「プライベート5G」と「最先端技術」で膨らむ英国スマート港の野望5Gで実現する「スマート港」【後編】

英国北東部のタイン港は港内に「プライベート5G」を導入し、最先端技術を組み合わせて革新的な取り組みを進める。プライベート5Gをどう活用するのか。

2022年08月25日 05時00分 公開
[Joe O’HalloranTechTarget]

 英国の通信大手BTは2022年6月、英国北東部のタイン港(Port of Tyne)に、「5G」(第5世代移動通信システム)をプライベートネットワークとして使う「プライベート5G」を提供すると発表した。BTはスウェーデンの通信機器ベンダーTelefonaktiebolaget LM Ericsson(Ericsson)の協力を受けてこの取り組みを進める。

 タイン港はプライベート5Gを活用し、港における革新的な新サービスやビジネス向けの新たな用途を実現できると見込む。例えば人工知能(AI)技術を使ったアプリケーションや自動運転などだ。その具体的な取り組みとは。

スマート港は「プライベート5G」と「最先端技術」をどう使う?

 BTの法人および公共部門担当マネージングディレクターを務めるアシシュ・グプタ氏は次のように語る。「Ericssonの協力を得て設置したネットワークを活用することで、港における運営業務の自動化や効率化など、変革のインフラを作れる」。広い帯域幅(通信路容量)かつ低遅延のネットワークを活用すれば、監視カメラや高度なデータ分析、AI技術などを用いて、コンテナの損傷を検査することが可能になるとグプタ氏は見込む。

 タイン港の技術チームは、プライベート5Gの本格稼働に向けた検証を実施している。その中でも同港は、以下の取り組みを優先的に進める。狙いは荷主企業や物流企業など、同港のサプライチェーンにおける顧客の業務効率向上にある。

  • 運用最適化:クレーンのような資材運搬機器に稼働データを記録する装置を取り付けて使用パターンを記録し、分析することで継続的な改善につなげる。
  • コンテナ追跡:光学文字認識(OCR)技術を用いてコンテナの状態を検査したり、入出港を監視したりする。

 タイン港は運営戦略「TYNE 2050」の一環として、二酸化炭素(CO2)を排出しにくいクリーンエネルギーを使用するテスト環境を作る。同港が拠点に選んだのは、200エーカー(約0.81平方キロ)の土地を有する同港内のクリーンエネルギーパークだ。ここでプライベート5Gの利用を希望する企業と協力して、英国の物流分野に利益をもたらす革新的なサービスの検証をする計画だ。

 このクリーンエネルギーパークを活用する企業の一社が、エネルギー会社のEquinorだ。同社はドッガーバンク(北海中央部にある浅堆)に洋上風力発電所を建設し、タイン港を運用保守の拠点にする。

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