狙われるコミュニケーションツール【後編】
「Discord」と「Slack」は悪用を防ぐために何をしているのか?
テレワークで欠かせない存在となった、「Discord」「Slack」などのコミュニケーションツール。運営元のベンダーはそれらを悪用する攻撃をどう捉え、どう対処しようとしているのか。脅威から身を守る方法とは。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)は、企業がテレワークを推進するきっかけとなった。そうした状況下で、ゲーマー向けボイスチャットツールの「Discord」やビジネスチャットツールの「Slack」といったコミュニケーションツールをテレワークに生かす動きも広がった。こうしたコミュニケーションツールを悪用する攻撃について、Cisco Systemsのセキュリティ研究機関Cisco Talosは調査を実施し、2021年4月に報告書を公開した。
DiscordやSlackは悪用にどう対処しているのか
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COVID-19が与える影響
DiscordやSlackをはじめ幾つかのコミュニケーションツールは、エンドユーザーがアップロードしたファイルを、CDN(コンテンツデリバリーネットワーク)でホスティングするファイル共有機能を持つ。このファイル共有機能を攻撃者は悪用する。
今回のCisco Talosの調査について、Discord運営元であるDiscord社の広報担当者は「積極的な脅威スキャンと受動的な報告を組み合わせてマルウェアを検出しているが、それで十分とは限らない」と話す。
Discord社は攻撃者がCDNに悪質なファイルをアップロードしたことを見つけ次第、そのファイルを削除するといった措置を講じている。「こうした問題の報告、発見、対処を高速化する方法を向上させ、悪用を洗い出すためのリソースを増やすべく、プロセスの強化に取り組んでいる」と同社の広報担当者は説明する。同社はマルウェアのスキャンが不完全な場合があることを認識しており、「この手法を継続的に繰り返して技術を向上させている」と広報担当者は述べる。
Slackの運営元であるSlack Technologiesは、近いうちに追加の対策を実施する方針だ。同社の広報担当者は「悪質なファイルがSlack経由で共有されることを防ぐ措置を講じている。顧客と顧客データの安全を確保することは最優先の課題だ」と話す。
2021年2月、Slack TechnologiesはSlackで悪質な実行可能ファイルを共有できないようにした。社外の組織との安全なやりとりを可能にする機能「Slack Connect」で、エンドユーザーが特定形式のファイルを共有できないようにする機能も追加した。
今後もフィッシングやスパムメッセージを防ぐため、Slack TechnologiesはSlackにマルウェア対策やURLスキャンを導入し、「悪質な行為を自動的に防止する」と説明する。同社はそうした機能を持つセキュリティツールを2021年春に公開する計画だ。
セキュリティ担当者にとっての課題
報告書を執筆したCisco Talosの研究者ニック・ビアシニ氏は、企業のセキュリティ担当者にとっての課題を指摘する。悪質なファイルをホスティングしているドメインやIPアドレスを遮断するといった対策がDiscordでは難しく、そのためには実質的にDiscord自体の利用を禁止せざるを得ない点だ。
「全ての企業がDiscordの利用を許可しているわけではないことが、対策に影響する」とビアシニ氏は考える。許可していない企業であれば、許可している企業よりも積極的に遮断する措置を講じやすくなる。
コミュニケーションツールを業務に使っていない企業であれば、悪質なファイル配信に悪用される恐れのあるドメインをブロックすることは検討に値するだろう。「COVID-19のパンデミックがこうした攻撃の発端となり、今後も増加傾向が続く見通しだ」と報告書は説明する。ビアシニ氏も同様に「これから先、コミュニケーションツールのCDNを悪用する攻撃はさらに増えるだろう」と予想する。
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