IT人員の退職が続くことで人手不足が深刻化する。この企業の悩みを解消するのは「自己修復システム」だ。導入を成功させるこつは。
人間が介入することなく、システムが自ら異常を検出して問題を解決する「自己修復システム」。前編「人の介入を不要にする『自己修復システム』とは? 何がすごいのか」は、自己修復システムの仕組みに焦点を当てた。後編となる本稿は、自己修復システムの導入を成功させるための「3つのステップ」を紹介する。
企業が自己修復システムの構築に着手する際は、データセンターの機能を総合的に評価することが欠かせない。
最初のステップは、定義済みの測定基準を使い、CPU使用率やストレージ容量、ストレージの使用状況といった指標を監視する。アラート機能を使って、いち早く異常の警告を発することが重要だ。システムの稼働状況を分析し、発生しやすいエラーを特定できるようにしよう。
次は、データ分析に基づいてシステムの稼働状態を予測し、エラーにつながりかねないシステムの「弱点」を洗い出す。データ分析は膨大な数のイベントを扱うことでより正確な予測を可能にするとともに、的確な修正方法を提示する。機械学習に使うデータの収集を合理化することもデータ分析の役割だ。企業は機械学習のアルゴリズムを使ってシステムの問題検出能力を開発することで、自己修復の運用を開始できる。
3つ目の手順は、AI技術をシステム運用に取り入れる手法「AIOps」(Artificial Intelligence for IT Operations)に取り組むことだ。機械学習を駆使して大量のデータを分析することが、システム運用の自動化につながる。AIOpsはハードウェアの使用状況や稼働状態を監視して、システム稼働の安定性を高めたり、システム停止を引き起こす障害を防いだりする。これにより運用作業の負荷が軽減し、IT人員が他の仕事に集中できるようになる。
データセンターの可用性や事業継続性を保証するルールを設けることは、企業にとって重要だ。AIOpsはそのルールを基にして自己修復システムを実現する。
企業は自己修復システムを導入しても、IT人員を配置する必要をなくせるわけではない。大半の企業はITに精通する人材の確保に苦労している。データセンター向けインフラベンダーのVertiv Groupがデータセンターに勤務している人を対象に実施した調査では、回答者の約16%が「2025年までに退職する」と回答した。IT人員不足が深刻化するのは必至だ。
そうした中、自己修復システムはIT人員の負担を軽減する一助となる。企業は、「5G」(第5世代移動通信システム)をはじめ、エッジ(データが発生する場所)でデータを処理する「エッジコンピューティング」や、アプリケーションの機能を複数のモジュールを組み合わせて開発する「マイクロサービスアーキテクチャ」など、さまざまな技術革新に向き合っている。これらを活用する上でも、自己修復システムは有効なアプローチになるはずだ。
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