AIが抱える環境問題【前編】
AIモデルを「GPU」で作るのに“町1つ分”の電力が必要という話は本当?
AIツールをビジネスに活用する上で、考慮すべき項目が「消費電力問題」だ。AIツールはどの過程においてどの程度の電力を消費するのか。あらためて理解しておこう。
2023年に最も議論されたトピックの一つが、人工知能(AI)技術が社会や経済に与える潜在的な影響だ。特にAIチャットbot(AI技術を活用したチャットbot)「ChatGPT」は、世間の注目を集めた。
調査会社Statistaの統計によれば、2023年2月から6月にかけて世界中の企業の10%以上の人がChatGPTを職場で使ったことがある。2023年3月にGoldman Sachsが公開した報告書は、ChatGPTなどの生成AI(テキストや画像などを自動生成するAI技術)が3億人分の業務を自動化する可能性を示唆している。コンサルティング企業NewVantage Partnersが2022年に、企業94社の経営層に対して実施したアンケート調査では、回答者の91.7%がAI技術に投資していると回答した。
こうした需要の高まりは、AI技術を支えるインフラ、特にデータセンターに大きな影響をもたらすと考えられる。どのような影響があるのかを見ていこう。
AIが消費する電力は“町1つ分”?
AIモデルに対する操作には、「学習」と「推論」の2段階がある。これらはどちらも膨大な計算能力を必要とする。そこで活躍するのがGPU(グラフィックス処理ユニット)だ。
1段階目の学習では、AIモデルは膨大な量のデータから学習する。これは人が試験勉強をするのと似ている。ChatGPTのベースになっているLLM(大規模言語モデル)「GPT」などの高度なAIモデルの学習では、広範囲にわたるデータに対して膨大な量の情報を処理しなければならない。何千基ものGPUが、時には何日も何カ月も止まることなく、AIモデルの学習のために稼働している。
2段階目の推論は、AIモデルが知識を使って人の質問に答えたり、タスクの遂行を支援したりする段階だ。GPUは推論においても活躍し、AIモデルが学習したことを迅速かつ効率的に活用して答えを導き出せるようにする。
GPUはデータセンターにおいて大量の電力と専用のサーバラックを必要とする。ベンダーがより多くのAIツール(AI技術を活用したツール)を開発し、企業がそれらのAIモデルを使用するにつれて、より広いデータセンターと、より多くの電力が必要になる。
標準的なサーバラック当たりの消費電力は4キロワット程度だ。AIツールに必要な高性能コンピューティングの場合、サーバラック1台分でその15倍の電力を消費するという見方がある。大ざっぱに言えば、AIモデルが稼働する平均的なサーバラック1台分のハードウェアは、住宅25軒分と同程度の電力を必要とする。このようなハードウェアが収まったサーバラックをデータセンターに数百台配置すると、小さな町1つと同じ量の電力を消費することになる。このような電力消費は、企業の持続可能性における目標や、国家の「ネットゼロ」(温室効果ガスの排出量と、除去量および吸収量が等しい状態)目標に深刻な影響を与えかねない。
後編は、AIツールの利用に際して企業が配慮すべき事項を紹介する。
Computer Weekly発 世界に学ぶIT導入・活用術
米国TechTargetが運営する英国Computer Weeklyの豊富な記事の中から、海外企業のIT製品導入事例や業種別のIT活用トレンドを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Computer Weekly発 世界に学ぶIT導入・活用術
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品レビュー
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 実画面を見れば納得 営業・設計・開発を「AI×CRM」でつなぐとこうなる -
比較資料
[アイティメディア広告企画] ERP導入ガイド:「OBIC7」「SMILE V 2nd Edition」「Oracle NetSuite」を比較 -
市場調査・トレンド
[アイティメディア株式会社] AI Overviews時代のB2Bマーケ! 成長企業が選ぶ戦略とは? -
市場調査・トレンド
[アイティメディア株式会社] なぜあの施策は失敗したのか? B2Bマーケ施策を成功させる3つの鉄則 -
市場調査・トレンド
[株式会社Zendesk] 調査で判明:AIを活用したCX変革、成功に向けて押さえておきたい5つのトレンド
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
Microsoft 365侵害企業の9割はMFA導入済み 1002人調査で見えた盲点
-
2
「アップグレードできないJava」をどう守る IBMとRed HatがAIで400件超修正
-
3
MS&ADグループの目指す「AX」の全貌 本山CDOが語る変革の本質
-
4
「GitLab」に最高深刻度の脆弱性 2014年以降の全版に影響を及ぼす恐れ
-
5
OpenAIやAnthropicでさえ制御不能 2026年夏「3大サイバー攻撃」の衝撃
-
6
PHP脆弱性「PHP2Shell」で2260万件に影響 情シスの緊急チェックリスト
-
7
「Copilot」がIT予算を食いつぶす? 高額請求を招く課金体系と節約術
-
8
米国防総省で300万人分の個人情報が流出 その「意外な原因」と教訓
-
9
PHPはそもそも必要か? 脆弱性で問われる自社サイト安全性と保守負担のバランス
-
10
金融・通信で情報漏えいが続出 IPAとJPCERT/CCが情シスに求める緊急点検
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
3
10G回線の真価をフルに享受するには? 導入前にチェックしたいポイント
-
4
SCS評価制度時代の「SASE選定」ガイド
-
5
顧客対応自動化の要点:RAGとデータ連携で“業務で使える生成AI”にする方法
-
6
マンガで解説:情シスの負担を減らす「MDRサービスのインシデント対応」の中身
-
7
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
8
経験豊富な即戦力人材に直接アプローチできる、「攻めの採用」への転換術
-
9
2026年のサイバーセキュリティには何が必要か? 最新データに学ぶ傾向と対策
-
10
「EDR」選定ガイド:比較・検討フェーズで整理すべきポイントを解説
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー