「レジリエンス」(回復力)を追求するには先行事例から学ぶのが手っ取り早い。あるリスク管理の“すご腕”保険会社は、どのようにしてレジリエンスを手に入れたのか。
災害時の事業継続や企業の長期存続に欠かせない「レジリエンス」(回復力)。前編「危機に強い組織の共通点 パンデミックで飲食や医療、普通の会社は何をした?」は、バックアップや災害復旧(DR)計画の他、業務運用の仕方を柔軟に変えることもレジリエンスの重要な部分だと論じた。それを踏まえ、後編となる本稿はある保険会社の取り組みを紹介する。
業務運用の仕方を柔軟に変えることは、レジリエンスを追求する上で不可欠だ。筆者が以前勤務していた保険会社を例に、その会社のレジリエンス向上に向けた取り組みを紹介しよう。
その保険会社はリスク管理をレジリエンスの重点項目に掲げ、リスク管理の体制づくりに積極的に投資していた。同社は本社から車で1時間ほどのところにある建物を購入した。建物は、平常時はマーケティング資料を保管したり、新規契約者向けの資料を印刷したりするために使った。建物内には同社の主要システムの複製を作り、従業員用のPCも用意。本社に被害があった場合に備え、ここで通常通りに仕事ができる環境を整えた。同社は災害時に電話を自動転送する設定も忘れなかった。
建物は保険会社の本社から離れた場所にあったため、本社とは違う電力会社の管轄にあった。そのため、一方のオフィスで停電が発生しても、もう一方のオフィスに影響はないというわけだ。保険会社はこうしたさまざまな工夫によって、全社レベルでレジリエンスを追求し、本社が使えなくなったとしても事業継続できるようにしていた。
レジリエンスの要件は企業の業種や規模によって大きく異なる。レストランと保険会社とでは、レジリエンス向上の取り組みが当然ながら違う。ただし共通することもある。レジリエンスを高めるために、全ての企業が考えなければならない要素は4つだ。
企業はこの4つのレジリエンスを強化する際、それぞれ独立した対策を講じることが望ましい。例えばランサムウェア(身代金要求型マルウェア)攻撃を受けた場合、システムが暗号化されて使えなくなるものの、設備や従業員には基本的に影響がない。一方で、大雪やパンデミックによって従業員が出社できなくなっても設備やシステムに被害はない。そのため、企業はシステムにはシステム用のレジリエンス、従業員には従業員用のレジリエンスといった具合に、それぞれに特化した対策を考える必要がある。
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