Microsoftは、これまで法人ユーザーにしか提供していなかったパスワードレス認証を、一般ユーザーにも開放する。専門家や同社が考えるパスワードレス認証のメリットとはどのようなものか。
Microsoftは2021年9月、同社サービスの共通アカウント「Microsoft account」(Microsoftアカウント)を持つ全てのエンドユーザーがパスワードレス認証を利用できるようにした。パスワードの代わりに、
を使用できるようにすると発表した。これにより法人ユーザーだけでなく一般ユーザーも、パスワードレス認証でMicrosoftアカウントにログインできるようになる。
パスワードレス認証に切り替えるには、Microsoftアカウントにログインして設定する必要がある。Microsoftはパスワードレス認証を2021年3月から法人ユーザーに提供しており、今回の発表から数週間かけて提供対象を全ユーザーに広げる。
企業はパスワードレス認証を選択することで、フィッシング(なりすましによる詐欺)攻撃を防御するとともに、複数のパスワードを管理する手間を省く。
英バーミンガム市議会のデータアナリストであるスティーブン・ブース氏は、パスワードレス認証はIT部門の負担を軽減するとみる。市議会では、過去にはサービスデスクへの要請が、パスワード忘れに関するものが約半分を占めたことがあるとブース氏は説明する。
パスワードは、悪意のある攻撃者に盗まれて悪用される可能性がある。エンドユーザーが複数サービスで同じパスワードを使い回したり、推測しやすいパスワードを使用したりすることも少なくない。
Microsoftが実施した調査では、ペットの名前をパスワードに使用したり、複数のWebサイトに同じパスワードを使い回したりしていた人が一定数いる。名前と西暦を組み合わせてパスワードを作成している人もいるという。「そのようなパスワードは覚えやすいが、攻撃者に推測されやすい」と、同社でセキュリティ、コンプライアンス、アイデンティティー担当バイスプレジデントを務めるバス・ジャッカル氏は指摘する。
2015年にMicrosoftが提供を開始したWindows Helloは、赤外線カメラを使った「Windows」へのログインを可能にする。同社はMicrosoftアカウントのパスワードレス機能導入や、Microsoft製品以外でのセキュリティ強化の取り組みを進めてきた。例えばWebブラウザ「Microsoft Edge」には、Webブラウザにパスワードを保存できるパスワード管理機能がある。
ジャッカル氏によると、Microsoft社内でパスワードレス認証を導入したところ、従業員のほぼ100%が企業アカウントへのログインにパスワードレス認証を使用するようになった。
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