「帯域幅」を計算する簡単な方法は? ユーザー数の上限を把握する方法もネットワーク帯域幅の求め方【後編】

ネットワークの帯域幅の要件はどのように求めればいいのだろうか。算出に必要な基本的な数値と、計算の仕方を紹介する。

2021年08月10日 05時00分 公開
[Jessica ScarpatiTechTarget]

 ネットワークの「帯域幅」の要件を求める際、計算式を間違えると大きな影響が出る。十分な帯域幅を確保していない場合は、帯域制限がかかり「スループット」(データ伝送速度)が遅くなるのはほぼ確実だ。逆に、帯域幅のオーバープロビジョニング(過度な配備)は、過剰なコスト負担となる。

 どのようにして自社の帯域幅の要件を満たす計算式を求めたらよいのだろうか。このプロセスは、エンドユーザーがどのようなアプリケーションを実行しているのかを把握することから始める。

帯域幅を求める具体的な計算式

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 適切な帯域幅を決定するためには、LAN内のエンドユーザー数だけを考慮に入れるのではなく、エンドユーザーがネットワーク内でどのような動きをするのかを把握する必要がある。200人のエンドユーザーよりも、ネットワークを酷使する3人のエンドユーザーがボトルネックを招くこともあるからだ。ボトルネックの要因は、クライアントサーバの異常な使い方や、高精細のWeb会議など帯域幅を大量に使うアプリケーションの多用などがある。

 帯域幅の要件を計算する際、2つの基本的なステップがある。

  1. 利用可能な帯域幅の値を求める
  2. 特定のアプリケーションに必要な利用量の平均を求める

 これらの数値はいずれも「Bps」(バイト/秒)で表すべきだ。次の式を考えてみよう。理論上のスループットが1000Mbps(1Gbps)である1GbE(GbE:ギガビットイーサネット)のネットワークでは、利用可能な帯域幅は1億2500万Bpsになる。これは、1GbEのビット数(10億bit)を8で割ってバイト数を算出したものだ。

10億bps÷8ビット/バイト=1億2500万Bps

 利用可能な帯域幅を求めたら、次は各アプリケーションが使用している帯域幅を調べる。ネットワークアナライザーを利用してアプリケーションがネットワークで送信する1秒当たりのバイト数、つまり実効スループットを検出できる。

 手順は以下の通りだ。

  1. ネットワークアナライザーの累積バイト数の欄を有効にする
  2. アプリケーションを実行しているテスト用コンピュータとの間のトラフィック(データ流量)を記録する
  3. 解析するデータとしてパケットを選択する
  4. 1秒後の累積バイト数の欄を確認する

帯域幅の計算結果を解釈する

 調査の結果、自社のアプリケーションのユーザー1人当たりの実効スループットが20万Bpsだったとする。その情報から次の計算式ができる。

1億2500万Bps÷20万Bps/人=625人(同時利用ユーザー数)

 この場合、数百人がネットワークを同時に使用しても大きな問題は起きない。

 100Mbps(1250万Bps)のネットワークだったらどうなるか計算してみよう。

1250万Bps÷20万Bps/人=62.5人(同時利用ユーザー数)

 つまりアプリケーションを同時に使用するユーザーが62人を超えると、ネットワークが耐えられなくなる。

 帯域幅の計算式を知っておくことは、ネットワーク管理者にとって極めて重要だ。最後に推奨事項を3つ紹介しよう。

  • 10秒単位でデータを取得してから割り算する
  • 複数のコンピュータとの間のトラフィックをチェックして、計算に使用する数値が母集団を反映していることを確認する
  • 同時使用ユーザー数の上限を求める

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