温室効果ガス削減が喫緊の課題なのはどの業界も同じだ。ソフトウェアベンダーもサステナビリティ向上を支援するサービスを提供しており、特に自動車業界に焦点を当てている。その背景とは。
石油化学や自動車などの業界だけでなく、ソフトウェアベンダーも温室効果ガスの追跡と削減に取り組んでいる。例えばERP(統合業務)ソフトウェアベンダーのSAPは、環境や健康、安全を管理するツールを提供している。同社は2021年9月に、製品の「環境フットプリント」(人が地球環境に与える負荷の大きさを表す指標)の可視化や管理に特化したツール「SAP Product Footprint Management」(PFM)を発表した。
SAPのクラウドERPパッケージ「SAP S/4Hana Cloud」のサステナビリティマネジメント部門責任者グンター・ロザメル氏は次のように語る。「PFMは、サプライチェーンプランニング(SCP)や調達、物流などの領域において製品の環境フットプリントを可視化する」。ロザメル氏は、アクセスや監査のしやすいソフトウェアを活用せず、表計算ソフトウェアで温室効果ガス排出量データを把握している企業も存在すると付け加える。
ロザメル氏によると、持続可能性(サステナビリティ)向上のために求められる取り組みは業界ごとに異なるという。PFMが焦点を当てるのは、社会的関心が高く、温室効果ガス排出量の追跡が必要とされている小売業や製造業だ。PFMはサプライヤーの温室効果ガス排出量を推定する機能を持つので、製品を構成する部品のうち約4分の3をサードパーティー製が占める自動車産業のような業界においては特に重要だという。
Secondmindは、2016年に英国で創業した機械学習技術ベンダーだ。同社は主要顧客であるマツダの協力を得て、エンジンやタイヤ、パワートレイン(動力伝達をする基幹部品)など自動車部品の設計や開発プロセスの効率化に注力するようになった。
自動車メーカーは従来、物理モデルの試作品を用いてエンジンの性能テストを実施してきた。一方Secondmindは、顧客の規制対象である排気ガスと、動力のような他の要素との釣り合いを取り最適化したエンジンの設計を提供し、テストプロセスの効率化を目指す。CEOのゲイリー・ブロートマン氏は「開発プロセスを数カ月単位で短縮できる」と語る。
米国の非営利組織(NPO)で環境研究機関のWorld Resources Institute(WRI)によると、2016年の世界の温室効果ガス排出量は約500億トンCO2eq(CO2eq は二酸化炭素=CO2相当量)だった。このうち、11.9%に相当する約59億トンCO2eqは陸路輸送によるものだ。自動車メーカーは気候変動に対する責任があると言える。「どの企業もグリーントランジション(環境に配慮した社会への移行)の早期実現に努めているが、並大抵ではない努力が必要だ」とブロートマン氏は語る。
自動車業界は環境負荷低減への強い意志があるとブロートマン氏は述べ、ソフトウェアはその実現に貢献できると付け加える。「当社は環境汚染を引き起こすと考えられているプロセスを、クリーンに変えるチャンスがあると知っている」(同氏)
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