「Windows」のアップグレードは、これまでにさまざまな問題を引き起こしてきた。どのような問題があったのか。「Windows 11」へのアップグレードに着手する前に、まずはこれまでの問題を振り返ろう。
Microsoftの「Windows」をはじめとするクライアントOSのアップグレードは、決して簡単な作業ではない。事前にどれだけテストをしたとしても、何らかの問題が発生することは避けられない。特にクライアントOSとして広く使われているWindowsのアップグレードは、それだけ影響が大きくなりがちであり、これまでにさまざまな問題を引き起こしてきた。
「Windows Vista」を例に考えよう。Windows Vistaは、管理者権限を持つエンドユーザーに対しても権限を制限する「ユーザーアカウント制御」(UAC)の追加をはじめ、さまざまなセキュリティ機能の強化を図った。ところが、こうした変更が原因で、前バージョンである「Windows XP」やそれ以前のWindows向けアプリケーションが、正常に動作しなくなる事態が続出した。
Windows Vistaの登場以前、開発者は、Windowsによる過度な制限がない状態で動作することを前提に、アプリケーションを開発していた。そのためWindows XPで動作していた幾つかのアプリケーションが、Windows Vistaでは動作しないことがあったのだ。
「Windows 8」へのアップグレードも同様に、さまざまな企業で問題を引き起こした。Windows 8では、ユーザーインタフェース(UI)が前バージョンである「Windows 7」やそれ以前のWindowsから大きく変わった。タッチ操作を随所に盛り込むなど、タブレットでの使いやすさを考慮したUIになったのだ。そのためWindows 8の登場当初は、使い方が分からなくなり、混乱したエンドユーザーからの助けを求める声で、企業のヘルプデスクがあふれかえった。
クライアントOSのアップグレードは、一部のデータが消失したり、個人設定がデフォルトに戻ったりするなど、エンドユーザーにとってさまざまな問題を引き起こす可能性がある。どれほどデザインが良く、UIの移行がスムーズなクライアントOSでも、こうした問題は避けられない。
「Windows 11」へのアップグレードでは、ハードウェア要件の厳しさやエラーメッセージの分かりにくさ、ファイル管理ツール「エクスプローラー」などのコンポーネントの問題まで、さまざまな問題が発生している。次回以降は、こうした問題と、その対処法を紹介する。
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