石油化学工業が排出する温室効果ガスは、世界の排出量の約10分の1を占めるという。そのような中、温室効果ガス削減に取り組む企業が活用するのがソフトウェアだ。どのような機能なのか。
米国の非営利組織(NPO)で環境研究機関のWorld Resources Institute (WRI)によると、2016年の世界の温室効果ガス排出量は約500億トンCO2eq(CO2eq は二酸化炭素=CO2相当量)だ。このうちおおよそ10分の1を、石油化学工業に関わる分野が占める。内訳は石油化学製品の製造、石油・ガスの採掘および輸送などで生じる排出や副産物、意図的でない漏出などだ。これらによる温室効果ガスの排出を抑制するために、ソフトウェアがある役割を担う。
石油化学工業における持続可能性(サステナビリティ)向上の鍵を握るのはソフトウェアによる制御だ。例えば、石油やガス、化学製品のプラント内における機器動作の最適化を目的とした高度プロセス制御(APC)ソフトウェアがある。ボストンに拠点を置く産業用ソフトウェアベンダーAspen Technologyのシニアディレクターであるロン・ベック氏は、ユーザー企業はAPCを導入することで、エネルギー消費量を通常10〜20%削減し、それに伴いCO2も削減できると語る。
「APCは実績のある技術だが、まだ広くは普及していない」とベック氏は語るものの、実績につなげている化学メーカーもある。Aspen Technologyの顧客であるDow Chemicalは、グローバル事業におけるエネルギー消費量の削減について、APCの実行が貢献していると述べている。
Aspen Technologyは機器の運転データから部品の故障を予測し、予防保全と事故の未然防止を実現するソフトウェアも提供する。イタリアの石油精製会社Sarasは、サルデーニャ島にある54基の風力発電所でこのソフトウェアを活用している。例えば、タービンに問題が発生すると警告を発するので、メンテナンスの担当者は故障の発生前に修理に取り掛かることができる。データを活用し、メンテナンスの実施時期をタービンの出力が低下している状況から判断することも可能になる。
アラブ首長国連邦のAbu Dhabi National Oil Company(ADNOC)は、Aspen Technologyの顧客だ。同社はAspen Technologyが提供する、サステナビリティ関連情報を可視化するダッシュボードをガス田地帯で運用している。ADNOCのスタッフは、エネルギー消費量とメタンガスの放出量をリアルタイムで監視するために、このダッシュボードを利用する。ベック氏は、スタッフがリアルタイムのデータにアクセスできるようになれば、部門における迅速な意思決定が可能になると解説する。
ベック氏は「業界全体でさまざまな技術を試している」と話す。特にオフショア(海上)設備は、プラントが自動で最適化するよう設定することで遠隔からの運用が可能となり、温室効果ガス排出量やコスト、スタッフの移動にかかる時間を削減できると指摘する。
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