英国は電子戦の戦力増強を進める一方で、意志決定へのデータ活用を積極的に進めようとしている。その狙いは何なのか。
英海軍が進める電子戦(EW)に関するシステム増強は、5億ポンド(約840億円)をかけてフリゲート(小型軍艦)や航空母艦の装備を拡充するプログラムの最初のフェーズだ。プログラムの責任者(シニアレスポンシブルオーナー)を務める英海軍准将のスティーブ・プレスト氏は、「海軍の作戦を成功させるには、ますます複雑化する電磁気関連技術を進化させ、活用することが不可欠だ」と話す。今回の増強は、21世紀においても軍事的優位性を確保できるよう、世代を超えて海軍の電子戦能力を飛躍させるとプレスト氏は考える。
今回の強化は、「自国の海事能力を高め、新たな脅威に備えてイノベーションを促進する」という英国政府の戦略の一環だ。2025年までに国防費を240億ポンド増やす計画が、この強化を下支えする。
同じく2025年までに、英国防省(MOD)は意思決定や効率化の中心にデータを据えるという戦略の推進も計画中だ。その目的は、データを「人間に次ぐ戦略的資産」として扱うことにある。
MODが保有するデータを活用できるようにする狙いもある。MODは2021年9月に公開したレポートで「われわれのあらゆる意思決定は、ますますデータ駆動型になる」と強調。戦場で生死を分ける一瞬の判断、増加するサイバー脅威への防御など「さまざまな場面でデータが重要になる」と説明する。
英国は、特に海事技術分野における進化の可能性を模索している。海事技術分野の調査会社MarRI-UKは、2021年11月に英運輸省に向けた調査レポートを公開した。この調査レポートは自律型システムや人工知能(AI)技術などの分野における、海事技術分野の展望や提言を概説したものだ。
この調査によると、海事技術分野には追求、介入できる機会が幾つかある。こうした機会は、英政府の2050年までの海事分野における目標に関連するものだ。具体的には港湾の接続性向上やサイバー脅威対策などのテーマがある。
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