Microsoft Office 2019のリリースに合わせて、Microsoftは製品の価格調整を実施。結果としてライセンス料が上昇した。これによるコストアップを最小限にとどめるにはどうすればよいのか。
「Microsoft Office 2019」は、リリースに際してオンプレミスとクラウドとの間で製品の「価格調整」が行われた。この値上がりの影響は民間企業と公共機関で異なる。またMicrosoftの幅広いポートフォリオのどのソフトウェアを使用しているか、そしてオンプレミスとクラウドのどちらに導入しているかに左右される。
Microsoft Enterprise Agreement(EA)を締結しているユーザーは、価格レベルAの自動ボリュームディスカウントを受けられなくなる。Microsoft製品/サービス契約(MPSA)とSelect/Select Plusプログラムも同様だ。同社によると、従業員数が2399人までの企業はボリュームライセンス価格が約4%値上がりする見込みだという。
公共機関については、EA、Enterprise Agreementサブスクリプション(EAS)、MPSA、Select Plus、Openプログラムの一般法人向け最低価格に「調整」される。これまで公共機関の価格は一般法人向け最低価格よりも低く設定されていた。だが事実上6%値上がりすることになる。一般法人向けの新しい割引モデルが導入されているが、これが適用されるのは「Office 365」などのオンラインサービスに限定される。
公共機関はこれまで、クラウドサブスクリプションの価格設定が好ましくないという理由でオンプレミスのソフトウェアから移行するのに消極的だった。だが今回、オンプレミスのMicrosoft Officeのライセンス料が6%上昇することを受け、Office 365サブスクリプションへの移行を検討する可能性が十分にある。
オンプレミスのOfficeの一般法人向け価格も、現価格から10%上昇する。値上がりするのはOfficeクライアント、Enterpriseクライアントアクセスライセンス(CAL)、Core CAL、そして「Microsoft Exchange Server」「Skype for Business」「Microsoft SharePoint Server」などのサーバ製品だ。
Microsoftは次のように発表している。「クラウド製品とオンプレミス製品の価格設定亜は同等ではない。また、プログラムによるボリュームディスカウントはクラウドの価格モデルと合っていない。当社はこうした状況の改定を目指している」
値上がりに加え、Office 2019はコンポーネントがオンデマンドでインストールされる「クイック実行」製品になろうとしている。さらにOffice 2019の価格構造は、端末ベースからユーザーベースに変更されている。Microsoftユーザーは、今やOffice 365サブスクリプションに移行する以外の選択肢を取ることがほぼ不可能になった。
永続ライセンス製品については主なクラウド機能のみにアクセスを限定することで、Office 365への支払いを続けるようユーザーに勧める。これは永続ライセンスを一度で買い切らせるよりもMicrosoftにとって収益性が高い。顧客忠誠度を築くのにも優れた方法だ。いったんクラウドサービスのサブスクリプションを契約したユーザーが、競合他社のプロバイダーに移行するのは難しくなる。
IT部門の意思決定者の観点では、Microsoftがサブスクリプションを重視しOffice 2019を値上げする状況は、ソフトウェアライセンス最適化のチャンスと考える必要がある。
成熟したソフトウェア資産管理(SAM)プロセスを構築している企業は、既にライセンスの現状を把握しているはずだ。ライセンスを端末ベースからユーザーベースに移すことがコスト削減手段として最適かどうかを判断するには、現状を知ることが欠かせない。
例えばOfficeを共有端末で実行している場合は端末ベースが望ましい。ユーザーベースに移行するとコスト効率が悪くなるところまでユーザー数が増える可能性が高いためだ。使用状況を測定するにはリアルタイムのSAMを導入する必要がある。専任の資産管理者を雇用し、企業のライセンスと技術が現在の運営状況に沿っているかどうかを確実にするのが望ましい。
その対極に位置するのが、SAMプロセスが未熟、または全くない企業だ。こうした企業は従業員のソフトウェア使用状況を正確に認識していないことや、導入しているソフトウェアを把握していないことが多い。影響を最も受けるユーザーはオンプレミスのOfficeを使用している中小企業であることをMicrosoftは認めている。
Office 365への移行も確実な選択肢の一つではあるが、広範囲にわたる計画と準備、専用のリソース、ダウンタイムの計画が必要になる。こうした中小企業は基本的に資産管理者を雇用する予算がない。従って正確なライセンス状況を把握して次のステップを慎重に熟考するために、Microsoftの専門的なライセンスコンサルティングの利用を検討する必要がある。
公共機関の場合、Openプログラムを契約すればコストの上昇が段階的になるため、Office 365の値上がりの影響を抑えるのに役立つはずだ。どの機関も、一般法人や中小企業と同様に契約内容と使用状況の両方からソフトウェアライセンス戦略を評価しなければならない。そのため必要になるのが、SAMの専門家や社外のSAMコンサルタントによるサポートだ。
これまで、オンプレミスのライセンスではあらゆる端末にMicrosoft Officeの全機能セットが提供されていた。だが企業には全機能を利用するユーザーがほとんどいないというのが実情だ。Office 365は多岐にわたるサブスクリプションレベルを提供していて、パワーユーザーからコールセンターのスタッフなどのライトユーザーまでを包括する。そのため、Officeの全機能のローカルインストールに加えてテレフォニー機能、ユーザー中心のID管理とデータセキュリティのツールが必要という場合にも、WebベースのOfficeアプリケーションとサービスがあれば仕事ができるという場合にも対応できる。
従来型の包括的なオンプレミス製品ではなく、実際に必要な機能だけをユーザーに提供すれば、ニーズに基づいて適切なレベルのサブスクリプションを購入することになるため、値上がりの影響緩和が恐らく可能になる。
企業のIT資産の実情を把握すると、ソフトウェアライセンスについてオンプレミスに残せるものとクラウドに移行できるもの、そして不必要なものを判断することが可能になる。サブスクリプションの適正化を行うのであれば、Microsoftによる価格調整は企業にとって思いがけないチャンスであり、最新の効率的な働き方へのシフトが促される。
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