AI技術は農業を省力化すると考えられている。そのこと自体は間違いではないが、実現は簡単ではない。「AIで農業が楽になる」などと軽々しく口にできないことは、農業が何を扱っているのかを考えれば明らかだ。
農業へのAI(人工知能)技術の導入が進み、ベストプラクティスが確立すれば、生産者はAI技術を最大限に活用しやすくなる。一方で農業におけるAI技術の活用には、幾つかの課題がある。
「データ収集、データ処理、ロボットの自律性は急速に向上している」。データを農場や農作物の管理に生かす「精密農業」を手掛ける、iUNUのシニアコンピュータビジョンエンジニア、デビッド・コルメナレス氏はそう述べる。将来的には農業のほとんどの手作業が自動化するというのが、コルメナレス氏の見方だ。
自動化がもたらす効果として、コルメナレス氏は次の2点を挙げる。
畑を自動で整備する自律型ロボットや自律型トラクター、剪定(せんてい)・収穫のためのITツールなどが、既に入手可能になっている。農場自体が生命という複雑な仕組みを扱うものであることを考えれば、農業にAI技術を適用することは簡単ではない。ベンダーにとっては、現場でAI技術のテストと検証をして、できるだけ多くのデータを収集し、どのような結果になれば生産者にとって最も価値があるのかを理解することが重要だ。
「農業の現場にはさまざまなエッジデバイスがある」とコルメナレス氏は語る。それらが生み出すデータを適切に処理する機械学習システムは「ベンダーが生産者と密接に連携しなければ、構築することは難しい」と同氏は強調する。
AI技術が進化するたびに生産者は、手順の合理化や作業の効率化、サプライチェーンの最適化、利益率の向上といった効果を手にする機会を得る。つまり無駄を減らして資源を節約できる可能性があるということだ。これらの改善は食品流通業に利益をもたらし、農産物の安定供給と食料の安全保障強化の実現も後押しする。
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