「iPhone」シリーズの新機種を主に中国で製造してきたAppleが、「iPhone 14」のインド製造を強化している。それはなぜなのか。専門家の声から探る。
Appleはスマートフォン「iPhone」のインドでの製造を強化している。同社はインドのチェンナイに工場を擁する委託製造業者Foxconn Technology Group(以下、Foxconn)と提携して「iPhone 14」の増産を図る。これまでAppleは、主に中国でiPhoneの新機種を製造してきた。
通信社Bloombergは2022年8月に、AppleがインドでのiPhone製造拡大に向けて取り組みを進めていると報じた。Appleの狙いは、iPhone新機種の
だという。米中の対立や中国におけるロックダウン(都市封鎖)の影響で、中国での新機種製造が滞るリスクがあったとみられる。
調査会社Counterpoint Technology Market Researchでスマートフォン市場部門のシニアアナリストを務めるプラキア・シング氏によると、Appleは「iPhone 12」と「iPhone 13」の一部もインドで製造してきた。ただし、これらのデバイスが出荷されたのは発売日から5、6カ月後だったという。「iPhone 14に関しては、発売日から出荷までの日数が非常に短い」とシング氏は語る。
AppleがiPhone 14の製造拠点にインドを選んだことは、今後のインドにおけるスマートフォン産業にとって「良い兆しだ」とシング氏は語る。AppleをはじめとするIT大手各社は、製造拠点を中国以外に分散させ、中国への依存を減らそうという狙いがあるとみられている。
過去のバージョンのiPhoneは、不可欠な部品をまだ中国に依存していた。この状況は変わる可能性がある。インド政府が国内の半導体製造能力を増強しようとしているからだ。
Counterpoint Technology Market Researchと業界団体India Electronics and Semiconductor Association(IESA)の調査レポート「India Semiconductor Market Report, 2019-2026」によると、インドの半導体市場は2021年から2026年までに累積売上高が3000億ドルに達する見込みだ。半導体の国内自給率は2026年までに倍増する可能性があるという。
インドの大手スマートフォン企業で働くエンジニアのヒマーンシュ・シス氏は次のように話す。「インドで部品を製造すれば、BOM(部品表)のコストをかなりの割合で削減できるはずだ。そうすれば、この利益を消費者に還元できる」
後編は、インドがiPhoneの製造拠点になることで起こり得る変化や、業界への影響を解説する。
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