世界中で大きな話題となっている生成AI。この勢いのまま企業の導入は進むのか、そうではないのか。GPUが入手困難になった状況や、企業の導入状況などを踏まえて、現状と今後を探る。
生成AI(ジェネレーティブAI)は、もはや「ちょっとしたブームになった」と言っていいほど世界中で話題を呼んだ。テキストや画像を自動生成するこのAI技術の売り込みに、AIベンダー各社は躍起になっている。
AIモデルの開発に使用する「GPU」(グラフィックス処理装置)製品が入手しにくい状況になるなど、生成AIの台頭がIT市場に大きく影響しているように見えるが、実際はどうなのか。
生成AIに関心を寄せる企業は予算確保の前に、生成AIの具体的なコストやリスク、法的責任について正確に理解したいはずだ。生成AIを組み込んだアプリケーションを稼働させるインフラの準備に時間を要する問題もあり、導入は簡単には進まない。調査会社Gartnerでアナリストを務めるジョンデビッド・ラブロック氏は、「ほとんどの企業は、既に利用しているツールの機能強化に合わせて徐々に生成AIを導入するだろう」と述べる。
大抵の企業は、生成AIの活用には前向きだと考えられる。ただし、生成AI導入に掛かるコストと時間を捻出できる企業は限られているのが現実だ。Dell Technologiesのアプリケーションおよびデータコンサルティング担当グローバルポートフォリオ責任者ベサン・ウィリアムズ氏は次のように指摘する。「物価や金利の上昇が深刻化する中、生成AIの導入や運用に掛かるコストは、企業にとって大きな懸念要素になる」
調査会社Gartnerは、2023年3月から4月にかけて2500人以上の企業幹部を対象に生成AIに関する調査を実施した。これによれば、回答企業の70%がまだ生成AIの調査段階にある。生成AIを試験的に導入しているか、本番環境で稼働させている企業は19%にとどまった。
生成AIの普及が難航する要因の一つは、インフラの大掛かりな準備が必要になることだ。「生成AIの開発に使うデータの準備に苦戦する企業もある」。こう話すのは、ITコンサルティング会社CGIで新興技術プラクティス担当バイスプレジデントを務めるダグラス・バーゴ氏だ。同社の顧客企業の大半は、生成AIを活用したくても、そのための基本となるデータを準備できない状態だという。「生成AIの導入は話に出るが、実際は尻込みしている」とバーゴ氏は述べる。
生成AIを組み込んだアプリケーションを動かす際、もう一つの障壁になるのはGPUクラスタ(GPUを搭載したコンピュータ群)だ。一部の大手メーカーや石油・ガス企業、製薬会社、政府機関などは既に生成AIを活用しているが、ほとんどの企業は簡単にはGPUクラスタを用意できない。
データサイエンスベンダーDomino Data LabのAI戦略責任者シェル・カールソン氏によると、ある企業がNVIDIAのGPU「NVIDIA A100 Tensor Core GPU」(以下、A100)を大量に調達したことで、A100がほぼ入手不可能になった地域もある。
こうしたインフラ整備の難しさから、クラウドサービスで生成AIのアプリケーションを構築しようとする企業も存在する。ただしクラウドベンダーは、現時点では大企業が満足するようなAI技術を提供しているとは言い難い。
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