若手サッカー選手をセキュリティ専門家に転身させる動きが英国で進んでいる。深刻なセキュリティ人材不足に、サッカーの母国はどう取り組んでいるのか。
若手の元プロサッカー選手が、サイバーセキュリティ分野へ転身するための学習プログラムが英国で立ち上がった。複数の企業が手を組んで、セキュリティの専門知識を提供する。参加する企業はIT教育事業のHack The Boxや、GRC(ガバナンス、リスク、コンプライアンス)管理ソフトウェアを開発するSureCloudなどだ。これらの企業の支援を受け、果たしてサッカー選手はセキュリティのプロになれるのか。
若手の元プロサッカー選手をセキュリティ人材に育てる取り組みの背景には、英国の2つの問題がある。1つ目は深刻化しているセキュリティ人材不足、2つ目はサッカー選手としてのキャリアの構築しにくさだ。
メディア企業Skyが運営するニュース専門局「Sky News」の2021年の調査によると、英国では約1万2000人がサッカークラブの若手(ユース)育成制度を利用している。そのうち、プロサッカー選手としてキャリアを歩むのはわずか0.5%だ。プレミアリーグ(プロサッカーの1部リーグ)の試合に出場する若手サッカー選手の比率はさらに低いとみられる。
プロサッカー選手への道を断念せざるを得ない若者を、セキュリティ専門家に育てる――。Hack The BoxやSureCloudが進めるこうした取り組みの指揮を執るのは、スポーツコンサルティング会社Phoenix Sport & Media Groupだ。同社は学習プログラム「Cyber Stars」を立ち上げ、Hack The BoxやSureCloudを巻き込んだ。Hack The BoxはCyber Starsの一環としてセキュリティ研修サービス「HTB Academy」を提供している。協力企業の中には、IT業界団体「CompTIA」によるセキュリティ認定資格の取得支援を手掛けるBluescreenITもある。
Cyber Starsのカリキュラムは、攻撃の仕組みや防御法、脅威インテリジェンス(セキュリティの動向を分析した、攻撃や防御に関連する情報)といった分野を扱う。セキュリティの予備知識がなくても学びやすい構成を追求しているという。2022年7月、Cyber Starsの第1期生がプログラムを終了し、所属していたサッカークラブの協力を得て式典が開催された。
後編は、Cyber Stars第1期生の「生の声」を届ける。
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