機械学習、深層学習は与えられたデータセットからパターンを学習し、パターンマッチングを行う。実務分野に応用されて成果を出す一方で、機械学習がうまく適用できない分野も見えてきた。
機械学習の最も初歩的な例として、Googleの機械学習フレームワーク「TensorFlow」を使ってアヤメの花を分類するというものがある。
インターネットでデータを容易に入手できるようになり、処理する画像が激増したことにより、人工知能(AI)は画像認識精度を向上させ、実務的な成果を挙げ始めている。信頼度が向上したパターンマッチングを使うことで、多大な労力をかけなくても機械学習のトレーニングを進めることが可能になり、猫などの画像のほとんどが識別できるようになった。
腫瘍学、自動車の自律運転、チャットbot、スマートスピーカーの音声認識など、パターンマッチングの応用分野は幅広い。
例えば2018年1月にIntelは、CT(コンピュータ断層撮影)、MRI(磁気共鳴イメージング)、超音波などの医療技術が、深層学習アルゴリズムに対して学習データのソースをどのように提供しているかを説明する記事を公開した。深層学習モデルはこのデータを活用し、投薬中のがん患者の経時的ながん増殖状態を測定するとIntelは述べている。
しかしマッチングが既知のパターンとの照合で単純に断定できないこともある。このような場合は物理モデルの数学的シミュレーションが行われる。
ノルウェーのKongsberg Digitalのデータサイエンティスト、ベガード・フロービク氏は、ブログ記事の中で次のように述べている。「現在の状況に関して十分な情報を与えれば、物理学を基礎とした完成度の高いモデルは複雑なプロセスを理解して将来の出来事を予測することができる。このようなモデルは、現代社会全体のさまざまなプロセスで既に適用されている。例えば現代のエレクトロニクスの核心といえる、大規模な宇宙ロケットの軌道やナノサイズの物体の挙動予測が挙げられる」
しかしフロービク氏によると、システムの挙動に関する直接的な知識がないと、正確な予測をするシステムの挙動を記述するための数学モデルを定式化することはできないという。
こんなときこそ、機械学習が役立つ。大量のデータセットを活用し、未知の問題と既に学習したパターンを効果的に照合するからだ。
機械学習は、システムに関する情報(入力変数)とAIが予測する必要がある結果(出力変数)との間に内在するパターンの把握に使えるとフロービク氏は話す。しかし機械学習は今のところまだ、複雑な物理学を確実に予測できる段階まで進化していない。
2017年11月にコーネル大学図書館に提出された「Deep learning for physical processes: incorporating prior scientific knowledge」(物理的プロセスのための深層学習:先人の科学知識の取り込み)と題した論文の中で、研究者エマニュエル・ド・ベズナック氏、アルトゥール・パジョ氏、パトリック・ガリナリ氏は、深層学習に基づく機械学習を、例えば海面温度の予測などに応用するのがいかに困難であるかを説明している。
論文の冒頭で、著者は次のように書いている。
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