シンガポール発のプロジェクトがApache Software Foundationのトップレベルプロジェクトに昇格。ディープラーニングモデルを効率的に分散トレーニングさせることができ、既に実用化されているという。
「Apache SINGA」は、シンガポールで開発された分散コンピューティングプラットフォームで、ディープラーニングモデルを大規模データセットでトレーニングする。
Apache SINGAは、シンガポール国立大学(NUS:National University of Singapore)コンピュータ学部のデータベースシステム研究グループが中国の浙江大学およびオンラインゲーム企業NetEaseと共同で構想したもので、2015年からApache Incubatorプロジェクトになっていた。そして2019年10月にApache Software Foundationのトップレベルプロジェクトに昇格した。
「ディープラーニングとマシンプラットフォームのニーズが2012年に増加した。だが、効率の良い分散プラットフォームはなかった」と話すのは、プロジェクトを率いるNUSの教授オオイ・ベン・チン氏だ。
同教授は、TLPになったことがApache SINGAに対する評価の証しだとして次のように話す。「『Apache HTTP Server』がWebサイトのサーバに与えたのと同じように、このプロジェクトがディープラーニングに影響を与えることを期待している」
Apache SINGAは、医療への応用とGPUなどのさまざまなハードウェアで運用可能なスケーラブルなアーキテクチャを重視する。シンガポール国立大学病院(NUH:National University Hospital)とシンガポール総合病院(Singapore General Hospital)はMRI画像やエックス線画像の分析に既に利用している。NUHは、Apache SINGAでトレーニングしたモデルを使って病気の進行や患者の再入院の傾向もモデル化している。
Apache SINGAは医療以外でも利用されている。シンガポールに拠点を置くサイバーセキュリティ企業SecureAge Technologyは、マルウェア検出用ディープラーニングモデルの開発にApache SINGAを利用し、過去のデータを使って検出精度の向上と新しいマルウェアの特定を目指している。
金融業界では、地方銀行がリスクのモデル化とマネーロンダリングの防止を目的に、Apache SINGAでモデルの開発とトレーニングを行っている。
人工知能の訓練を受けていなくてもApache SINGAをもっと利用しやすくする計画や、ハードウェアのサポートをエッジデバイスなどに広げる計画が進んでいる。エッジデバイスは現時点では、トレーニングよりも推論が多く行われる。
GitHubの新しいレポートによると、シンガポールのオープンソース貢献者が過去12カ月間で111%増加したという。これはアジアでは香港に次いで2番目に高い増加率だ。アジアの貢献者コミュニティーの年間増加率は、ヨーロッパと北米のコミュニティーを上回ってもいる。
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