パロアルト研究所CEOに聞く、注目技術とイノベーションチームの作り方エグゼクティブインタビュー

多くのイノベーションでコンピュータの世界を革新してきたパロアルト研究所。同研究所が今、着目している技術とは何か。どのような活動をしているのか。どうやったらイノベーションを起こせるのか。CEOにインタビューした。

2017年06月09日 08時00分 公開
[Cliff SaranComputer Weekly]
Computer Weekly

 パロアルト研究所(Palo Alto Research Center:PARC)で生まれた発明には、レーザープリンタ、プログラミング言語「Smalltalk」、GUIを導入した世界初のコンピュータ「Alto」、LANプロトコルのイーサネットなどがある。

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 Appleの「Macintosh」が誕生したのも、スティーブ・ジョブズとスティーブ・ウォズニアックがAltoに感化された結果だ。その後、Microsoftのビル・ゲイツとポール・アレンもこれに続き「Windows」の開発へと乗り出した。

 イーサネットは、ロバート・メトカーフとデービッド・ボッグスが1970年代初頭に共同開発した。メトカーフはその後Xeroxを退社し3Comを創設する。イーサネットが事実上の標準となったのは、メトカーフがイーサネットを採用するよう当時の主要コンピュータ企業数社を説き伏せたためだ。

 「メトカーフの法則」とは「ネットワークの価値は、接続ユーザー数に比例する」(訳注)と定義したネットワーク効果で、実にふさわしい名前だといえる。テクノロジーにイノベーションを起こし、それを主流にするために、この考え方が何度も適用されている。

訳注:厳密には、「接続されているユーザー数の2乗に比例する」である。

 2017年1月にPARCのCEOに指名されたトルガ・カートル氏は、それまでSystem Sciences Lab(SSL)のバイスプレジデントを務めており、人工知能(AI)、機械学習、分析、幾何学的推論、モデリングシミュレーション、サイバーフィジカルセキュリティの研究ポートフォリオを担当していた。

 PARCという組織の変遷について、同氏は次のように語る。「2002年に当研究所はXeroxから独立し、“Xerox専属の研究開発所”から“イノベーションセンター”へとビジネスモデルを転換した。実践しているのは、オープンイノベーションビジネスモデルだ」

 だが、PARCのビジネスは今でも完全にXeroxの補助金で賄われており、親会社のために膨大な量の業務をこなしていることに変わりはない。

 「現在のビジネスモデルは、新興企業、グローバル市場のトップ企業、米国政府まで、さまざまな顧客を相手に研究開発サービスを提供したりイノベーションパートナーとして協力したりするものだ」

 PARC最大の研究プログラムはエネルギーだ。カートル氏は次のように話している。「当研究所は、次世代バッテリーをはじめとする一連のテクノロジーを所有している。現在関心を持っているのがバッテリー製造、バッテリーライフサイクル管理、そしてバッテリー状態管理システムだ。またIoTとエネルギー管理の接点にあるテクノロジーも多数所有している」

 他にもPARCが目を付けているものには「付加製造(3Dプリンティング)テクノロジーなどの高度なデジタル製造」「製品開発、設計、製造の自動化ツールなど製造のデジタル化をサポートするソフトウェア」「サプライチェーン管理」がある。

 「コンピューティングとセンサー機能がリアルタイムに組み合わせられるようになっている」とカートル氏は話す。「よりスマートでインテリジェントなマシンにするために、AIに大きく影響されるインテリジェントマシンに取り組んでいる」

 「輸送システム、自動車、航空宇宙、ビルディングシステムなど、環境をリアルタイムに感知できるマシンで、その自己認識性能は高まる一方だ。低価格のセンサーがあれば、膨大な量のデータを収集して調べ、こうした複雑なシステムの操作を改善できる」

 IoTが直面している課題について問うと、カートル氏は次のように答えた。

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