オブジェクトストレージシステムは複数のベンダーが発売しているが、その特徴を把握することは難しい。本稿はその助けとなるべくアクセス方法やデータセキュリティ、導入オプションなどについて解説する。
オブジェクトストレージとは、独自の特性を備えたストレージのことだ。そのように表現すると簡単に聞こえるが、オブジェクトストレージの主要ベンダーの製品を評価してみると、ぱっと見ただけでは把握できない複雑な要素があることが分かる。
オブジェクトストレージのシステム基盤は各ベンダーでそれぞれ機能が大きく異なる。そのため特定の機能だけを見れば、あるシステムが他のシステムよりも適していることがある。さまざなまオプションを区別できるよう、本稿では、オブジェクトストレージ製品のアクセス手法、クラウドとの統合機能、導入オプション、データセキュリティについて調査した。
オブジェクトストレージソフトウェア開発企業Caringoの「Caringo Swarm」は、標準的なハードウェアで実行可能な統合オブジェクトストレージソフトウェアだ。同ソフトウェアは、スケーラビリティ(拡張性)と可用性の高いストレージリソースのプールを作成する。Swarmクラスタは、3台以上の標準ストレージサーバと1台の管理サーバから構成し、データ保護を実現する。
ユーザーはサーバを別途購入してCaringo Swarmを実行することもできるし、ソフトウェアとハードウェアが最初から付属した製品を購入して同ソフトウェアを実行することも可能だ。管理サーバは仮想マシン(VM)として実行できる。管理サーバは、全体的な管理、ネットワークイメージの起動(ブート)、メタデータ(構成要素データ)の迅速な検索などクラスタ(大量のデータが整列された状態)の複雑なタスクを処理する。
Caringo Swarmは、保存したデータを管理機能の設定によって暗号化する。データは公開鍵方式で暗号化される。この鍵はストレージ管理者が管理する。Caringoは、この鍵やデータへのアクセスは行わない。Caringo Swarmは複製と消失データ復旧のどちらの処理についても、オブジェクト単位での暗号化が可能だ。CaringoのSMBアクセス製品「FileFly」を使った場合は転送中のデータも暗号化できる。
Caringo Swarmはファイル共有プロトコルとしてSMB(Server Message Block)とNFS(Network File System)を利用可能だ。 同社は、オンプレミスとクラウドを併せて利用するハイブリッドITが登場したことから、パブリッククラウドが重要になると考えているようだ。そのため、Caringo SwarmはMicrosoftの「Azure」Blob storage(Azure内のストレージ種類。ブロック単位でストレージ利用できる)やAmazonの「Amazon Web Services」(AWS)と直接統合できる。同社は、今後他のクラウドサービスもサポートする予定だ。
同ソフトウェアの価格体系には無期限ライセンスと年間ライセンスがあり、1TB単位に設定される。
拡張ストレージを取り扱うDataDirect Networksはオブジェクトストレージの主要ベンダーの中でも大手といわれる。同社の「Web Object Scaler(以下、WOS)」は大規模な拡張に優れたストレージクラウドを構築できる。
WOSは、Amazon Simple Storage Service(S3)、Swift、REST規約、Java言語、Python言語、C++言語の各プログラム言語に対する幅広いオブジェクト指向型のプロトコルと通信方法を提供する。また、クラウドデータ管理ソフトウェアを提供するCommvaultなどのツールとアプリケーションとの統合も実現する。さらに、「Lustre」(メタデータと実データを分けて管理するファイル管理方式)やIBMの「Spectrum Scale」(旧General Parallel File System、IBMが提供するオブジェクトファイル管理方式)をサポートする。WOSのストレージノードを地理的に分散すればデータ転送の遅延が少ないクラウド型ストレージを構築できる。
WOSノードは自己完結型製品で、完全疎結合アーキテクチャが特徴だ。このWOSノードをネットワークで結んでグループ化(クラスタ化)する。各ノードはさらにゾーンというグループに含まれる。ゾーンは、データセンター内の論理編成にすることも、地理的に離れた場所に分散させることもできる。こうしたゾーンを活用することでさまざまなデータ保護ポリシーをノード全体に適用できるようになる。例えばAmazon S3のクラウドストレージを、拡張性やパフォーマンスに対するユーザーの要件に応じてWOSノードの一部として使うことができる。もしくは個別のゲートウェイとしても導入することができる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
データ環境の急変は、企業のストレージ課題を複雑化させている。性能や拡張性、データ保護、分散環境の一元管理、コスト最適化など、自社の課題に合わせた製品・サービスをどう見つければよいのか。それに役立つ製品ガイドを紹介したい。
フラッシュアレイ導入を検討する際、既存のリモートストレージデバイスからのデータインポートは気になる点の1つだ。そこで本資料では、最小限のダウンタイムでデータ移行できるフラッシュアレイ/ハイブリッドアレイ製品を紹介する。
近年、企業に蓄積されるデータが爆発的に増加しており、新たなストレージシステムへのニーズが高まっている。そこで、中小規模のニーズをカバーする、フルSSDおよびSSD/HDDハイブリッドのシンプルなブロックストレージを紹介する。
近年のSANストレージには、データの保護と可用性を確保することが求められている。そこで登場したのが、SAN専用のオールフラッシュアレイだ。本資料では、99.9999%を超える高可用性を実現する同ストレージの実力を紹介する。
ビジネスの成否を左右する要素として、データの重要性がかつてないほど高まっている。これに伴い、データ基盤としてのストレージの役割も一層注目されている。本資料では、多様かつ高度なニーズに応え得るストレージ製品の特徴を紹介する。
セキュリティと性能、電力効率、ニーズを全方位的にカバーする次世代サーバとは (2025/7/9)
エッジAIの制約をなくす新世代プロセッサ登場、産業用コンピュータはこう変わる (2025/5/23)
クラウド全盛期になぜ「テープ」が再注目? データ管理の最前線を探る (2025/4/24)
データの多様化と肥大化が加速 ファイルサーバ運用は限界? 見直しのポイント (2025/4/8)
Hyper-Vは「次の仮想化基盤」になり得るのか 有識者の本音を聞く (2025/3/14)
「テレワークでネットが遅い」の帯域幅じゃない“真犯人”はこれだ
ネットワークの問題は「帯域幅を増やせば解決する」と考えてはいないだろうか。こうした誤解をしているIT担当者は珍しくない。ネットワークを快適に利用するために、持つべき視点とは。
「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。
「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。
「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...