HashiCorpがリリース予定
「Kubernetes」「Nomad」のマネージドサービスを比較 使い分けが進む?
NomadとKubernetesはコンテナ管理ツールだ。HashiCorpはマネージドNomadのリリースを予定しており、このサービスはクラウドベンダーが提供するマネージドKubernetesに対抗し得る。
クラウド関連のソフトウェアベンダーHashiCorpのコンテナスケジューリングツール「Nomad」と、コンテナオーケストレーションツール「Kubernetes」の比較が話題を集めている。しかしHashiCorpの創設者かつ共同最高技術責任者(CTO)のアーモン・ダドガー氏は、オーケストレーションには両ツールを併用できると話す。
HashiCorpは各クラウドベンダーのマネージドKubernetesのようなサービス提供をNomadでも実施しようと計画している。これによりIT担当者はNomadをオーケストレーションに利用できるようになる。使いやすさはGoogleの「Google Kubernetes Engine」(GKE)などのマネージドKubernetesと変わらないという。
ダドガー氏は、2018年10月後半に米サンフランシスコで開催されたHashiCorpの年次カンファレンス「HashiConf」で次のように語った。「NomadはKubernetesよりはるかに使いやすい。皆さんにその体験をしてもらうために、まずNomadの導入をお願いしたい。Kubernetesの導入が爆発的に増加したのはGKEなどのマネージドサービスのおかげだ。(中略)当社のマネージドNomadが、今後のNomadの導入増加に貢献すると考えている」
NomadとKubernetesの違い
NomadとKubernetesは双方ともコンテナのワークロードをスケジューリングする。加えてNomadはベアメタルや仮想マシンのスケジューリングも可能だ。Kubernetesはコンテナ用のストレージとネットワークのプラットフォームを備えるが、HashiCorpは同様の機能を持つ大規模プラットフォームを提供していない。Nomadではサービスの検出や機密情報の管理を実行できず、HashiCorpのサービス検出ソフトウェア「Consul」と機密情報管理ソフトウェア「Vault」がその機能を担う。その結果、Nomadは軽量かつ高パフォーマンスのスケジューラーになり、Kubernetesでは扱えないハイパフォーマンスのコンピューティングアプリケーションに対応するとダドガー氏は主張する。
それでも、NomadはKubernetesのコンテナスケジューラー機能に匹敵するものが必要だろう。そのうち一部の機能は2018年10月下旬にリリースされたNomad バージョン0.9で実装されている。Nomad バージョン0.9では、GPUなど特定のハードウェアとジョブの親和性が考慮されている。また、ワークロードをアベイラビリティーゾーン全体に広げ、優先度の高いワークロードがノードを利用可能になるまで待っている場合、優先度の低いワークロードのプリエンプション(中断と再実行)も可能にする。
HashiCorpのサービス検出ソフトウェアConsulは、主にNomadと併用される。そのConsul バージョン1.4がNomad バージョン0.9と同じ週にリリースされ、機能面でKubernetesに近づいている。Consul バージョン1.4では、サービスメッシュネットワーク向けプロキシ「Envoy」を新たに対象とした。このプロキシはKubernetesユーザーが好んで使用している。Consulのサービス検出データベースとKubernetesのサービス検出データベース「etcd」のとの直接接続も可能だ。
NomadとKubernetesを比較したがる人々
HashiCorpの担当者は、NomadとKubernetesが全面対立しているかのようなイメージを払拭したいと考えている。しかしHashiCorp製ツールを使用するITエンジニアたちには、依然としてこうした認識が残っている。HashiConfに出席したHashiCorp製品ユーザーのうち、NomadとKubernetesを一緒に利用している人はほとんどいなかった。利用しているユーザーも、両ツールをシステム中で均等に使用してはいなかった。
例えば米国の小売企業Targetは、ハイブリッドクラウド環境のコンテナスケジューラーとして主にNomadを利用している。この環境は、同社の通販サイト「Target.com」での注文から決済までといった一連の流れを実現する。環境を構成するのは、自社データセンター、Googleの「Google Cloud Platform」の2つのリージョン、そして数百に及ぶ同社の店舗だ。Targetでプリンシパルエンジニアを務めるダニエル・パーカー氏は、HashiConfのセッション後インタビューで次のように語った。「店舗ではKubernetesを使用しているが、Consulは使用していない。そのため、NomadとKubernetesの橋渡しは、当社とは無関係だ」
Targetは実店舗以外ではKubernetesよりもNomadを導入している。パーカー氏はプレゼンテーションでその理由を以下の通りとした。まず同社のセキュリティおよびコンプライアンスのポリシーではGKEを利用できなかった。加えて同社のエンジニアはクラウドやオンプレミス環境でのKubernetesの社内運用を望まなかった。ハイブリッドクラウド環境のワークロードのスケジューリングは、社内で運用しなければならないKubernetesよりもその必要がないNomadのほうが簡単だ。
「当社では既にロードバランサーを備えたクラウドアーキテクチャを構築しており、Kubernetesの導入は望まなかった。一方でNomadには一貫性がある。つまり別々のDockerコンテナイメージを用意しなくても、さまざまな場所で同じバイナリを使用できる」(パーカー氏)
HashiConfに出席していた経営コンサルティング企業Boston Consulting Group(BCG)は、同社が2018年10月下旬に開始したデータサイエンスサービスのインフラでConsulを用いている。だがBCGでプリンシパルエンジニアを務めるアレン・チェン氏は、NomadとKubernetesを組み合わせる必要性はまだ感じていないと語った。
Nomadの今後
オンライン広告を扱う企業eBay Classifieds Groupのドイツにおける自動車部門は、Kubernetesの勢いに注意を払っている。eBay Classifieds Group全体ではKubernetesを広く利用しているが、この部門ではインフラのコンテナ技術としてNomadを利用している。「とはいえ、どれくらいの期間利用されるかは誰も分からない」と同社運用開発チームのサイト信頼性エンジニアリング(SRE)を担うリック・ラッコウ氏は言う。
現時点ではNomadに勝ち目は全くなさそうに思えるが、Kubernetesが完全な勝利を宣言するには早過ぎる。
「Kubernetesを利用しているのは先進技術に着目している人たち(アーリーアダプター)だ。従ってHashiCorpが先行者となり、一定の地位を築くチャンスはある」(ラッコウ氏)
HashiCorpの主な顧客層、すなわち経済誌『Forbes』が選ぶ企業ランキング「Global 2000」に名を連ねる大企業は、コンテナとKubernetesで全てをまかなうことは不可能だろう。
企業向け購買ソフトウェア企業SAP Aribaで主任プラットフォーム設計士を務めるジョン・ミッチェル氏は次のように振り返る。5年前には「OpenStack」が、3~4年前は「Cloud Foundry」がそれぞれオープンソースのPaaS(Platform as a Service)として世間をにぎわせたが、今では下火になっている。優れたアーキテクチャとプロセスを備えていれば、適切なツールを全て組み込んで進化し続けることができるという。
SAP Aribaは今後もKubernetesを利用し続ける予定だ。だがコンテナ、ひいては仮想マシンにSAPのデータ処理システム「SAP HANA」のような負荷の高いアプリケーションを導入することは決してないだろう。SAP Aribaには今後も多様なワークロードが混在することが予想されるため、「Nomadは当社の規定スケジューラーであり続けるだろう」とミッチェル氏は話す。
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