IT運用チームと「NoOps」【後編】
「NoOps」はクラウド移行だけで実現するのか?
「NoOps」によって運用チームの業務がなくなるわけではない。ではNoOpsで企業の運用業務はどう変わるのだろうか。クラウドサービスとの関係と併せて解説する。
「NoOps」とは、「運用をなくす」「運用負荷を軽減する」といった意味を包含する。前編「Netflixに学ぶ『NoOps』が目指すべき姿とは?」に続き、NoOpsでIT運用の何が変わるのかを紹介する。
NoOpsとクラウドの関係に潜む“誤解”
自動化によるNoOpsを考える上での疑問は、運用チームとNoOpsの関わり方だ。システムの自己修復によって解決した状況を、運用チームが把握する必要はあるのだろうか。仮に自己修復に失敗する状況が発生する場合、アラートを受けて運用チームが対処する必要はあるのだろうか。
100%のシステム稼働率を維持している企業はほとんどない。それを前提にすれば、仮に自己修復に失敗する状況が発生しても、「運用スタッフは関与しなくてもよい」と判断する企業もあるだろう。
運用チームの業務には、ユーザーのアカウント管理やヘルプデスクといったタスクもある。こうした業務には自動化が難しい領域もある。従業員の採用や異動、退職に伴うアカウントの管理は自動化することが理想だ。だが新人研修など常に人間の関与が必要になる業務もあり、これはスクリプトだけでは処理できない。
ヘルプデスクは運用チームの業務の中でも、特に人間による関与が必要になる。企業によっては従業員へのサービス部門が、運用チームとは分離している場合もある。とはいえ本来これら2つの業務は密接に結び付いており、ヘルプデスクの管理を運用と完全に切り離して考えることは難しい。
システム運用にできる限りクラウドサービスを利用する「クラウドファースト」の方針を採用している企業もある。ベンダーが「As a Service」として提供するクラウドサービスの機能が充実していれば、企業は運用の負荷を大幅に削減することが可能だ。企業の運用チームが、システムの設計や開発に一切関わらなくてもよくなる可能性もある。
ただし利用しているクラウドサービスに十分満足し、完全にベンダーを信頼している企業はほとんどない。クラウドベンダーとの関係は時間の経過とともに変化する可能性もある。利用するクラウドサービスが5年前には安定して稼働していたとしても、その後にサービス停止を繰り返すようであれば、もはや信頼することはできなくなる。
そのためクラウドサービスの利用によって運用の業務負荷を軽減する一方で、ベンダーとのコミュニケーションやその他の協力企業との連携を重視するようになる運用チームもある。運用チームはヘルプデスクを通じてエンドユーザーや事業部門の責任者とコミュニケーションを取ることで、業務全体が適切に機能しているかどうかを把握できる。
クラウドサービスを利用する運用チームは、CPUの処理速度やストレージ容量、メモリ容量といったハードウェア面の心配をする必要はなくなる。一方では新たに担わなければならない業務も出てくる。例えばクラウドサービスを適切に運用するために、クラウドサービスの管理ツールを最大限に活用することが重要になる。
NoOpsの未来
クラウドサービスへの移行によって運用負荷は軽減するだろう。これは単純にNoOpsによる成果だと捉えることもできるが、別の問題を提起する話でもある。その問題とは、ITに関わる業務全体が、そもそもNoOps(運用なし)の状態を前提にはしていないことだ。ハードウェアの障害はほとんど開発者側の責任と見なされることはないし、プログラミングに起因するエラーにエンジニアが対処することもほとんどない。運用上の問題解決を運用チームに任せることを前提にしている点に問題がある。NoOpsを目指す上ではそうではなく、よりシステム運用全体の利益につながるように、運用チーム以外のITチームも問題の責任を担うという考え方が重要になる。
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[ファインディ株式会社] AI利用率だけでは説明できない成果 開発組織の競争力を生む「開発資本」とは? -
製品資料
[ニュータニックス・ジャパン合同会社] AI活用を成功へ導く、シンプルで費用対効果に優れたクラウド基盤とは? -
製品資料
[ニュータニックス・ジャパン合同会社] マネージドKubernetesには限界も――メリットをフル活用する新たな選択肢とは? -
技術文書・技術解説
[ニュータニックス・ジャパン合同会社] 決断の日が迫る「vSphere 8」サポート終了問題 考慮すべきリスクと選択肢は? -
製品資料
[サイバーソリューションズ株式会社] メール誤送信対策のルールが肥大化 苦しむ情シスはどうすれば救われるのか?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
2
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
3
「アップグレードできないJava」をどう守る IBMとRed HatがAIで400件超修正
-
4
AI時代のITインフラ戦略とは? 販売代理店が知っておきたい最新トレンド
-
5
OpenAIやAnthropicでさえ制御不能 2026年夏「3大サイバー攻撃」の衝撃
-
6
IT製品の導入に関するアンケート「セキュリティ」編
-
7
LINEヤフーはなぜ「社内の管理者」すら信用しないインフラを作ったのか
-
8
Copilot導入で陥る“目的化”の落とし穴 定着の鍵は「作り込まない」こと
-
9
パッチなしで「今すぐサーバを落とせ」 Kiteworks異例警告の波紋
-
10
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
2
Microsoft 365のメールセキュリティ、3つの“死角”と追加で検討すべき対策とは
-
3
システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
-
4
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
5
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
6
プログラミング不要で誰でも実現できる、ネットワーク運用管理の自動化とは
-
7
Linux初心者でも知らないとまずい「RHEL」「SLES」の違いとは?
-
8
東大教授と考える、AI時代の「データ主権」「信頼性」「ガバナンス」の在り方
-
9
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
10
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー