化と経営の効率化、経営基盤の強靱化だ。「この3つのうち、前者2つをITの力で後押ししたいという思いからスタートしたのが、今回のVDIプロジェクトです」と富永氏は述べる。
1つ目の柱となる営業力の強化では、顧客の期待を上回る提案力やサービス力をITでも実現したいという。そのためには先進的かつ現場に最適なサービスを提供するためのインフラ投資が必要となる。その原資をどこから捻出するのか。それは2つ目の柱である経営の効率化にかかっている。北陸銀行と北海道銀行は経営統合したが、バックエンドのIT基盤はまだ統合できていない。バックオフィス業務やIT基盤の統合でグループシナジーを高めつつ、コスト削減を目指す。
「コスト削減で生まれる原資を営業力強化のためのIT投資に回します。こうしてグループ全体ではコスト増を抑えながら、強い経営基盤と高い営業力の獲得を目指します」と富永氏は説明する。営業力の強化やIT基盤の統一には幾つものアプローチがあるが、ほくほくフィナンシャルグループが選んだのはVDIの整備だった。
そこに至る道筋には「4つのキーワードと1つのプラスアルファ」(富永氏)があったという。4つのキーワードとはコスト削減、ワークスタイル変革、セキュリティ対策、そしてシステムインテグレーション(SI)の変革だ。各キーワードが示す課題と解決方法について見ていこう。
4つのキーワードに沿ってシステムのあるべき姿を紡いでいく
1つ目のキーワードはコスト削減だ。富永氏が述べるように、コスト削減で生み出した原資を基にして競争力の強化に投資するのだから、第一に考えなければならない課題に違いない。そしてこの解決策は、時間差によるITリソースの共有にあった。
「そもそもなぜサーバとクライアント端末を別々に用意しているのかという疑問からスタートしました。サーバは既に仮想化が進んでいるので、クライアントも同じように仮想化できればコスト効率や管理効率が上がるのではないかと考えました」(富永氏)
サーバとクライアント環境を同じように仮想化したIT基盤で構築すれば、確かに投資効率や管理効率は高まる。さらに銀行ならではの事情が、そのコスト削減効果を大きなものにする。国内銀行のクライアント端末はたいてい日中にしか使われない。一方でバックシステムに高い負荷が掛かるのはバッチ処理が行なわれる夜間に集中する。負荷が集中する時間帯が重ならないので、統一のIT基盤を共有することでリソースを全体で最適化し、コスト削減を狙えるのだ。
加えて、サーバとクライアント環境だけではなく、北陸銀行と北海道銀行によるシステム共有も進めることにした。「2011年に基幹システムの共通化は済んでいますが、情報系システムも共通化していきます。カバーエリアが離れた2行で同じシステムを使うことで、追加投資なくBCP(事業継続計画)も確立できると考えています」(富永氏)
2つ目はワークスタイル変革だ。タブレット活用で営業力を強化し、事務の効率化を図りたいという。「これまで、訪問先では商品の案内はできても、支店に戻らなければ契約事務を完結できませんでした。タブレットを使って、顧客訪問中に契約事務までできれば、サービスのスピードアップが期待できます。将来的には電子サインなども視野に入れています」(富永氏)
事務方においては、事務にタブレットを取り入れることで行内稟議(りんぎ)のワークフロー化、帳票の電子精査、ペーパーレス化などを進める意向だ。クライアントPCよりも手軽に扱えるタブレットを浸透させることで、北海道銀行と北陸銀行との間の情報共有をスピードアップさせたいという。「行内外で利用できるようにしたり、一部の機能においてはBYOD(私物端末の業務利用)も取り入れたりしたい」と語るなど、富永氏は広い視野でタブレット活用の将来を見据えているようだ。
3つ目のセキュリティ対策は、業務システムにおいて避けては通れないテーマであり、金融業界においてはことさら敏感になる部分だ。しかし守りに徹するばかりでは営業力強化などいつまでたっても実現できない。現在はインターネット接続環境と行内システム環境が物理的に分断しているが、VDIの仕組みを使うことで、インターネットアクセス環境で稼働する仮想デスクトップを経由してクラウドサービスのようなインターネットサービスへの接続を可能にした。これによってセキュリティと生産性のバランスを取った。「デスクトップを仮想化することでインターネットへの接続ポイントを絞れるので、インターネットを安全に利用する環境構築のハードルも下げられます」(富永氏)
最後のキーワード「SIの変革」は、やや抽象的だ。その目的は経営戦略にかなったシステムの導入だという。
海外では企業内に開発部門を持って自社システムを構築するのが一般的だ。日本のようにSIをアウトソーシングするのが当たり前という国はそれほど多くない。「それぞれにメリットがあるはずなのですが、私たちは果たしてSIをアウトソーシングするメリットを本当に享受できているのか。今回のプロジェクトを機に、SIの在り方について考え直すことになりました」と話す富永氏。ユーザー企業のシステムインテグレーター(SIer)との付き合い方にも思うところがあるようだ。
確かにSIをアウトソーシングすれば、さまざまなシステムで次々に必要となるIT改革について、ユーザー企業が自社で情報収集し、最新技術にキャッチアップしていく必要はないかもしれない。だからといって希望だけを伝えて丸投げするのでは、SIerの言いなりになる恐れもある。
ほくほくフィナンシャルグループは、ユーザー企業側がメリットを享受するために、グループ企業の北銀ソフトウエアとの関係を見直した。「北銀ソフトウエアに協力してもらいつつ、現時点で最善のシステムとは何かを自分たちで評価することにしました」(富永氏)
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