ランサムウェアとバックアップの攻防史【第6回】
大事なデータを「ランサムウェア」から守り切る――危機を想定した対抗策を
ランサムウェアは企業の対策をどうにかすり抜けて攻撃の目的を達成しようとします。それと戦うには、巧妙な手口の“先を行く”対抗策が必要です。2つの手法を紹介します。
ランサムウェア(身代金要求型マルウェア)に対抗するために、企業はさまざまな対策を選択できるようになっています。第5回『貪欲に身代金を狙う「ランサムウェア攻撃」に負けないバックアップ対策は?』では、バックアップ対策における進化の一部を紹介しました。ランサムウェアは感染後にさまざまな手法を駆使してシステム全体を攻撃対象にしようとしますから、防御側にもさまざまな対策が求められます。警戒すべき手口の一つが、第5回でも触れた「横展開」です。この手口に対し、バックアップ対策においてはどのような対抗策が有効なのでしょうか。
データを“ランサムウェアから守り切る”ための対抗策
併せて読みたいお薦め記事
ランサムウェア対策の課題とポイント
横展開とは、ランサムウェアが特定のシステムに感染後、ネットワークに接続する他のシステムにも次々に感染を広げようとする手口を指します。横展開への対抗策としては、「エアギャップ」と呼ばれる手法が普及しています。これを分かりやすく例えると、常にアクセス可能な「地続き」の状態にしておくのではなく、普段はアクセスできないように「隙間が空いた」状態にし、必要なときだけアクセスするということです。
バックアップ対象のシステムからバックアップデータをコピーするときだけバックアップシステムへのアクセスを可能とし、それ以外のタイミングでは、バックアップシステムをネットワークから切り離しておく――。エアギャップをバックアップシステムに適用すると、このような考え方になります。こうした対策を打っておくことで、マルウェアが横展開を実行してバックアップシステムを探そうとしても、見つけられない可能性が高まります。
データの暗号化を直接的に防ぐ手法としては、データの書き換えができない記録媒体に記録する方法があらためて評価され、対策の見直しが進んでいます。かつては「CD-R」や「DVD-R」といった「WORM」(Write-Once, Read Many:書き込み1回、読み込み複数回)と呼ばれる形式の記録媒体が広く活用されていました。これらは1度しか書き込みができない記録媒体なので、データを書き込んだ後の改ざん防止に有用だと考えられてきました。そうした特性を持つWORMは、ランサムウェア対策としても有用性があるとの認識が広がっています。
昨今はクラウドサービスを中心に、一度書き込んだデータの書き換えや削除ができないように、ソフトウェアによって保護するファイルシステムやストレージサービスが利用できるようになってきました。バックアップデータの保管にこうしたファイルシステムやストレージサービスを活用すれば、暗号化されて復元できなくなる、といった事態を避けることができます。
ランサムウェアやマルウェアの検出においても変化があります。検出はアンチマルウェアソフトウェアをはじめとしたセキュリティツールの本来の役割ではありますが、昨今はバックアップシステムでも基本的なマルウェアスキャンの機能を備えるようになっています。そうした機能を活用すれば、バックアップデータを対象にマルウェア検出を実行し、バックアップデータ内にランサムウェアなどのマルウェアが潜伏していないことを確認した上でリストア(復旧)する、といった対策が取れるようになります(図)。
このように、バックアップシステムやバックアップデータがランサムウェアの攻撃に遭わないように保護する機能が充実してきているのが、最新のバックアップ対策の特徴だと言えます。
確実な事業継続のために必要な備えを
バックアップは、失われてしまうと再び入手することが困難なデータを、万一の喪失リスクから保護するための基本的な対策です。機器故障や自然災害にリスクがあることに加え、昨今は悪意を持って標的組織のデータに攻撃を仕掛けるサイバー犯罪者やマルウェア、ランサムウェアがまん延しています。バックアップを保護する十分な対策が不可欠となっているのです。
ランサムウェア対策としては、最新かつ効果的なセキュリティソフトウェアを導入することが不可欠です。それに加えてバックアップシステムが確実に機能していれば、どのような深刻なダメージを受けた場合でも再びシステムを復旧させ、事業を継続できるようになります。もちろん、そうしたバックアップの備えに頼るような目に遭わないことが最善ではありますが、備えあれば憂いなし。最悪の状況を想定した対策を準備しておくことが、結局は被害や損失を最小化するために、最も効率の良い対策になることを念頭に置くことが重要です。
執筆者紹介
高井隆太(たかい・りゅうた) ベリタステクノロジーズ 常務執行役員 テクノロジーソリューションズ本部ディレクター
企業のマルチクラウドのデータ保護・管理に関する課題解決を支援すべく、プリセールスSEおよびプロフェッショナル・サービスチームを統括。事業全体の戦略策定、プロモーション活動にも従事している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
ランサムウェアとバックアップの攻防史
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社うるる] 「入札市場」攻略ガイド:効率的に落札するためのポイントを徹底解説 -
製品資料
[株式会社うるる] 入札情報に特化した「販路拡大」「効率化」のためのサポートツールとは? -
市場調査・トレンド
[株式会社うるる] 公共入札に成功する企業と失敗する企業の「5つの違い」 -
製品資料
[日本ビジネスシステムズ株式会社] 専門家が教える、Microsoft 365の「テナント統合/分離」を成功に導く秘訣 -
製品資料
[rakumo株式会社] Microsoft 365での情報埋没を防ぐ、社内ナレッジを資産化する情報ポータル活用
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
PHP脆弱性「PHP2Shell」で2260万件に影響 情シスの緊急チェックリスト
-
2
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
3
「Windows」の不要なファイルを安全に消して容量を空ける方法
-
4
「Microsoft 365」が乗っ取られる MFAを破る“本物の画面”の恐怖
-
5
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
6
「テザリング依存」に潜む落とし穴 “遅いVPN”を解消するネット構築術
-
7
Claude利用8割のGMO、AI人材の評価軸が「トークン管理」に変わった
-
8
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
9
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
10
「IT運用・情報システム業務」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
2026年のサイバーセキュリティには何が必要か? 最新データに学ぶ傾向と対策
-
3
経験豊富な即戦力人材に直接アプローチできる、「攻めの採用」への転換術
-
4
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
5
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
6
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
7
AI駆動開発のスピードと安全性を両立 「品質・セキュリティ管理」の実践ガイド
-
8
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
9
「標的型攻撃メール」事例・サンプル集
-
10
Microsoft 365のメールセキュリティ、3つの“死角”と追加で検討すべき対策とは
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー