コオロギが交尾を急にやめたら“あれ”が近い? 「AI」で分かった意外な関係AIで進化する「食用昆虫」産業【第2回】

コオロギを食料にする「コオロギ食」が世界的ブームになる中、コオロギ養殖の効率化に人工知能(AI)技術を活用する動きがある。こうした活動から明らかになった、意外な相関関係とは。

2023年04月04日 04時00分 公開
[Aaron TanTechTarget]

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 食料としての昆虫(食用昆虫)が、環境に優しい食料として世界的に脚光を浴びている。こうした中、養殖場支援ベンダーEntoverseの共同創設者兼CTO(最高技術責任者)、ドミトリー・ミハイロフ氏は、シンガポールのスタートアップ(新興企業)とチームを組んで、コオロギ養殖場の運用効率化に取り組んでいる。チームが活用するのが、画像認識などの人工知能(AI)技術を駆使して収集した、コオロギに関するさまざまなデータだ。どのようなデータを収集し、どのように活用しているのか。

データで見えた「コオロギの交尾」と“あれ”の意外な関係

 収集したコオロギに関するデータは、コオロギ養殖の効率化に役立つ。コオロギの性別に加えて、与えている餌の種類や量、天候といったさまざまなデータを組み合わせて分析し、コオロギにストレスが掛かる状況を回避できるようにする。餌に関するデータを基に、コオロギの健康に最適な餌を判断することが可能になるという。

 EntoverseはこうしたデータをAIエンジンに投入して、今まで見えなかった相関関係を明らかにした。例えば100キロ先から接近する台風を感知すると、コオロギが交尾を停止するといったことだ。こうした相関関係があることは「誰も知らなかった」と、ビッグデータとAIの博士号を持つミハイロフ氏は述べる。

 欧州にある主要な大規模養殖場は「データとそこから得た洞察を利用して、温度、湿度、換気などのパラメータを自動調整している」とミハイロフ氏は言う。一方でタイやインドネシアなど東南アジアの養殖場は、概して小規模だ。「小規模養殖場でも、同じようにデータと洞察を利用して業務プロセスを改善し、人的ミスを減らせる」と同氏は主張する。

 Entoverseはコオロギに加えて、食用昆虫(食料としての昆虫)になる他の昆虫の養殖を支援するAIエンジンの開発を計画中だ。例えば以下の昆虫を対象にする。

  • バッタ
  • ミールワーム(ゴミムシダマシ科の幼虫)
  • アメリカミズアブ(BSF:Black Soldier Fly)
    • 幼虫が有機廃棄物を動物の飼料に変える能力を持つ。

 次回からは、Entoverseのさらなる取り組みを紹介する。

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