サプライヤー多過ぎ“自動車業界”に「CO2削減してほしい」ベンダーの願い各業界が取り組むサステナビリティ【第4回】

温室効果ガス削減が喫緊の課題なのはどの業界も同じだ。ソフトウェアベンダーもサステナビリティ向上を支援するサービスを提供しており、特に自動車業界に焦点を当てている。その背景とは。

2022年08月25日 05時00分 公開
[SA MathiesonTechTarget]

関連キーワード

SAP | クラウドサービス | 環境保護 | ERP | 機械学習


 石油化学や自動車などの業界だけでなく、ソフトウェアベンダーも温室効果ガスの追跡と削減に取り組んでいる。例えばERP(統合業務)ソフトウェアベンダーのSAPは、環境や健康、安全を管理するツールを提供している。同社は2021年9月に、製品の「環境フットプリント」(人が地球環境に与える負荷の大きさを表す指標)の可視化や管理に特化したツール「SAP Product Footprint Management」(PFM)を発表した。

SAPが自動車業界のサステナビリティに焦点を当てる理由

 SAPのクラウドERPパッケージ「SAP S/4Hana Cloud」のサステナビリティマネジメント部門責任者グンター・ロザメル氏は次のように語る。「PFMは、サプライチェーンプランニング(SCP)や調達、物流などの領域において製品の環境フットプリントを可視化する」。ロザメル氏は、アクセスや監査のしやすいソフトウェアを活用せず、表計算ソフトウェアで温室効果ガス排出量データを把握している企業も存在すると付け加える。

 ロザメル氏によると、持続可能性(サステナビリティ)向上のために求められる取り組みは業界ごとに異なるという。PFMが焦点を当てるのは、社会的関心が高く、温室効果ガス排出量の追跡が必要とされている小売業や製造業だ。PFMはサプライヤーの温室効果ガス排出量を推定する機能を持つので、製品を構成する部品のうち約4分の3をサードパーティー製が占める自動車産業のような業界においては特に重要だという。

 Secondmindは、2016年に英国で創業した機械学習技術ベンダーだ。同社は主要顧客であるマツダの協力を得て、エンジンやタイヤ、パワートレイン(動力伝達をする基幹部品)など自動車部品の設計や開発プロセスの効率化に注力するようになった。

 自動車メーカーは従来、物理モデルの試作品を用いてエンジンの性能テストを実施してきた。一方Secondmindは、顧客の規制対象である排気ガスと、動力のような他の要素との釣り合いを取り最適化したエンジンの設計を提供し、テストプロセスの効率化を目指す。CEOのゲイリー・ブロートマン氏は「開発プロセスを数カ月単位で短縮できる」と語る。

 米国の非営利組織(NPO)で環境研究機関のWorld Resources Institute(WRI)によると、2016年の世界の温室効果ガス排出量は約500億トンCO2eq(CO2eq は二酸化炭素=CO2相当量)だった。このうち、11.9%に相当する約59億トンCO2eqは陸路輸送によるものだ。自動車メーカーは気候変動に対する責任があると言える。「どの企業もグリーントランジション(環境に配慮した社会への移行)の早期実現に努めているが、並大抵ではない努力が必要だ」とブロートマン氏は語る。

 自動車業界は環境負荷低減への強い意志があるとブロートマン氏は述べ、ソフトウェアはその実現に貢献できると付け加える。「当社は環境汚染を引き起こすと考えられているプロセスを、クリーンに変えるチャンスがあると知っている」(同氏)

Computer Weekly発 世界に学ぶIT導入・活用術

米国TechTargetが運営する英国Computer Weeklyの豊富な記事の中から、海外企業のIT製品導入事例や業種別のIT活用トレンドを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

From Informa TechTarget

お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。

ITmedia マーケティング新着記事

news168.jpg

新富裕層の攻略法 「インカムリッチ」の財布のひもを緩めるマーケティングとは?
パワーカップルの出現などでこれまでとは異なる富裕層が生まれつつあります。今回の無料e...

news166.jpg

ブラックフライデーのオンラインショッピング 日本で売り上げが大幅に増加した製品カテゴリーは?
Criteoは、日本国内のブラックフライデーのオンラインショッピングに関する分析結果を発...

news191.jpg

Omnicomが Interpublic Groupを買収 世界最大級の広告会社が誕生へ
OmnicomがInterpublic Group(IPG)を買収する。これにより、世界最大の広告会社が誕生し...