「帯域幅」と「スループット」を混同してはいけない“納得の理由”ネットワーク帯域幅の求め方【前編】

ネットワークをスムーズに運用するためには、帯域幅の要件を計算できるようにすることが重要だ。計算をする前に知っておくべき帯域幅やスループットの基本を理解しておこう。

2021年07月27日 05時00分 公開
[Jessica ScarpatiTechTarget]

 ネットワークの「帯域幅」を正しく計算する方法を理解することは、高速なネットワークを構築し、安定性を維持するために欠かせない。

 帯域幅は有線LAN、無線LAN、WANの設計と運用において重要だ。必要に応じてリソースを再構成することもあるサーバとは異なり、ネットワークの帯域幅は最初の設計の時点で最適化しておく必要がある。

 ネットワークを設計する際、帯域幅の要件をどのように計算すればいいのか。どのような点に留意すべきなのか。これらの重要な疑問に答えていこう。

そもそも「帯域幅」とは何か 「スループット」との根本的な違いとは

 帯域幅とは、ネットワーク接続やネットワークのインタフェースにおけるデータ伝送速度を指す。「量」と「時間」の両方が関わっており、一定時間内に2地点間で伝送できるデータ量を表す。ネットワークに入ってくるデータを「イングレス」(受信)や「下り」、ネットワークから出ていくデータを「エグレス」(送信)や「上り」と呼ぶ。通常、帯域幅は「bps」(ビット/秒)で表す。「Bps」(バイト/秒)という単位を用いる場合もある。

 ネットワークの帯域幅はネットワークの通信路容量に相当する。帯域幅を算出する正しい計算式を作るには、理論上の「スループット」(データ伝送速度)と、実際の結果の区別を理解することが重要だ。例えばUTP(シールドなしツイストペア)ケーブルを使用するイーサネット規格「1000BASE-T」のギガビットイーサネット(GbE)ネットワークの場合、理論上のスループットは1000Mbps(1Gbps)となる。ただし実際にはハードウェアやシステムのオーバーヘッド(制御用のデータ処理などの余分な作業負荷)があるため、一般的には理論上のスループットを達成することはない。

帯域幅を考える際に考慮すべきポイント

 ネットワークに必要な帯域幅の計算方法を考える際に考慮すべきポイントは、帯域幅と実際のスループットを混同してはならないということだ。帯域幅が広いネットワークはスループットが高速になりやすいが、常にそうとは限らない。

 帯域幅について考える際は、高速道路を走る車に例えるといい。

  • 帯域幅が広いネットワークは、いつでも多数の自動車が走行できる6車線の高速道路
  • 帯域幅が狭いネットワークは、1台の自動車のすぐ後ろに別の自動車が並んで走る1車線の道路

 幅の広い高速道路の方が自動車の走行速度は速くなる可能性が高い。だがラッシュアワーの渋滞では、自動車の走行はすぐに止まってしまう。広いスペースを占める大型の配送トラックが路上に停車している場合も、それが邪魔をして別の自動車がすぐに高速道路に乗れないことがある。これと同じで、広帯域幅のネットワークであっても、混雑や特定のアプリケーションが帯域幅を大量に使用するといった問題があると、スループットは遅くなることがある。

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