危機に強い組織の共通点 パンデミックで飲食や医療、普通の会社は何をした?コロナ禍で身近になった「レジリエンス」【前編】

危機に直面してもシステムが稼働し、業務を続けられるようにするのが「レジリエンス」(回復力)だ。パンデミックを経験した後だからこそ、知っておくべきレジリエンス向上の秘訣とは。

2021年11月02日 05時00分 公開
[Brien PoseyTechTarget]

 組織の「レジリエンス」(回復力)は災害時に事業の継続を可能にする。企業の長期存続には欠かせない。企業はレジリエンスを追求するために、バックアップや災害復旧(DR)計画の実施はもちろん、業務運用の仕方を柔軟に変えることも重要になる。

業種ごとに対策が違ってもレジリエンスの鍵は同じ

 企業はレジリエンスを高める取り組みに当たり、建物や電気といった設備、システム、従業員を軸にした計画を考える必要がある。ただし、全てに同時に取り組まなければいけないというわけではない。鍵を握るのは自社がさらされているリスクを考慮し、対策に優先順位を付けることだ。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的大流行(パンデミック)によって、レジリエンスはほぼ全ての企業にとって身近な問題になった。企業は従業員が出社できなくなった中、急ピッチでテレワークを導入し、ビジネスを継続する方法を模索してきた。レジリエンスの重要性を認識するという意味では、いい訓練になったと言える。

 本稿はパンデミックを機に企業が事業継続に向けて打ち出した対策を見る。業務運用の観点でレジリエンスを考える。

 一言でレジリエンスといっても、企業の業種や従業員の職種によってその形はさまざまだ。パンデミックに直面し、一般企業や飲食店、医療機関はどう動いたのか。

一般企業の事務職員

 まずテレワークになった一般企業の事務職員の場合を考えよう。その人が自宅にいながら滞りなく業務をこなすには、PCをはじめ、安全に社内システムにアクセスするためのVPN(仮想プライベートネットワーク)、コミュニケーションのためのWeb会議システムといったさまざまなツールを短期間で用意する必要がある。実際、これはパンデミックの中で数多くの企業が経験したことだ。

飲食店

 飲食店は、行政からさまざまな制限が課され、持ち帰りのみのビジネスモデルにシフトせざるを得なかった。パンデミック前は提供していなかった宅配サービスを導入する飲食店も少なくなかった。一方で、店内での飲食を継続した店は、席の間に仕切りを設置したり、顧客がスマートフォンからメニューを閲覧し注目できるようにしたりし、感染拡大防止の対策に力を入れてきた。

エッセンシャルワーカー

 医療機関をはじめ、教育機関や行政機関、物流事業者、スーパーマーケットはわれわれの生活を支え、なくてはならない存在だ。英語では「エッセンシャルワーカー」(essential worker)と呼ぶ。こうした業界は感染リスクが比較的高い中でも従業員が働き続けなければならないため、「従業員の健康と命を守る」ことが最優先だ。そのためには、マスク着用や消毒作業、検温、物理的な距離を置くといった対策に加え、定期的に従業員に検査を受けさせる取り組みも目立った。


 上記の例から分かるように、企業はレジリエンスを追求するために業務運用の仕方を大幅に変えなければならない。その変更は従業員の働き方にとどまらず、システムにも及ぶ。ここで取り上げた例に共通するのは「いろいろ模索しつつも、とにかく動いて事業継続にこぎ着けた」という点だ。

 後編は、ある保険会社のレジリエンスに向けた取り組みを紹介する。

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