大学が“完全オンライン教育”実現で直面した「古い無線LAN」の限界とは?コロナ禍でドエイン大学が進めた無線LAN刷新【前編】

コロナ禍において対面教育から一時的に全面オンライン教育に切り替えたドエイン大学は、既存の無線LANシステムが抱えていた“ある課題”を解決すべく、システム刷新を決断した。その課題とは何か。

2021年10月15日 05時00分 公開
[Paul KorzeniowskiTechTarget]

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)は、教育機関に混乱を引き起こした。オンライン教育と教室での対面教育の両方を取り入れたハイブリッド教育に移行したことで、教育機関のネットワークに前例のない需要が生じた。こうした変化に対処すべく、教育機関はネットワークの見直しに急きょ取り組んでいる。

 米国にあるドエイン大学(Doane University)はハイブリッド教育への移行に伴い、無線LANシステムを刷新した。それまで利用してきたCisco Systemsの無線LAN製品から、Hewlett Packard Enterprise(HPE)傘下のAruba Networksが販売する、人工知能(AI)技術を活用したネットワーク管理製品「Aruba ESP」(ESP:Edge Services Platform)に変更した。同校はこの置き換えにより、データ転送速度や接続の安定性といった無線LANのパフォーマンスを向上させ、管理をシンプルにした。

“完全オンライン教育”で顕在化した「無線LAN」の課題とは

 ドエイン大学の設立は1872年だ。ネブラスカ州クレタにメインキャンパスを置いており、キャンパス内には学生の75%が住む学生寮を持つ。同州のリンカーンとオマハにもサテライトキャンパスを構える。

 ハイブリッド教育への移行を検討するに当たって、ドエイン大学は2020年秋、無線LANシステムの刷新に着手した。ハイブリッド教育への移行を考えると、同校がそれまで使ってきたCisco Systemsの無線LAN製品には負荷が高過ぎると判断したためだ。

 それまでの無線LANシステムは2007年から稼働しており、ドエイン大学はキャンパス全体で125カ所を超える無線LANアクセスポイントを設置していた。限りのある帯域幅(回線容量)を奪い合うようになり、「ネットワークアクセスの応答時間が学生や職員の間で問題になっていった」と、同校でIT運用部門のディレクターを務めるライアン・ドーソースト氏は話す。

 2020年11月、ドエイン大学はある計画を立てた。2021年1月に始まる2学期最初の週に、全ての学生を隔離してCOVID-19の検査を受けてもらうことにしたのだ。それまではオンライン教育と対面教育を組み合わせていたが、この隔離期間中は全てオンライン教育にする必要があった。「既存の無線LANシステムでは、増加するデータを適切に処理できないことは分かっていた」とドーソースト氏は認める。同校は「迅速に」(同氏)無線LANシステムを刷新する必要があった。

 ドエイン大学は無線LANシステムの刷新を2段階に分けた。第1段階では、まず6週間をかけて学生の学業のニーズに対処した。具体的には、学生寮への無線LANアクセスポイントの設置だ。第2段階では、既存の無線LANシステムを全て置き換え、管理システムを再構築することにした。


 後編は、ドエイン大学が進めた無線LANシステム刷新プロジェクトを、より具体的に紹介する。

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